みどり町の怪人

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334912888

感想・レビュー・書評

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  • 1967年の夏、埼玉県のみどり町で大きな台風被害の直後に若い女性と乳児が殺害されて、犯人は不明というショッキングな事件が起きます。
    この事件がきっかけとなってもともと住民の間にわだかまっていた不安や恐れがはっきりとして<みどり町の怪人>という形の都市伝説となります。
    そして大きな台風の起きた年は女性と子供は気を付けろという風潮が生み出されていきます。

    第一話から第七話までの連作短編集ですが、各話の登場人物はみどり町の住人で、各話にリンクしています。
    小学生から認知症の老女まで様々な人物が登場します。

    そしてとうとう第六話では女子中学生が一人、行方不明になるという事件が起きます。
    第七話ではみどり町の怪人の正体が明らかになりますが…。

    FM青葉の<ミッドナイト・ビリーバー>をバックグラウンドに流しながら令和に起こった<みどり町の怪人>の事件が語られていきます。

    1967年の事件はむごいものでしたが、令和の<みどり町の怪人>は決して極悪人ではなく、心の琴線に触れてくるものがありました。

  • ミステリーカテゴリにしたが、内容としてはドラマ要素の方が強いだろうか。

    二十年以上前に若い母親と赤ちゃんが殺され帰宅した若い父親が発見したという痛ましい事件が起きたみどり町。そこでまことしやかに流れる『怪人』の噂。
    暗がりから突然現れ女性や子供を惨殺するだの、夜の墓地を徘徊しているだの、レインコートを着て自転車を漕いでいるだの…。
    そんなみどり町を舞台にした七つの物語は老若男女様々な主人公視点ではあるが、いずれも何かに抑圧されていたり何かしらの不安を抱えている。

    新天地で恋人と念願の新生活を始めたばかりの女性につきまとう不安は怪人の存在なのか。
    一人で介護と育児を担う女性の周囲で起こる不可思議な現象は怪人が引き起こしているのか。
    何かと自分を注視してくる同僚は実は怪人なのか。
    予備校に通う女子中学生が行方不明になったのは怪人に拐われたからなのか。

    主人公たちの不安を煽るのが怪人なのかそれとも別の何かなのかというそれぞれの物語はなかなか面白かった。
    みどり町という小さな町で登場人物同士がリンクしているのも上手く作用している。
    怪人の噂という漠然としたものが急に現実性をもたげてくる部分があったり、怪人の仕業としか思えないようなものが実は…なんてこともある。
    しかしそれぞれの物語の結末はホッとするものは少なく、今後どうなるのかと不安になるものやモヤモヤするものも多い。
    そして最終話。二十年以上前の事件の真相は明らかになるが、これまた苦く切ない話だった。
    せめて引き換えに二人の命が助かったことが救いだろうか。

    各話に挟まれるラジオ番組シーンの軽快さが逆に不安にさせられる。都市伝説の行方という意味では興味深いが、個人的には好きではなく斜め読みしてしまった。

  • 埼玉県のみどり町で1967年に母子が殺害された。
    犯人は不明のまま時効になる。

    その当時、町は大きな台風に遭い、地元民の不安も重なり、犯人不明ということに恐れもあってか…
    みどり町の怪人が生み出された。

    とても不気味で、殺人事件が連続で発生するのか…
    と思いながら読み進めるが…

    第7話になる短編は、すべてみどり町の住民で繋がっている。
    関連がわかるとラストの第7話で怪人の正体も明らかになる。

    ひとりひとりの心情が、そのまま不安や恐れに結びつき、それを未だ見ぬ怪人のせいでは…と思う。

    誰にでも弱さや脆さがあるのだ。
    そう、気づかせてくれた。



  • みどり町には怪人がいて、女性や子供を殺す。
    そんな都市伝説があって、みどり町に住む人は
    何か不穏なことがあると怪人を連想しちゃう。
    実際に以前、みどり町で殺人事件があった。
    犯人はいまだに見つかってない。
    地元のラジオ放送局(FM青葉)の掛け合いを間に挟み、
    みどり町の怪人について掘り下げていく。

