- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784336059390
作品紹介・あらすじ
9.11 やアラブの春等を経て、日本でもイスラームやイスラーム諸国に大きな関心が寄せられるようになってきた。しかし、政治、社会情勢、イスラーム思想に関する情報が広まっても、イスラームを語る上で最も重要な人物、預言者ムハンマドについてのはっきりとした人物像を描ける人は少ないのではなかろうか。しかし、イエスやそれ以前の預言者たちとは異なり、ムハンマドには、彼の近辺の人々が残した事細かな記録が現存しており、彼の生涯をつい最近のことのように、描くことのできる題材が整っている。
本書では、世界的な宗教学者であるカレン・アームストロングにより、歴史的・社会的背景に関する十分な考察と幅広い文献調査に基づき、ムハンマドの生涯とその業績が凝縮して描かれている。註なども整っており、学術的にしっかりとした著作でありながらも、平易で読みやすく、誰でも難なく通読できる内容である。『クルアーン(コーラン)』を含む、イスラームのすべての教えがその言動を通して人々に伝えられ、その没後から今日に至る1400 年近くの間、宗派にかかわらず、すべてのムスリムたちが愛してやまなかった一人の男の生涯こそ、イスラーム世界を理解するための原点となろう。そのような意味でも、本書は日本において、イスラームに関する最適の入門書となることが期待される。
イギリス「サンデータイムズ」書評:著者は目も眩むような才能を駆使して、長い歴史と複雑な命題を、決して単純化することなく、誰にでもわかるように教えてくれる。
感想・レビュー・書評
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イスラム教と西欧キリスト教社会は、十字軍、レコンキスタ、オスマン帝国による東ローマ帝国の滅亡、そして現代の中東戦争など、長い対峙の歴史であり、この感想を書いている2020年初においてもイランと米国の交戦が勃発するなど、融和の兆しがなかなか見られません。
本書では、預言者ムハンマドの生涯を、その時代背景とともによく理解することができます。部族と現世の利益をひたすら追求する当時の社会で、ムハンマドの生涯は、イスラムの教えを広める聖戦(ジハード)であったといいます。今日、西欧社会に対する戦いという文脈で使われるこの聖戦という言葉が、もともと全く違う意味を持っていたことに、蒙を啓かれる思いがします。
イスラムというのは、「神への全面降伏」を意味することも初めて知りました。「神の恩寵と庇護を受ける人々は、弱者を守り、他社に痛みを与えてなならない」。ムハンマドはヒラー山山頂で610年に啓示を受けます。ここから彼の奮闘(ジハード)が始まります。当時の社会状況で、その歩みが困難であったことは容易に想像できます。
また、キリスト教やユダヤ教は、イスラムにとって同じ啓典の民として、尊重されていたといいます。事実、イスラムの諸帝国ではユダヤ教は完全な自由を享受することになる、といいます。その対立が始まるのは、20世紀にユダヤ人のイスラエル建国と入植が開始されてからのようです。
ムハンマドの生涯を読むことで、今日イスラム教に対して偏見やバイアスがかかった見方に自身も影響を受けていることを再認識しました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で借りた。
イスラム教の創始者であり、最初で最大の預言者であるムハンマドの伝記。ムスリムが書いたのではなく、外側の宗教学者が書いたものであるのは留意点かと思う。
ムハンマドがどんな人生を送って、イスラム教がどのようにして出来上がったのかという歴史的背景を知るには十二分。戦う宗教であるとか、一夫多妻とか、「なんでそれが許されるの?」と現代の我々の感覚だと思うルールが多いイスラム教。それを理解できる1冊です。 -
イスラームに対する誤解がとける1冊
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とにかく読みづらい。生涯を語るのに、なぜここまで文語調なのか、暗喩的である必要が分からない。原文がそのような文体なのか、それとも訳の問題か。
イスラム教を興したムハンマドの生涯という紹介があり、イスラム教を理解する助けになるかと期待したが、本当に知りたかったことへの答えは得られなかった。
イスラーム:降伏、服従。神への降伏、という意味が宗教の名前になった。
ムスリム:自分の全存在を神に委ねたもの。