鏡の前のチェス盤 (古典新訳文庫)

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (179ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334753573

感想・レビュー・書評

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  • 短編集『わが夢の女』
    http://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4480022783
    が、なかなか愉快だったので、
    光文社古典新訳文庫の新刊を買って読んでみた。
    1922年初版の、
    当時10歳だった息子のために書かれたという
    ごく短い児童文学だが、人を食ったようなとぼけた印象。
    ささいな失態から、
    お仕置きとして物置部屋に閉じ込められた少年の不思議な体験。

    大人の言うこと、立派そうな人物の語る話が
    必ず正しいとは限らないのだから、
    子供のうちは経験値が低いのは止むを得ないけれども、
    自分の頭で物事をよく考え、判断して生きていきなさい――
    そんなメッセージが込められているかのようだった。

    作者はファシスト勢力とくっついたり離れたりと
    政治的スタンスには紆余曲折があった模様だが、
    この本の解説で詳しく説明されていたのが参考になった。

  • セルジュ・トーファノの挿絵は初めて見るが楽しい。作品を親しみやすくしている。

  • タイトルを見て適当に借りた作品。
    月を見たチャウラの作者と同じイタリアの作家で、異世界物だった。
    【あらすじ】
    主人公の少年が、母親に叱られ自宅の一室に閉じ込められる。そこで、鏡の前のチェス盤の駒に鏡の中の世界に連れていかれ、不思議な体験をして、なんとか帰ってくる物語。
    【感想】
    作者の独特の雰囲気のある世界観を巡るような物語で、童話や、不思議の国のアリス、果てしない物語のような感じだと思う、ちゃんと読んだことないけど。
    物語が始まる前に、時期として大切なことは戦争の前なのか後なのか、それだけだ。という説明はかっこよく聞こえるし、経験した人からすると実際その通りかもしれない。
    物語が異世界ということもあり、登場人物の感情を汲み取ったりすることはなく、現実には起こり得ない風景を少年の目線になりきって想像しながら見る作品だった。今敏のパプリカみたいなあり得ない現象を、文章の中から自分の頭のなかにだけ描くから、頭の運動チックな感じで読み手次第な所はあるかも。
    そういった点では、作品のボリュームは適切だったように思う。
    あと、今にして思うと読んだシチュエーションはつくばのひな祭りの最中、初めて訪れた図書館というのも、どこか作品と似てたかも。
    不気味だけれど、少し愉快な所と味気なさが入り交じってるけれど、個人的な感想としては、正直面白いとは言えなかったかな。
    幻想的というとファンタジックなイメージが伴うけれど、鏡の中の世界は無機質で、現実世界の色彩豊かな所に身を置きたいと思える作品だった。
    好みが激しく分かれる作品だろうけど、好きな人はいるのかな?っていう作品に思ったことを記しておく。

  • お仕置きとして閉じ込められた部屋で鏡の世界に入り込む主人公。
    鏡の中には鏡に姿を映した過去の人々や物たちがおり、お約束とも言える不条理な世界が繰り広げられ…とややアリス的なファンタジーでした。

  • 原書名:LA SCACCHIERA DAVANTI ALLO SPECCHIO

    著者:マッシモ・ボンテンペッリ(Bontempelli, Massimo, 1878-1960、イタリア、小説家)
    訳者:橋本勝雄(1967-、イタリア文学)

  • タイトルからも想像されるようにキャロルの『鏡の国のアリス』的おはなし。挿し絵も可愛く読みやすいです。私的イタリア文学のブームが再び到来しつつある。

  • 悪さをして閉じ込められた少年が、物置でチェス盤と大きな鏡に触ってはいけませんと言われながらお仕置き中。当然の如く鏡の世界のパラレルワールドに突入。そこはチェスの駒が動いていて、少年の住んでいる世界なんてのは、我々を必死こいて真似してかろうじて体裁を保っているそうです。その人達をさらに見下す存在も登場。そうですね、猫の額のような限られた世界で足を引っ張り合うよりも、もっと広い世の中に目を向け、グローバルな視点をもちたまえよ、そういうことなんですね。電車で鞄ぶつけ合っての場所取りはみっともない、そうですね。

  • ファンタジー。イタリア人作家。
    不思議な物語。
    子供向けの作品のわりには、ハッキリしない展開が多く、分かりにくい?

  • 図書館に置いてあって、冒頭1,2ページと挿絵が気になって借りた。
    内容はそこそこ。同じ文庫のロダーリくらい面白いのかと思ったが。
    解説が非常に詳しくて、他の本も読んでみたくなった。

  • 40年ぶりの『ポーの一族』を買いに本屋さんに行った際「萩尾望都さん推薦!これは子供の異世界冒険奇談の原点のような作品だ」と帯のついたこの文庫が新刊コーナーに並んでいたのでつい一緒にお買い上げ。

    10才の男の子がわるさをして閉じ込められた部屋に、タイトル通り「鏡の前のチェス盤」がある。その鏡をじっとみつめているとチェスの白の王様が話しかけてきて、少年は鏡のむこうの国へ。

    鏡の中の国には、今までその鏡に映った人が暮らしている。若かりし日のおばあさんや、もっと昔の持ち主、さらにたまたま鏡に映った自分を見てびっくりして逃げた泥棒まで!そして人間と同じ大きさのチェスのコマたち。

    著者はこれを書いた時点でアリスは読んでいたらしく、似たモチーフはうかがえる。とてもベーシックな異世界ファンタジーで、ちょっとした冒険の後、少年は戻ってきて目覚める。

    発行当時のイラストがそのまま入っているのが可愛らしく素直に楽しめるけれど、類似の児童書と比較して特に突出した展開はなく、そういう意味では良くも悪くも想像通り。解説を読むと著者ボンテペッリにはもっと大人むけのシュールな作品も多くあるようなので、むしろそちらに興味が湧きました。

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