日本経済の不都合な真実: 生き残り7つの提言

  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344019379

感想・レビュー・書評

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  • 今の日本経済について、いくつかの神話を切る。「日本政府は赤字だが日本国は黒字だから大丈夫」「政府紙幣を発行するば万事解決」「国債発行は子供や孫への負担の先送りではない」国債の問題を分かりやすく解説。そして、日本経済回復の処方箋も提示。でも、政治家には期待できない。国民はどうしたらいいのか?だれを選挙で選べばいいのか?

  • ほんとねえ、購入して枕元に置いてても良いと思うんだけど、あいにく図書館で借りた本なで。
    国債のところとか。逆の立場で違うこと言ってる人もいて、全部読み散らかしなので良く判らないが、比べてみんといかんのやろうな。
     雇用調整の、非正規雇用のところはよく判った。
     それだけでも収穫。

  • 本書の発行は2011年1月。その後の震災で財政を取り巻く状況はさらに深刻化してしまった。
    不測の事態に個人でも備えたいのだが何をすればいいのか…。 
     

  • 日本経済の不都合な真実
    1.日本国債はなぜ暴落しないのか
     政府は赤字でも国としては黒字だから大丈夫 → 国の経常収支は黒字だが、現行、外国に投資している日本企業などが投資で儲けているからに他ならない。これらが政府の借金返済のための増税を受け入れるかどうかは別問題。
     政府紙幣を発行すれば解決するか → 国債と引き換えに政府が受け取るお金は、民間が所得の一部を節約して生み出したものであり、GDPの裏付けがある。日銀引き受けで政府が直接日銀に国債を売ってしまえば、政府紙幣と同じで、GDPの裏付けもなく、返済の義務もなく歯止めがきかない。これらは法律で禁止されており、そうなった時点で実質的に経済が破たんしていることになる。
     日本の国際価格が高止まりして、異様に金利が低いのは、国際情勢と、政府日銀の方針による静かなバブルの結果。国債の2割が、安定保有者である日本郵政によって所有されており、利益動機に関わらず、国債保有それ自体を自己目的化している。また、長期の景気低迷が金利の抑止力となってきた経緯もある。国債市場の参加者が、まだしばらくは破たんしないと考えているから何とかもっているものの、日本郵政が国債の売り抜けに失敗して、多額の損失を被れば、一巻の終わり。

    2.破たんの足音
    ①不安心理が市場を動かし、ギリシャのように突然破たんが訪れる。
    ②これまで国債は、日本国民の貯蓄によって支えられていたが、団塊の世代がリタイヤし、年金と貯蓄の取り崩しで生活するようになって、日本の貯蓄構造に大きな変化が生じることは避けられない。
    ③IMFが2010年に日本に関する年次審査報告書を提出。2011年度から歳出削減などの財政再建をはじめ、消費税率を今後10年で15%まで引き上げることを再建の道筋として提示。このままいくと、2014年に、政府債務残高の対GDP比率が245%となり、2019年には個人金融資産に匹敵する規模を超え、その後は国債の国内消化ができなくなるリスクが高い。
    ④日本の社会保障給付は圧倒的に高齢者に偏り、若者層は高福祉国とは言えない福祉水準になっている。これは、設計時に、会社を離れた高齢者の面倒は国が観て、現役世代の福祉は会社が福利厚生で行うという前提となっていたため。しかし、企業一家的な雇用慣行が色褪せて、状況が一変した。
     現在の日本の姿とは、福祉にかかる予算が年々1兆円を超えるペースで増える一方、デフレが進行して税収が伸びず、政府の借金が増え続ける傍らでそれを支える国内の貯蓄は減り続け、国の利益の柱であった貿易黒字も風前の灯。おまけに労働人口が急速に減少して、現役世代が高齢者を支える社会の仕組みそのものが崩壊しつつある。

