ブストス=ドメックのクロニクル

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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336042866

感想・レビュー・書評

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  •  ボルヘスとビオイ=カサーレスによる短編集。
    「ブストス=ドメック」とはこの二人の共著に対するペンネーム。
     本のオビから要約された内容を引用すると「偉大なる剽窃作家パラディオン、宇宙的レアリスム作家ボナベーナ、無限数の秘密結社存在論者バラルト、究極の簡略詩人エレーラ……。きわめて過激で奇矯なる架空の芸術家たちをめぐる真面目で奇想天外な短篇小説集」となる。
     すなわち架空の作家、詩人、芸術家たちに対する架空の評論、交遊録、エッセイといった形態の短篇が20編収録されている短編集ということになる。
     ボルセスとビオイ=カサーレスのどちらがどの短篇を担当したのかは明記されていないのだが、例えばこれはボルヘスかな、これはビオイ=カサーレスかな、といったことは、漠然とだが判るような気がする(当たっているかは心もとないが)。
     例えば欄外の注釈も含めて作品の一つとなっている形式は「モレルの発明」を思い出させるのでビオイ=カサーレス、「不死の人々」などはそのタイトルからしてボルヘス、なんてことは想像できる。
     巻末の解説を読んでもある程度どちらがどちらかはなんとなくわかる。
     さて、その内容の方だが、これがとても面白い。
    「真面目で奇想天外な短篇小説集」の「真面目」の3文字の上に濁点が付されているのだが、要するにいい意味で「不真面目」であり、「シニカル」であり「ブラック」であり「ユーモラス」であり、解説を読む限り「自虐的」な側面もあったりする。
     思わず吹き出してしまうような箇所が随所にあり、また背筋がゾゾっとくるような箇所もあり、読み進めていくうちにどんどんとこの虚構の世界の虜になっていく。
     読み始めはとっつき難いと感じるかも知れないが、本書の本質が判ってくるにつれて、いつの間にかニヤニヤしながら読み進めていく自分に気がつくことになると思う。
     ただ、短篇によっては「うーん、良く判らない……」というものもチラホラとあったのが残念。
     これは読解力の足りない読者(僕のことですね)に責任があるのだが……。

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著者プロフィール

1899年ブエノスアイレスに生まれる。教養豊かな家庭に育ち、年少よりヨーロッパ諸国を移り住んだ。六歳の頃から早くも作家を志望し、驚くべき早熟ぶりを示す。アルゼンチンに帰国後、精力的な文学活動を開始。一九六一年国際出版社賞を受賞。その後、著作は全世界で翻訳されている。20世紀を代表する作家の一人。
驚異的な博識に裏打ちされた、迷宮・鏡・円環といったテーマをめぐって展開されるその幻想的な文学世界は、日本でも多くの愛読者を持ち、全作品のほとんどが翻訳出版されている。一九八六年スイスにて死去。
小説に『伝奇集』『ブロディーの報告書』『創造者』『汚辱の世界史』(以上岩波書店)『エル・アレフ』(平凡社)『砂の本』(集英社)、評論に『続審問』『七つの夜』(以上岩波書店)『エバリスト・カリエゴ』『論議』『ボルヘスのイギリス文学史』『ボルヘスの北アメリカ文学史』『ボルヘスの「神曲」講義』(以上国書刊行会)『永遠の歴史』(筑摩書房)、詩に『永遠の薔薇・鉄の貨幣』(国書刊行会)『ブエノスアイレスの熱狂』(水声社)、アンソロジーに『夢の本』(国書刊行会)『天国・地獄百科』(水声社)などがある。

「2021年 『記憶の図書館 ボルヘス対話集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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