場所: 二重世界内存在 (弘文堂思想選書)

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  • 弘文堂
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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335100215

作品紹介・あらすじ

人間存在は「世界の内に」あり、世界は「限りない開け」に於てある。したがって我々の存在は「限りない開けに於てある世界に於てある」。この二重の「於てある」を、ハイデッガーの存在論、ボルノウの空間論、エリアーデのヒエロファニー論、西田の場所論などを手がかりに、禅の十牛図、詩、俳句などに照して論述。

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  • ●以下引用

    世界Aにおいて「わたしの目の前を通る」雲は、世界Bに於いて「わたし」と時間の流れそのものをのせて動く。

    「わたしの目の前を通る」雲の動きと、「一日の出来事をのせて動く」雲の動きとは、現在として一つの動きであるが、そこには質的に異なった速さの二重の動きがあり

    雲を見ている現在と雲が見ている現在とが現在として通じ合う

    この二種類の世界を二重世界として一つに重ねているのは二重の現在を動く雲であり、その現在に現在している「わたし」である。

    このように見ている「わたし」の世界(A)をのせて「雲は動く」世界(B)というこの二重世界の二重性を二重性として一つに示している「雲」は、雲として虚空を動いて行く。

    我々がそこに「於てある」世界は世界として虚空に「於いてある」

    虚空は元来見えない。最終的に見えるものが何もないというのが虚空である。しかし我々が、本来そうであるようにこの世界/虚空の二重性に於てある時、我々の世界は何らかの仕方で「見える二重性」をなしてくる。世界に厚みや深みや奥行きが感じられてくるかあらである。

    「世界と虚空」という見えない二重性が主体の場所である時、(その時我々の自己は、後に評論するように、自己同一に閉じた自己ではなく自己ならざる自己)、虚空が世界の内にある主体にとって世界の縁取りのようにあらわれてくる

    いづくにか帰る日近きここちしてこの世のものの懐かしきころ/与謝野晶子

    我々は他者と交わり物事と関わり生きている。生き得ている。それは、交わりや関わりの場所が開かれていて、その場所の開けに我々の存在が開かれているからである。西田幾多郎の述語を借りて言えば、我々の存在は場所に「於てある」存在であり、場所とは「我々のいる場所である」

    我々主体が、見えない二重性に相応しく「自己ならざる自己」として、すなわち世界に於て自己としてありっつ
    つつ同時に「自己なく」して虚空に於てある時、同時に我々にとって世界はなんらかの仕方で見える二重になっている

    現ー存在とは、無のうちに差し入れられて保たれていると言われている。そのように言われる「無」は根本気分であるが不安が開示するものであり、

    無が根源的に開示されることに基づいてのみ、現存在としての人間は、存在するものに向かって行き存在するものに関わって行き得る

    現存在である人間に対して存在するものを存在するものとしてそもそも顕にするのは無

    すべての構成に先立つその地盤であるいわば原自然と言うべき「大地」

    原初の故郷、根源的な住処、地球(大地)

    この生活世界は地平現象として本質的に主観性に関係づけられている。そしてこのことは、世界が流動するそのつどの世界であることを意味している。生活世界はたえざる妥当相対性のうちにある

    我々に知られた存在は如何なる存在であっても存在そのものではない。我々は常に知の一つの地平において生きており

    地平としての世界にまた、必ずその彼方が属している

    経験の世界「地平」に、知られざる「地平の彼方」が第二の地平として重なってくる

    色を見、音を聞く刹那、未だ主もなく客もなく

    太初の時への回帰 の反復可能性、時間そのものの再生の経験

    祭りによって、人間は「神々との同時性」を生き、

    荒れ地の開墾は「単に人間的作業ではなく、太初の行為、すなわち神的な創造の働きによるカオスのコスモスへの転換の反復にほかならなかった」

    彼の生は別次元、すなわちもう一つの次元をもっている。彼は人間的あるばかりでなく、同時に宇宙的

    農耕技術という人間的素準での世界内の営みであるとともに、人間の現実存がコスモスに開かれている超人間的水準における神聖性への生きる参与

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