夜明け前のセレスティーノ

  • 国書刊行会
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784336074683

作品紹介・あらすじ

【国書刊行会 創業50周年記念復刊】
〈真の創造の奇跡〉を、ここにふたたび。

〈この家はいつも地獄だった。みんな死んでもないのに、もうここでは死んだ人たちの話ばっかり。……でも暮らしがほんとに悪くなったときだった。セレスティーノが詩を書こうと思いついたのは。かわいそうなセレスティーノ! いまぼくには彼が見える。居間のドアの陰に坐って両腕を引き抜いている……〉
母親は井戸に飛びこみ、祖父は自分を殺そうとする。
寒村に生きる少年の目に鮮やかに映しだされる、現実と未分化なもう一つの世界。
ラテンアメリカの魔術的空間に、少年期の幻想と悲痛な叫びが炸裂する!
『めくるめく世界』『夜になるまえに』のアレナスが、さまざまな手法を駆使して作り出した奇跡の傑作。

『夜明け前のセレスティーノ』はリズムである。
ちょうどその著者がリズムであったように――ファン・アブレウ

***

〈アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス アチャス……
斧(アチャス)の音がしないとぼくは眠れない。止まるな!
 止まるな!
 止まるな!〉

〈「斧(アチャス)はどんな音たてる?」
 「パスッって音、まるで空中で鳴きつづけてる霊みたいに」
 
 「斧(アチャス)はどんな音たてる?」
 「パスって音……。パスッ……」〉

***

少年期を、そしてキューバの生活を描いた最も美しい小説の一つ。
 カルロス・フエンテス(作家)

この並外れた小説を読むことは創造の真の奇跡と接触することだった。新鮮な爽やかさへ、旧態を打破するような恐れを知らない屈託のなさへと通じる空間にわたしを近づけてくれたのだ。危険にみちた領域に。
……いま日本の読者の手に届くこの本は、思春期の輝かしい時代に、このうえない教訓をわたしに与えてくれた。つまり、「本当の文学とはわたしたちを変わり者にする文学、わたしたちを危険にさらす文学である。書くことはひとつの仕事ではなく、呪わしい儀式なのだ」という。
 フアン・アブレウ(作家/画家)
 —―本書日本語版のための特別エッセイ「ハバナの奇跡」より

 『夜明け前のセレスティーノ』をどう語ったらいいか。濃緑の草がしゃべり出したような本だ。木の幹に詩を書くセレスティーノと、彼のいとこ「ぼく」。むきだしの生と死、暴力と抑圧。自由と抵抗の根っこには「詩」がある。叩きつけるリズムが日本語に乗り移った。
 小池昌代(詩人/作家)
 ――『私が選ぶ国書刊行会の3冊 国書刊行会創業50周年記念小冊子』より

感想・レビュー・書評

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  • これは大傑作だった。
    レイナルド・アレナスは自伝を同名タイトルで映画化した『夜になるまえに』だけ観たことがあり、著作は読んだことがなかった。

    『夜明け前のセレスティーノ』はレイナルド・アレナスのデビュー作。
    小説でありながら詩でもあるような不思議なリズムと驚くべきビジョンの作品。
    冒頭から眼の前に現れるように記されるキューバの青々とした大地と、そこで繰り広げられる執拗な暴力と罵倒の数々にクラクラする。
    爺が斧で子どもたちを追い回し、そのまんまぶっ殺してしまう。だが、死んだと思ったらケロッと登場したりして、最初は混乱する。
    何度も何度も殺されるセレスティーノ含む登場人物たちの姿に今、自分は何を読んでいるんだという笑いも起きる。そして唐突に魔術的なビジョンも登場したりする。
    はっきり言って狂ってる世界だ。
    だが、そんな強烈なビジョンではあるが、それだけではなくて寂しさや切なさのようなものもあって、読後感は自分はちょっと物悲しくも感じた。

    五部作の第一作ということで次巻も出してほしい。

  • ネオリアリズモとマジカルリアリズムの出会いの様な一抹の美しさと複雑さがある。詩で出来上がった迷路。人生!

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著者プロフィール

レイナルド・アレナス
1943年、キューバの寒村に生まれる。作家・詩人。1965年、『夜明け前のセレスティーノ』が作家芸術家連盟のコンクールで入賞しデビュー。翌年の『めくるめく世界』も同様に入賞したものの出版許可はおりなかった。だが、秘密裏に持ち出された原稿の仏訳が1968年に仏メディシス賞を受賞し、海外での評価が急速に高まる。ただ、政府に無断で出版したことから、その後いっそうカストロ政権下での立場が悪化。そうした国内での政治的抑圧や性的不寛容から逃れるため、1980年、キューバを脱出しアメリカに亡命する。主な作品には『夜明け前のセレスティーノ』から続く5部作《ペンタゴニア》(『真っ白いスカンクどもの館』『ふたたび、海』『夏の色』『襲撃』)『ドアマン』『ハバナへの旅』、詩集『製糖工場』『意思表明をしながら生きる』、自伝『夜になるまえに』などがある。1990年、ニューヨークにて自死。

「2023年 『夜明け前のセレスティーノ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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