- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334914622
感想・レビュー・書評
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江戸末期に活躍した天才棋士、天野宗歩。実力十三段、のちに棋聖と呼ばれた孤高の勝負師は、何を追い求め彷徨っていたのだろうか。近代将棋の定跡の基礎を築き、今も棋界から無二の存在と一目置かれる男の孤独と絶望に迫る、新たな将棋小説。
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宗歩の死は病死と届けられているが、果たして?
とある人物が、宗歩を知る人たちを訪ねて歩き、宗歩が生きていた頃の様子を語り継いでいく。読んでいる側は、章を進めるごとに、宗歩への思いと死への謎を深めていくのだが、当然、死者である宗歩自身の語りは得られない。
彼に恩義を感じる者、その才に畏敬の念を感じる者、嫉妬し疎ましく感じる者、利用する者。
盤上の世界を「白黒が付く」簡単な世界と感じ、世間をそうはいかない、訳の分からないものと感じていた宗歩。
名人になることを断ち、旅に出る彼の胸中には、何があったのだろう。
どこまでも、孤独。
とも思うし、だからこそ『将棋精選』を残そうとした宗歩の気持ちを思う。
時空を超えて、棋譜は残る。
そして、棋譜を見れば、その人の指し回しが見えてくるという。
ふと。
御城将棋にも、賭け将棋にも見えてきた、エンターテイメントとしての将棋を、棋士たちはどう捉えているのだろうと、疑問に感じた。
スポーツにも言えるだろう、観る者のために歪められてしまう、何か。
天野宗歩は、やがて「棋聖」と呼ばれる。
現代の天才が、最初に手にした称号との縁にも、また感じさせられるものがあった。 -
天才は天才であるがゆえに生きにくい・・・。 表紙の男が将棋指しとして成り上がっていく話かと思ってたら、 早々に死んでることが分かったので驚いた。 そして、皆それぞれが不潔と語る男。 表紙のイメージとあわんよ。 将棋のことは分からないけど、 インタビュー形式ですすんでく小説で面白かった。 ただ宗歩が何を思ってたのかは分からんからなぁ。 どんな思いだったのかなぁ。
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地味な話だけど面白かった
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将棋しかない宗歩の行動に引き込まれる。奥州への旅で死んだ宗歩の足跡を,宗歩を知る人に順番に聞いていき,宗歩の人物像を浮かび上がらせる。一種の謎解きのようなストーリィ展開であり,それぞれの人の宗歩像からリアリティのある宗歩が浮かんでくる。今も昔も,人の世は複雑である。
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江戸末期に活躍した天才棋士天野宗歩のエキセントリックな人生を小説に。
とはいってもこの方が実在の人物ということすら知らなかったのでどの程度がフィクションとして描かれてるのかさっぱりなんですが。
宗歩本人ではなく、没後に彼について周りが語るというインタビューのようなつくり。それはそれで面白かったですけどね。一遍が短いのでテンポよく読めましたし。
ただ、なんだろうな?最初から「宗歩は誰に殺されたのか?」みたいなテーマも根底にあったように思いますが・・・そっちはちょっと拍子抜けかな。それまで出てこなかった人物が急に出てきて、いわば実行犯であったような話をされても・・・まあそういうミステリ的な楽しみをするようなお話ではないのでしょうけども。。
ある意味で最重要人物である風吉もなんかなあ。将棋からずっと離れていながらとんでもない実力を維持しつづけたという点ではこっちのほうがはるかに「天才棋士」なんじゃないですかね?
史実を下敷きにしている部分と、おそらく創作であろうこの2点が妙に乖離してしまっているように感じてしまいました。うまくなじんでいないというか。。。