    3.不況の原因と対策
     ケインズ的な政策は景気刺激策で、どちらかといえば一時的な不況ヘの対応手段と考えられる。
     経済成長戦略は、GDPを生み出す企業群の実力を向上させ、その結果、モノやサービスが売れて日本の生産力が大きくなるよう仕向けること。イノベーションが好況をもたらし、経済を成長させる。
     企業群が安心してイノベーションを追求できる環境を用意し、元気な産業や企業を育てることが成長戦略の基本。
     需給不足とは、モノやサービスが売れ残るということではなく、労働力や設備を目いっぱい使って供給すると売れ残るので、売れる量だけ作って人や設備を遊ばせていること。あと、20~40兆円分の需要があれば、失業者はいなくなる。
     不況の真相:イノベーションが一巡して皆が同じことを始めると、競争が激しくなって儲からなくなる。目新しさが無くなって需要も減る。投資意欲が衰え、経済構造の調整が必要になる。古い設備が役に立たなくなり、それらを扱う労働力も需要を失う。不況とは、新たなイノベーションが次の好況を生み出すまでの構造調整機関である。

    4.日本を強くする7つの提言
    ①供給サイドの強化
    日本が世界で勝負できる商品は、20年前も今も自動車だけである。iPhoneの基幹部品は日本製だったが、iPadでは、韓国や台湾製だった。日本の産業と企業が新陳代謝できていないのは明白。
    日本的経営はかつて成功のカギだったが、護送船団方式や終身雇用制などすでに陳腐化している。国際競争力を失った古い日本のビジネス環境、ビジネスモデルを残したまま長期的な成長力を取り戻すことは不可能。
    ②法人税の引き下げ
    世界と比べて圧倒的に高い法人税のために、日本企業が海外に脱出し、外国企業は日本を素通りしている。法人税引き下げの目的は、企業の優遇ではなく、企業に体力をつけさせ、国と国民を豊かにすることが狙い。
    ③日本的雇用慣行の改革
    年功序列、終身雇用の日本的雇用慣行は、高度成長気にのみ通用した非常に特殊な制度。日本が低成長時代を迎えた今、この制度は維持できない。
    本来手を付けるべき守られ過ぎた正規社員の問題に手を付けず、日本に働く機会のみを残すための必要悪として緊急的に導入され、拡大したのが派遣労働などの非正規雇用。正規雇用者の流動性を高めながら非正規雇用者の労働条件を改善し、正規と非正規の格差を縮める方向で解決すべき課題。スウェーデンやオランダで採用されている、フレキシキュリティーという雇用政策では、企業が従業員を自由に解雇できるが、失業者には手厚い失業給付を約束し、給付の条件として、職業訓練を義務付けるというもの。
    ④内需重視に騙されるな
    貿易の拡大は、内需を拡大する有効な手段である。デフレが進み企業も家計も委縮する傍ら、財政赤字が膨らんで思い切った財政拡大もできない日本で、国内ばかりを見て内需拡大を避けんでも手詰まりである。加工貿易の有効性は、発展途上であった行動経済成長期とともに終わっている。
    ⑤FTAの推進、⑥規制緩和の促進、⑦不透明な日本流規制の阻止

  • 2011年の日本の経済。わかりやすいデータで日本の今を説く。
    経済、国家財政、公務員、雇用制度など様々な観点から日本の将来を論じる。わかりやすい解説。

