総外資時代キャリアパスの作り方 (Kobunsha Paperbacks Business 6)
- 光文社 (2007年6月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334934149
感想・レビュー・書評
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経済のグローバル化は怪物である。
誰も止めることが出来ないこの流れの中で、タイトルの総外資時代というのは、日本企業、外資系企業といった区分が意味を成さない時代に入りつつあるということである。
著者は、川崎重工から米系の化学会社に転職したバックグラウンドを持っているが、書中に挙げられている給与を始めとする報酬に関する事例として、ゴールドマン・サックスなどを始めとする米系金融機関が中心になっているというのが残念である。新入社員でベース1200万、プラスボーナスという報酬は一般の感覚からはかなりかけ離れた高額報酬は、キャッチーな話題ではあるが、やはり一般の事業会社の外資系企業の実態からも同じくかけ離れている。そうしたゴシップ誌のネタのような内容がこの本の品格を下げているのは否めない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
外資系の会社に転職してから4年が過ぎましたが、不思議だなとは思いつつも、違う世界に入ったのだからと思い込んでいたことがいくつかありました。エクスパット(本国外国人の日本支社勤務)や一度辞めた人が昇進してカムバックすること等です。
この本を読んで、それらの制度は一般の外資系会社に普通にあるものだということが分かりました。また、外国人とはいえ根回しや人間的付き合い(メールよりも顔を合わせての会議)の重要性など、私の会社の本社が中西部あたりにあるためだとばかり思っていましたが、そうでもなさそうでした。
この本の著者は川崎重工業という日本企業と、外資系を何社も勤務された仲氏による実体験がベースになっていて参考になる部分が多くありました。
以下は気になったポイントです。(一部省略、日記参照)
・ファイザーは主力製品の特許切れと開発頓挫が影響して、2007年1月に1割にあたる1万人のリストラ発表、400人いる愛知県中央研究所も閉鎖(p42)
・転職には会社との相性がその成否を左右する、その言葉とし「chemistry」がある(p54)
・転職希望者が希望年収を控えめに言ったとしても、その人物を本当に採用したいのならば、外資の会社は市場価格通りの年収をオファーする(p80)
・職務記述書には、職務の定義・職務の内容・必要な条件(学歴、職歴、経験、資格)・必要な保有能力・必要なコンピテンシー項目+本人と上司のサインが盛り込まれる(p83)
・米国会計基準に従うと、未消化の有給休暇があった場合、未払い有給休暇費用を算出して、それを利益から差し引く必要(accrued vacation pay)がある、日本には無い制度(p93)
・アメリカにてエグゼンプトの要件は、年収10万ドル以上であって、1)2人以上の部下の管理監督、2)専門性を発揮した業務、であることが決められている(p98)
・外資系は仕事の引き継ぎはされないのが普通で、自力で仕事を覚えるのが普通(p114)
・エクスパッドの働き方は、夕方5時にノートパソコンを持って自宅へ帰宅、家族との夕食後にパソコンに向かって本国へレポートや電話をする(p133)
・外資系では、社有車の廃止や福利厚生等の圧縮はあっても、社員の給料引下げは支持されないし、あまりやらない(p149)
・日本にやって来る社長は自分の経営スタイルを最初から目に見える形で示そうと意気込んでいる、つまり前社長と違った方針や姿勢を掲げる(p151)
・外資系で勤める際に重要なのは英語そのものよりも、仕事に対する自信である、堂々と渡り合うことがポイントで、恥じ入った態度が一番良くない(p175)
・会話に関する限り、単語を並べているだけでも効果がある、業務で使われる単語さえ知っていればよく、外国人から見れば「日本人が英語をしゃべれないのは外国語だから当たり前」と思っている(p177)
・45歳でだれもが認めるプロフェッショナルであっても、転職できなくなる、「あと何年働いてもらえるか」という観点から見られるため(p192)
・日本にある外資系企業は大企業が少ないので、社員採用は、ほとんどが特定の職務に欠員が生じた場合のみで職務記述書に見合ってその都度採用される(p196)
・資格としてはMBAに、さらにひとつの資格が加わるだけで有利になる、ただしその資格を持つことは「スタートラインにたてる」という入門書であって出世を約束するものでない(p201)
・古代ローマからヨーロッパ中世に引き継がれた自由7科、「文法は語り、修司は言葉を飾り、弁証(論理)は真理を教え、幾何は測り、算術は数え、音楽は歌い、天文は星を学ぶ」と言われ、自由民がもつべき教養である(p203)
・外資系では就業後に飲みに行ったりしないのが普通だが、本社の外国人が来日したときは例外である(p204)
・上司の悪口、陰口は絶対にアメリカ人は言わない、陰口をたたくときはクビを覚悟したとき(p207)
・日本の会社はゲマインシャフト(共同社会)だが、外資はゲゼルシャフト(利益社会)なので、一度辞めて戻ることもあり得る(p210)
・欧米では26歳程度で大学を卒業してから4人に1人の割合で3回以上転職するが、30代後半からは転職をせずに1か所に腰を落ち着けるのが普通(p212)
・男女にかかわらず、できる人ほどスーツに金を惜しまない、スーツは勝負服、中身さえよければ外面は気にしないというのは日本でのみ通用(p237)
2011/4/3作成 -
[ 内容 ]
外資系企業を志望する人も、自分の会社が外資系になってしまった人も!
