幸福の軛

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 38
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (446ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344003170

作品紹介・あらすじ

不登校の中学生殺害に端を発した連続殺人事件。教育カウンセラーの中原が見た、「愛されない不安」を抱える子供達の姿。彼は、理想の教育を実現する方法を模索し始めるが…。人間の心の闇を暴く、著者初の本格ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 清水義範『幸福の軛(くびき)』読了。「軛」とは、辞書によると「自由を束縛するもの」。子供たちの心の闇に、だれがどこまで介入すべきなのか。少年犯罪と教育の問題に一石を投じる作。著者がこんなミステリを書く人とは知らなかった。最近の寝不足の一因になった一冊。

  • 神戸のあの有名な事件をモチーフにした「少年犯罪」ミステリ。だけどただ少年犯罪を扱っているというわけじゃなく、全体的な「壊れゆく現代人」の物語ともいえる。たしかに現代人、必ずどこかしら壊れているものだと思うけれども。「少年犯罪」というものにとらわれすぎて、壊れている「大人」にはなかなか気づかないんだよね。というよりも、「大人」が壊れることによって「少年」が壊れていったりもするわけだ。そういう観点から読んでいくと、このタイトルは実に重い。

  • 軛とは車の轅(ながえ)の端につけて、牛馬の後頸にかける横木の
    こと、転じて自由を束縛するもの(広辞苑)、だそうです。
    え?轅(ながえ)ってなに?
    轅:長柄の意、牛車・馬車などの前に長く平行に出した2本の棒だ
    って。

    さて、
    清水義範といえばパスティーシュの旗手としてご存知の方も多いの
    では、と思いますがこの作品は違います。通常の彼の作品には、に
    やりとさせる何か、思わず笑ってしまうなにかがちりばめられてい
    るのですが、この作品の紹介にもあるように清水氏初のミステリー
    ということでかなりカラーの違った作品に仕上がっています。

    近年深刻化する少年犯罪とその原因を心の問題と捉え焦点に絞った
    あたりは、教育に対し熱い思いのある清水氏らしいなぁと思います。




    いじめを苦に自殺した少年の事件から物語りは始まります。
    続いて同じ学校で起こった少年の惨殺事件。この事件は少年を殺害
    したうえに首を切り落とし神社の境内にさらすという惨忍極まりな
    い事件でした。その上、殺された少年の口の中には「鬼面羅大魔王」
    と書かれた紙が...
    なんとも酒鬼薔薇を思い出させるこの事件ですが作中にもこの酒鬼
    薔薇事件は登場します。

    この事件に対してカウンセラーである中原が立ち上がり、その学校
    でのカウンセリングに乗り出します。一方では週刊誌の事件記者舘
    林が事件の真相を探ろうと動き出す。

    自殺した少年とその生い立ちに潜む陰、その親、学校側の態度...
    子供達を取り巻く環境が子供の心を壊していくことをカウンセリン
    グを通して痛切に感じとる中原。

    この作品の感想を書くに当たり、他の方の感想を検索してみた。
    そのなかのかなりの割合の人が早い段階で犯人が特定できたようだ。
    が、このとゆら、読解力がないのか最後までわかってませんでした。

    しかし、清水義範の作品とは思えないほど暗く重たい作品でした。
    また幕切れもちょっと後味が悪くて...

  • 何もかもが歪んでいた。いじめる側も、いじめられる側も。そして、何よりも、正しく、強く、決して、歪んではほしくない立場の者までもが。いったい、どこに、助けを求めたらいいのだろう。何を信頼すればいいのだろう。現代社会での問題を象徴する、考えさせられた作品である。

  • 清水義範さん初の本格ミステリィ。
    不登校の中学生が殺される事件に端を発した 被害者が中学生の連続殺人事件。
    「愛されない不安」により壊れていく子供たちを救いたい一心で関わっていく
    教育カウンセラー 中原。その目に、その心に映ったものは何だったのか。

    陰湿に続けられるいじめと 危惧してはいても認めたくない気持ちが目を逸らす学校。
    いじめる側の方が実は深く心を病んでいることが多いのだというのは うなずけることである。
    そして 子供が病む原因のほとんどは 親の心の奥にあるのだ ということに 今更ながら納得しつつ 身が震える思いがした。
    中原ほどカウンセラーに適した人物は他にはいないのではないかと思う。

    途中まで読み進んで 嫌ぁな感じに取り憑かれた。その予感が当たってしまったのが哀しすぎる。

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著者プロフィール

1947年愛知県生まれ。愛知教育大学教育学部国語学科卒業。1981年『昭和御前試合』でデビュー。1986年『蕎麦ときしめん』が話題となり、独自のパスティーシュ文学を確立する。1988年『国語入試問題必勝法』で第9回吉川英治文学新人賞を受賞。2009年、名古屋文化の神髄紹介とユーモアあふれる作風により第62回中日文化賞受賞。『永遠のジャック&ベティ』『金鯱の夢』『虚構市立不条理中学校』『朦朧戦記』等著書多数。また西原理恵子との共著として『おもしろくても理科』『どうころんでも社会科』『いやでも楽しめる算数』『はじめてわかる国語』などがある。

「2021年 『MONEY 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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