  • 現代の政治と絡めつつ

    日本の経済に着いて書いてあります

    重要部分に太線などあってよみやすい

  • 多分、易しい部類に入るんだろうけど、経済オンチにはこれでもいっぱいいっぱい。覚えたのは、日本の国家予算額くらい…。

  • 国民の貯蓄によって支えられてきた日本の国債。今、家計の貯蓄率の低下に伴い国債消化に不安の嵐の兆しが見え始めている。脆弱な財政基盤、下げ余地のない政策金利、もはや政府は緊急事態には対処できなくなっている。団塊の世代が年金と貯蓄の取り崩しで生活をし始める2012年。危機は刻一刻と迫ってきている。そんな中、巷間囁かれているのが政府紙幣。しかし、国債の発行であれば、貸す国民の意思と借りる政府の意思との間で一定の歯止めが利くが、政府に紙幣の発行権が委ねられてしまった場合、西南戦争、太平洋戦争の時がそうであったように、歯止めは途端に効かなくなる。政府が勝手にお金を印刷することを法律で禁じているのは歴史の反省からであり、そもそも政府紙幣という発想自体、日本の政治と国民の劣化の象徴であることを自覚しなければならない。カンフル剤的な景気対策で無理やり作った需要は一巡すれば元の木阿弥であり、しかも使い続ければ次第に経済の基礎体力を弱め、後に残るのは政府の借金。おまけに福祉にかかる予算が年1兆円ペースで増えている。労働力人口が減少し現役世代が高齢者を支える社会の仕組みそのものが崩壊しつつあるのが日本の現状なのである。
    他方、ウインドウズやアップルのパソコン、ヤフーやグーグルなど、今、快調にアメリカ経済を牽引しているのは米国の自動車や家電が国債競争力を失うのと入れ替わりに生まれ成長を遂げている。政府が取り組まなければならないのは競争力のない産業を保護と規制で守って企業内失業者を増やすのではなく無理なく成長産業に移れるようサポートすること。時代の変化に合わせた新陳代謝を促すことである。護送船団方式で経済を運営する時の強みであった規制は、既得権益と結びついて経済成長の手足を縛る障害に変質した。寧ろ保護や規制は成長力を失った産業や企業を温存し、非効率な政府や官僚機構の権限を肥大化させ、伸びようとする企業のイノベーション力を摘んで経済の新陳代謝を妨げる要因とさえなっている。政府が支出をすればするほど非効率な官の権限を増やしているのだ。いまこそ嵐に立ち向かう独立自尊の気概を国をあげて養うことが肝要。著者は、甘やかしの日本の現状を丁寧に語り問題の打開策を具体的に示している。論理の展開もスムーズで無理がない。非常にわかりやすかった。お勧めの一冊である。

  • 日本は国債の累積発行高が増え続けていて、いつか破たんする。

    幾つかの反論への回答。

    日本経済を成長させるには、需要サイドの刺激(公共事業)でなく、供給サイドの強化(企業の活性化)が必要。
    そのために、法人税減税・FTA締結と自由貿易・規制緩和を進めましょう。

    論点はシンプル。
    説明は分かりやすく噛み砕かれている。

  • 一般向けの日本経済の本。わかりやすい言葉で書かれている。でも、それゆえに何か見落としてしまっている点があるのではないか、とびくびくしてしまう。
    例えば、FTAへの意見は産業界寄りで、農業界の懸念にはあまり触れられていないように思えた。
    種々の問題には様々な見方がある。それをよく把握していないうちは、「提言」と言われても追従する気になれない。

    日本の金利の状態に関しては、考えたことがなかったので新鮮だった。
    また、日本で実施されている制限についての話題も興味深かった。
    「日本では性能の良いミシンを買うことはできない。一方海外では買うことができる」という状況を使った喩え話がわかりやすかった(うろ覚えなので読みなおす)。

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著者プロフィール

1956 年大阪府出身。早稲田大学法学部卒業後、讀賣テレビ放送に入社。プロデューサー・報道局解説委員長等を歴任し、現在は大阪綜合研究所代表。
「そこまで言って委員会NP」「ウェークアップ!ぷらす」「朝生ワイドす・またん!」「辛坊治郎ズームそこまで言うか!」などのテレビ・ラジオ番組で活躍。近著に『風のことは風に問え―太平洋往復横断記』(扶桑社)、『日本再生への羅針盤~この国の「ウイルス」を撲滅するにはどうしたらいいのか?』(光文社)などがある。

「2022年 『この国は歪んだニュースに溢れている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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