押さえておきたい「超高給・実力主義」世界での正しい生き方。
[ 目次 ]
はじめに 日本は今や総外資時代
第1講 日本にいても外資の波からは逃れられない!
第2講 外資系企業の待遇と人事はどうなっている?
第3講 汝の敵を知れ…外資系企業の社内力学
第4講 外資系の世界で生きるためのプロフェッショナル論
補講 外資系企業のカルチャーを知る
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
外資系の企業にいくなら知っておく心得。
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【総評】
ペーパーバック250ページに比して、下にあるフレーズの量を見てもらってもわかるとおり、この本は名著だと思う。
amazonのおすすめ度が満点なのも頷ける。自分は、大学2年生の頃にこの本に出会い、外資の世界に興味を持ち始めた。
まだ自分のキャリアを考えている所だが、4年の今、こうやって読み直してみると、本当に日系と外資とで差があることを実感する。
【気になったフレーズ】
・外資投資銀行、初年度はインセンティブのボーナス含め約1000万、2年目1500万、3年目2000万、「アソシエイト」昇格後2500〜3000万、後は推してしるべし。
・グリーンメーラー(blackmailと、ドル紙幣のgreenを合わせた造語) → 超短期的な視点でM&Aを狙っているファンドのこと。
・日本の会社では、jobが曖昧模糊。外資ではjob description , position description があり、更にワトソンワイアットなどの報酬survey会社が存在して、外部的に、jobによる市場価格が決まっている。
・外資では日本と違い、generalistを養成せず、個人の能力を特化させてspecialistを養成する。
・とりわけ女性は外資を目指せ。
・懇談会の出席者の3,4割が、女性のマネジャーだった。
・ILO(国際労働機関)によると、1998年時点で、全管理職中女性の占める割合は、日本で7.8%、米国では45%だったという。
・外資の世界では、未消化の有給休暇があると、会社の利益が減るという会計規則が存在する。
・外資の本社から日本に派遣された日本支社の社長はExpatriate(国外移住者)と呼ばれる。基本アメリカ人は欧州を希望するが、far-eastの日本に来る者は実は2流でエリートコースから外れている。しかしながら、給料は2000万ほどだとしても、居住費、車、子供の学費、医療費などが厚遇されるので、その2倍はコストがかかる。社員はリストラされても、そこの厚遇は保証されているのが普通。
・本社と日本法人の間にアジア・パシフィック地区というくくりがある。地区の本部は香港やシンガポールに置かれることが多い。そこの地区長の下に、日本の社長がいる。
・外資系の日本支社の社長はやはりローカルな日本人が多く、業界の専門知識がある人間がヘッドハントされるのが普通。専門家であるほかに、リーダーシップ、進取の気性、チャレンジ精神があって、MBAやDrをもっていると尚良い。英語ができるのは、いうまでもない。
・外資系で社長を狙いたい幹部クラスの人材は、積極的にサーチ会社にコンタクトし、登録もしている。
・外資系では、ナンバー2が、むしろ危ない。
・バナナ人間・・・見た目は黄色人種(日本人)だが、一皮むくと、白い(白人)ということで、アメリカ育ちの人間。やはり英語が堪能だと、それだけで優秀と見られる傾向がある。
・下剋上が日常茶飯事なため、部下に1対1で仕事を教える上司は少ないが、組織としての教育制度は非常に充実している。ので自己啓発に適している。
・経理などは、中国にアウトソースする例が増えている。そこのマネジャークラスは、日本語英語ができる上に、日本の会計士の資格までもっている。
・日本支社のマネジャークラスで、朝出社してPCをあけると、英文のメールが30〜40通きている。が、中身は大学入試にでるレベルより下の平易な分が多い。
