- Amazon.co.jp ・本 (786ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334739799
感想・レビュー・書評
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2006/02/27読了
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☆☆☆2019年11月☆☆☆
乱歩ワールドに迷い込む楽しみ。
本当に別世界に行ける。
『踊る一寸法師』
『毒草』
『覆面の舞踏者』
『灰神楽』
『五階の窓』
『モノグラム』
『お勢登場』
『人でなしの恋』
『鏡地獄』
『木馬は廻る』
『空中紳士』
『陰獣』
『芋虫』 -
卒論は江戸川乱歩の一作品について書くこと、と居酒屋でバイトしている学生。乱歩のイメージはエログロナンセンスという。
怪人二十面相や明智小五郎などをドラマで見たことしかなかったので、ひとつだけ読むとしたら何かな? と聞くと、いいかどうかわからないけれど「陰獣」とのことで本書を借りた。
短編から長編までいくつか収録されているので、とりあえず全作読んだ。ナンセンスの作品はなかったが、エログロ感はなるほど。
著者による自作解説があり、当時の編集長横溝正史君に「矢の督促を受け」たり、名古屋で「私と枕を並べて寝た」り、最初は嫌いだった講談社が「原稿料が他社に比べ格段に高く、ついに講談社党になってしまった」などあり興味深い。
かなり→可成り、はちきれそう→はちきれ相、さようなら→左様なら、など漢字の使い方が今とはかなり違うのも面白かった。
実はエドガー・アラン・ポーという外国人が、日本に帰化して江戸川乱歩となったと、ずーっと思いこんでいた。はずかしい。 -
久々に乱歩読んだな・・・そうそうこういう肌感覚だった・・・。
「踊る一寸法師」は虐げられた男の愛憎と狂気の果ての流血。しかしどこまでが現実なのか?こういうオチこそ乱歩節なんだなあ、と思う。思えば乱歩に「一寸法師」って言葉の皮肉を教わったな・・・昔の人はほんとにそんな言い方してたのかな・・・酷いことだよなあ・・・。きっと大多数はそんなつもりはないまま使ってた言葉なんだろうけども・・・。
「毒草」は読めば読むほど恐ろしい。自分のなんてことなかったはずの一言で相手を狂わせるかもしれないんだという誰にでも起こりうる恐怖。うーん乱歩だ・・・。
「覆面の舞踏者」は乱歩らしい生真面目さと変態加減の融合だよな・・・。
「灰神楽」は乱歩らしい登場人物に犯行動機にトリックにオチの探偵小説。
「火星の運河」は乱歩的小品。そりゃそうだよな・・・とは思うけど、生前ほんとに怖い夢見てたんだな乱歩先生・・・そりゃうなされるて・・・。
「五階の窓」は共著の走り出しを担当した乱歩のターン。・・・こんな乱歩節全開で他の作家にバトンタッチしたの凄いな・・・。
「モノグラム」は乱歩には珍しく分かりやすいトリック探偵小説。しかもなんかほのぼの。
「お勢登場」は乱歩が悪女を書くとこうなるよ!っていう・・・。清々しいほどの悪女。怖い。
「人でなしの恋」はこれ・・・奥さん視点だからか久々に乱歩の恋愛小説読んだなって思った・・・。そりゃ奥さん怒るしやるせないし悲しいしだよな・・・。
いや、凄かったです。乱歩的にお気に入りなのがなんか分かるし、当時ウケなかったのも分かる。時代の先取りしすぎだもんな・・・。端的にいえば、奥さんがお嫁入りした先の旦那様の秘密の愛人が綺麗なお人形さんだったと気が付いて・・・っていうホラー小説。どちらも歯痒いし悲しい。
「鏡地獄」も乱歩らしい不条理変態的ホラー。「人間椅子」とかに近い。
「木馬は廻る」は「算盤が恋を語る話」的な外連味ある。
「空中紳士」は合作小説。だからなのか、乱歩らしいけど乱歩らしさはだいぶ抑えめ
。
「陰獣」はオチでほ~~~ってなる。と見せかけて結局・・・????ってのがやっぱり乱歩だな・・・ってなる。また男女のSMプレイだよ!でもオチでああ~~~ってなる。いやマジで。そっちかい!ってなる。あと乱歩はやっぱり変態側からの手記がいい。
「芋虫」は・・・いやほんと筆舌に尽くしがたいんですが・・・マジで達磨状態だった・・・これは戦争の結果って理由だったけど。でもややSMもあるよ!怖い!でもラストはなんか・・・切なかったな・・・。色々な意味で・・・。 -
何度読み返してもゾクゾクする、この感覚は何だろう。
本のタイトルになっている「陰獣」は、乱歩の願望そのものだなあ。 -
「陰獣」が読みたくて購入しました。ご本人が後に書かれた解説やあとがきより抜粋された
文章などを含む、非常にボリュームのある一冊となっています。ちびちびと一篇ずつ読み進め
一年越しようやくの読了でした。「踊る一寸法師」から始まる不思議に妖しく不気味な世界。
大好きな(というと語弊があるかもしれないけど)「芋虫」で締めくくりなのがまた良い。
ほれぼれするほど不気味。ため息ものです…。 -
再読。合作の「五階の窓」が読み返したくて(最近、小酒井不木や森下雨村を読んでるせいです)。収録されている他の作も短編では「灰神楽」、「モノグラム」、「お勢登場」辺り大好きな作だし、「陰獣」の乱歩らしさもこれまた良いですね。
「空中紳士」も合作という事ではありますが、書いたのは乱歩と(第三回だけ岩田準一らしいです)いうことで、後半、乱歩らしい仕掛けがあちこち入っていて面白い、盛り沢山の一冊です。 -
タイトルとあらすじが恐ろしすぎて未読だった「芋虫」をようやく読む決心がついて読んだ。
やはり未読だった「踊る一寸法師」も文中でも言及されているように乱歩流の「カルメン」として強い印象が残ったが、「芋虫」は更に圧倒的。
私、やっぱり乱歩大好きだ…。
各編に添えられている乱歩自身の解説は、相変わらず人間味溢れていてそちらも好き。 -
はあ・・・すごい・・カルトっぽいなあ。好き。
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乱歩は多少筋が稚拙でも、人に読ませる何かを持っている。物語の書き出しに関しては右に出るものはいないと思う。
「陰獣」の書き出しなんかはさすが乱歩だと思わず言いたくなるほどの掴み。読者をぐいっと怪しく陰鬱とした世界へと引きずり込む。
だからこそ、空中紳士には始終違和感を覚えざるを得なかった。
「なんか違う…なんか違う…」と思いながら読むのはなかなか苦痛なもので、空中紳士だけは読むペースが落ちた。
「読みづらいなあ、なんか違うなあ」と自覚したときはっとした。私が求めているのは怪奇なのかと。
私は傑作選と全集1巻と2巻しか読んでいない乱歩初心者だけれど、乱歩に毒されるには十分なほど読んでいる。
空中紳士に限って言えば、読者を否応なしに作品に引きずり込む身勝手さはなく、「気になるなら来れば?」くらいの軽さを感じた。他の作家もいたから仕方ないとは思いつつ、ちょっと物足りなく感じるかも。