    〈ミッドナイト・ビリーバー〉というラジオ番組。
    合言葉は、今日と明日の境目に!
    土曜日の深夜午前零時に放送されている。
    MCは、マッド宗形と針山レナ。
    この2人の掛け合いがまた、ラジオっぽくて良かったな。
    私自身、ラジオめっちゃ好きなので、ラジオのやりとりは
    好きだったー!!
    でも深夜ラジオにこんな怖い内容を生放送してたら、
    怖い、怖い、怖いー。
    だから、私は実際あったら聴かないよー笑

    正直、みどり町で以前あった殺人事件の犯人は
    早い段階で予想がついちゃったー。
    最初は怖い雰囲気で読めていけたんだけど、
    だんだん読み進めて話の展開が分かったから、
    ☆3の評価ですー。

    最後、ラジオのやりとりが、よく分からなかったー。
    個人的にはスッキリした終わり方ではなかったなー。
    始まりがドキドキしながら読めたので、
    ちょっとそれは残念でしたー。

  • 面白かった!本編と幕間のラジオ番組との絡みが絶妙です。

  • みどり町に伝わる怪人の噂。怪人とは誰だったのか。各章に出てくる登場人物の相関関係がだんだん理解できてくると、なかなか面白い。途中途中にはさまれるラジオ番組の語りも。
    「コージーミステリ」という言葉初めて知りました。

  • あらすじ
     深夜の地元コミュニティーラジオ。不思議なことや都市伝説を紹介する番組だ。最近、みどり町の怪人について盛り上がっている。この話はもともと何十年も前から広まっていたのだ。きっかけは母子殺害事件が起こったことらしい。
     少し昔、1990年代のエピソードがいくつか。怪人の噂に不安にさせられながら、義母の介護、恋人との別れなどを描く。

     タイトルから想像されるミステリーではない。現代のラジオDJたちのトークをはさみながら、家庭・恋人とのやりとりを描く。日々のちょっとした行き違いなんかが中心。ラストのディレクター何者?って下りは別にいらないと思った。

  • 未解決の母子殺害事件が都市伝説として語り継がれている埼玉県Y市みどり町。なんかどっちつかずで読むのに苦労した。

  • ラジオMCのトークがそれぞれの短編の初めに入り、そこに寄せられたお便りをベースに実際の話にフォーカスしていく作り。

    曲やラジオの内容で時系列を表していて洒落が効いていて良。

    〜以下ネタバレあり自分用メモ〜
    読んでない人は読まないで欲しい


     
    ずっとサスペンスだと思いながら読み進めるも、「怪人」を中心に自分と対峙して成長していく短編の集まり。

    ずっと怪人について真相を考え続けていたので、そこが重要でないと気付いた時はハッとさせられた。

    通常サスペンスだと思っていたものが人間の成長物語だと知った時はがっかりすることの方が多いと思うが、不思議とその感じがないのはすでに心を掴まれていたからなのか。とても展開が綺麗に感じた。

    正直最後のディレクターがうんたらかんたらのくだりいるか??って感じだったけど。

    実写化した場合、ホラーサスペンステイストで話を進めていくとガッカリ感が強くなって難しいだろうな、本で読めて良かったなと感じる作品。

    怪人は自分たちの中にいた、なんて陳腐な言葉では語れない展開。一読の価値あり。

  • 「みどり町の怪人」「むすぶ手」「あやしい隣人」「なつのいろ」
    「こわい夕暮れ 」「ときぐすり」「嵐の、おわり」
    7話収録の連作短編集。

    1967年に起きた母子殺害事件が未解決に終わり、それがきっかけで『みどり町の怪人』という都市伝説が広まる。

    一見ホラーの様でありながら人間ドラマとミステリーが融合された作品だった。

    6話・7話で明らかになる怪人の正体と殺人犯。予想はしていたが、その背景を知った時、空しさと切なさを感じた。

    合間に挟まれるラジオ放送がアクセントになっていたが266ページで〆た方が余韻が残り良かったかも。

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著者プロフィール

山形県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。『未成年儀式』で富士見ヤングミステリー大賞に準入選し、2009年にデビュー(文庫化にあたり『少女は夏に閉ざされる』に改題)。他の著作に『ひぐらしふる』『夏の王国で目覚めない』『僕らの世界が終わる頃』『サクラオト』『思い出リバイバル』などがある。本作『向日葵を手折る』が第74回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門にノミネート。

「2023年 『向日葵を手折る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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