・投資銀行だと、資本市場部門、投資銀行部門に分けられる。前者では、更にセールスか、アナリストか、トレーダーかに分かれる。当然債権でいくのか株式にするのか、も決める。後者では、企業金融やM&Aの専門を仕込まれる。そこで生まれるのは、就社ではなく、就職、つまり専門性を磨く、という意識。GSだとか、モルガンだとかいう意識はあまりない。
・外資系金融機関には、「ガーデニング期間」というものが存在する。会社を辞めるとき、情報が漏れないように、籍は入れたままで1ヶ月出社させない期間を設けるという。
・外資は学歴主義、資格主義、実力主義。いい大学を出たりMBAを持っていると、とりあえず入社は楽になる。入ってからは実力主義となる。MBAにUSCPA(米国公認会計士)、CIA(公認内部監査人)、不動産鑑定士、シスアド、セラピストなどの資格が加わると、鬼に金棒状態となる。
・MBAは論文提出に重きを置く日本のそれと違い、スキルを学ぶ。会社に勤めてから取る人の方が圧倒的に多い。
・アフターファイブは同僚、上司とも互いに無縁。飲みにケーションが通じるのは日本だけ。
・日本企業はゲマインシャフト(共同体社会)、外資企業はゲゼルシャフト(利益社会)。
・アメリカでは32歳までに平均8回転職する(米国労働統計局)。
・ビル・ゲイツの資産は、アメリカの下から45%の人たちの総資産を上回っている。
・ボーダレスとなった世界の舞台で活躍する時代がやってきた。狭い殻に閉じこもって我慢するのは、もはや美徳ではない。冒険は若い人の特権なのだ。
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読み終った日:2009.02
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外資について知ることのできる一冊。
そもそも内資、外資という区別をする思考から脱却し、所謂、外資とはどのようなところかを知ることがこれからは必要だろうとのコンセプトに基づいた本。
外資の話題といえば去年のゴールドマン・サックスのボーナスが話題になっていたが、なぜにあんなに給与が高いのかから始まり、外資と内資の雰囲気の違い、仕事が明確に規定された職務記述書の存在、本社から送り込まれるエクスパットの存在などなど知ってるようでよく知らない外資の事情がよくまとまった本です。
外資でとるべき行動、してはならない行動など実際に中で働くにあたって心得ておくべきことが具体的に書かれている。
外資に関する本は多数あるが、これはその中でも外資のいいところも悪いところもよく書かれてていいと思います。改めて自分の今いる環境が外資であると実感もします。(ある意味では甘めの外資であったという
ことに気づいた。本当はもっと厳しいんだなぁ。)
外資に興味ある人は読む価値あります。 -
いまさら読んでも仕方がない年齢になりつつあるのだがブログで薦められてたので。
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自分が働く上での迷いや悩みを相談した場合に返ってきがちな時代錯誤の返答に違和感を感じています!という若い社会人は読んだ方がいいです。ザ・日本企業と外資系の両方で腰を据えて働いたという著者だからこその説得力ある言葉で自分の矛盾点を気付かされました。勉強する気になりますよ。
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一応外資系企業2社に在籍した経験と照らし合わせると、なるほど、納得できることが多かったと思います。社内の競争原理や基準・標準に関する考え方、グローバルとローカルの関係、・・・・。いろいろ経験したことをこの本を読みながら思い起こしてみてみると、自分は外資向きなんだと改めて感じますね。実際始めに就職したこくな企業から外資系企業へ転職したときには、何の違和感もなく馴染めました。逆に気分良く仕事が進められたくらいです。今後、どんどん国際化が進んでいくなかで、「外資流」に馴染めない人は脱落していくことになってしまうんでしょうかね。。。