- Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334735050
感想・レビュー・書評
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第8回鮎川哲也賞受賞作とのことですが、この年は氷川透、城平京、柄刀一と凄まじい面子が揃っていたようです。そんな中、見事受賞した本作は当初から「メッセージ性が強すぎる」という批判、言ってしまえば社会派を気取るな、という意見が少なからずあったそうです。
しかし、本作に至っては事件と震災は乖離など起こしてないですし、見事に融合してると言っていいと思います。誤解を恐れずに言うならば、これは一種の異世界本格であり、その世界でしか成し得ないトリックが使われている。ミステリとして、また震災を風化させない1つの物語として良作だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
推理小説としてあまりにも期待してしまったのだ。
1995年1月17日未明に神戸を襲った大震災。その描写がすごい。克明、詳細。被災地の実態、心情まで深い。
そこで起きた連続猟奇殺人事件。探偵の有希と占い師探偵の圭子のコンビネーションがイマイチかな。大震災という特殊な状況下だから圭子の精神状態ということもあり仕方がないのかな。 -
「これが先進国日本の本当の姿なのだと有希は思った。いくらアジアのリーダーを気取っても、いったん水が止まれば、都市生活に慣れてしまった人々は、自分たちの汚物すら自らの手では処理できない。どうしようもない吐き気を覚えて、有希はトイレの外へ出た。戦後五十年間、日本人はただあの汚物の山を積み上げるために、人間性を摩滅させながら経済戦争を戦ってきたのかもしれない。」
面白いな〜。 -
神戸の大地震直後の連続殺人犯を探偵が捜査する。これが話の骨子だけど、それの記述はなんだかなあ、といった感じ。神戸の公園のテントで生活する主人公と女友達が大阪に来て、自分たちとの境遇の違いに驚くシーンがあったが、このシーンは「なるほど」と感じた。大地震が起きて、家やインフラが大きく毀損した時、そこで生活する不便さゆえ、しばらく、別の場所に住むのはとてもリーズナブルだと思うのだが、離れない人が多いのは、住んでいた場所に対する愛着か。自分はいったいどうでしょう・・・
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神戸などを舞台とした作品です。
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神戸の震災がテーマ、ということで、ちょっと重いかな。。。と少し寝かせてしまった本。
でも、読み始めたら、一気でした。
時間のある日でよかった。
震災を通じて関係ができる人々を、1945年から紹介し始める。
人って、さっきまで全く関係なくても、ちょっとしたきっかけで知人になったりするんだなぁ。。。と、改めて思う。
東日本大震災のあった今が、読むときだったのかもしれない。 -
2007/5/18読了。阪神淡路大震災を舞台に繰り広げられる殺人事件。事件そのものよりも震災の状況が克明に語られ、あの頃の情景がよみがえってきました。
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三部作の一冊目です。神戸の震災の最中に殺人事件が起こる話です。作者の体験も入っている為か、地震の描写はリアルです。地震の怖さは勿論、精神的なショックやその後に待ち受ける現実が嫌なほど丁寧に描かれています。
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1995年1月17日未明、神戸を未曾有の地震が襲った。
崩壊したマンションから脱出した私立探偵・有希真一は、馴染みの古本屋・多田夫妻の様子を見に行くが、無残にも店は崩壊していた。偶然通りかかった倉田明夫に援助を求めるも、瓦礫の下から救い出せたのは、多田の一粒種の鈴々だけであったが、彼女も既に事切れていた。
余震が続く中、真一は友人の占い師・雪御所圭子の安否を確かめるため、元町へ向かい奇跡的にも圭子を救出する。だが、彼女は精神に異常をきたしていた。
混乱と絶望に投げ出された神戸で、連続猟奇殺人が発生する。刑事の鯉口よりその話を聞いた真一は聞き込みを開始した。
事件は震災前後に起こるが、過去から遡って人物背景が丁寧に入れて有ります。これが妙に長い。読むのに一苦労といった感じです。で、丁寧に掘り下げているワリには後半であまり生きてこないという感じがしたり。
嫌という程、大震災の模様が書かれてあります。アバウト10年経ち、風化しつつあるので読むと結構思い出します(被災者では無いけれど地震は体験したので)。その辺は辛いというか・・・重いです。事件よりむしろ地震にウェートを置いているという感じがしました。
なので、最初から犯人描写はあるのだが、なかなか登場人物に埋め込めれない。推理モノの筋から言って、おそらくこの辺りだなという感じで犯人は判るのだが、なんかインパクトに欠ける感じが……。真一主点じゃなく、犯人主点で書いた方が狂った感じが出て面白味が増した気がするんだけど。全体的に淡々とした感じを受けました。