放送コンクールのアナウンス部門代表に選ばれた美結は原稿作成と練習に燃えていたところ、骨折し、入院した先で骨肉腫と診断されてしまう。右下肢切断が必要と宣告された彼女はリスク覚悟で温存療法にしたいと悩んでいたが、主治医の「みんなと同じであることは、生きることより大切なことだろうか」の一言に心を動かされる。
両親、友人、主治医、看護師、リハビリ室で出会った事故で片足を失った男性、周りの人たちから勇気をもらいながら生きることを選択した少女の姿を描く。
タイトルの「さくら坂」が不思議。
彼女の担当看護師の名字で、その看護師は確かにかなりできた人で彼女の支えになっているが、それ以上ではない。
導入部分で、登校坂にある桜の開花を彼女は心待ちにしていたが、ここについての記述はそれっきり。最後に桜の絵が描かれたハガキを投函する場面があるが、これも理由はわからない。
彼女が下肢切断を選択した会話部分があまりにもでき過ぎに感じる。
主治医の言葉に突然「心が、動けるようになっていく」とあるが、あまりに唐突でこちらが驚いた。
できるならば、病院内で前向きになれた彼女が、外の世界に出て、周りの人たちと奮闘しながら将来を夢見る姿まで描いて欲しかった。