早春賦

著者 :
  • 幻冬舎
3.48
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本棚登録 : 117
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344028579

作品紹介・あらすじ

明治維新後、金貸業から事業を拡大させた大堂家の娘・菊乃は、身分違いの伯爵家に嫁ぐ。そこで待ち構えていたのは、歌舞伎より能を、世界情勢より貴顕社会の噂話を好み、欲望と快楽に耽る一家だった。生家との違いに驚き、爛れた伯爵家の闇の深さを知った菊乃は、持ち前の負けん気が顔を出すのを感じていた…。女性の権利が認められなかった激動の明治時代、旧弊な価値観はびこる格式張った家に、菊乃が新時代の風を巻き起こす!

感想・レビュー・書評

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  • 明治維新という時代設定、過酷な運命に負けず自らの人生を切り開いていく女性、色々と自分好みのストーリーが気に入って一気読み。
    地位が欲しい、いわゆる「成り上がり」の大堂家。金が欲しい、伯爵家の二礼家。互いの利害関係のために伯爵家に嫁いだ菊乃だったが、その伯爵家の闇の深さに愕然とする。
    妾、隠し子、財産横領。出るわ出るわの名家の膿。比較的早い段階で、したたかさを見せる菊乃の胆力の強さに驚くけれど、若い娘とは思えないメンタルの強さで伯爵家を変えていく彼女の行動から目が離せない。ここまでドロドロした濃いドラマ、最近ではなかなかお目にかかれないもので、是非映像化して欲しいと思ってしまうのである。
    ドロドロしているとはいえ決してキワモノにならないところが山口さんの巧さ。明治~大正の時代の描写のきめ細やかさにはうっとりさせられる。
    展開を急いだなぁと思うところはあるものの、ある意味「王道」で、それでいて一部意表を突くところもあるストーリー展開はクセになります。

  • 食堂のおばちゃんシリーズから見たら、ビックリな内容。
    ドラマチックすぎ。
    女性の権利なんて全くない時代に、菊乃の生き方はあっぱれとしか言いようがない。
    その時代の「普通」と思われる母の佳乃、娘の早紀子、早紀子の生みの母、早苗の生き方との対比がすごすぎる。
    菊乃の夫、通敬の光源氏的生き方も驚き。

  • #読了 大好きな山口恵以子さんの本でワクワクしながら読んだ。明治〜大正の時代描写が相変わらず好き。菊乃が、政略結婚でありながら無邪気に婚約者に恋する少女から、酸いも甘いも嚙み分ける大人の女性へ変貌していく様がゾクゾクするし、公家華族のうらぶれて爛れたような色気もよく表現されていた。
    明治〜大正時代の小説が好きなら、読んでみて損はないのではなかろうか。面白かったです!

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    明治維新後、金貸業から事業を拡大させた大堂家の娘・菊乃は、身分違いの伯爵家に嫁ぐ。そこで待ち構えていたのは、歌舞伎より能を、世界情勢より貴顕社会の噂話を好み、欲望と快楽に耽る一家だった。生家との違いに驚き、爛れた伯爵家の闇の深さを知った菊乃は、持ち前の負けん気が顔を出すのを感じていた…。女性の権利が認められなかった激動の明治時代、旧弊な価値観はびこる格式張った家に、菊乃が新時代の風を巻き起こす!

    令和元年9月19日~22日

  • 札差から財閥に成り上がった大堂家の娘菊乃は、公家華族二礼家に嫁いだ。
    嫁ぎ先の伯爵家は、伯父久の言葉を借りると化け物屋敷。夫通敬は結婚前から妾を囲っていたり、女中をお手付きにしたり、兄の未亡人と恋仲になったりと、光源氏を地で行く様子。
    その事実を目の当たりにしながらも、菊乃は二礼家のために嫁として務め続けた。

    世を知らぬお嬢さまがしたたかな女になって行く話は、著者の他の作品にもありましたが、菊乃のしたたかさには頭が下がります。
    二礼家の存続だけが心の支えの菊乃の復讐や娘への言葉など、ドロドロの愛憎劇と言えなくもないけれど、圧巻で、気持ちの良いほどです。

    次世代の早紀子は、母の姿を見、愛情を受け、優しい夫と共に二礼家とその周りの人達の想いを継承して行くことでしょう。

    恋は落ちるもの、愛は育てるもの。
    楽しい読書時間でした。


  • 社員食堂のおばちゃん作家として有名な山口恵以子氏の作品はこれが初めて。

    好きなジャンルと少し離れた作品が多かったので、これまで読むきっかけがなかった。

    日経新聞の夕刊のエッセイ欄(プロムナード)の火曜日を今年の1月から半年間担当していたものを読み、この作家の書く小説はきっと面白い......と思い手にしたのが本作である。

    結論として「一気読み」させるだけの勢いと筆力を感じさせる、かなりの佳作であった。

    特に前半における主人公・菊乃の魅力的なキャラ設定と物語展開の痛快さは流石であると感じた。

    ただ後半はその痛快さが影を潜め、反対に昼ドラ的なドロドロ・バタバタした展開になるのが少々惜しい。

    基本的には菊乃の一代記にもかかわらず、後半は娘の早紀子(正確には亡くなった夫が菊乃の右腕的な使用人に産ませた子......そんな鬼畜的な話が盛りだくさんw)視点の物語になっているのも、小説的勢いが失われてしまった一因なのだろう。

    作者のインタビュー記事によれば、むかし漫画家を目指していた頃、娘・早紀子を主人公にした物語を書いていたとのことなので、なにか拘りがあったのかもしれないが、結果的には悪手だったと思う。

    とは言え冒頭に書いたとおり、十分に面白い作品ではあったので、今後他の作品も読んでみたいと思う。

  • 著者初読み。
    明治から昭和の時代を強くしたたかに生き抜いた女性の話。
    明治維新後、裕福な商家の娘 菊乃は伯爵家に嫁ぐ。
    嫁ぎ先の旧弊な価値観の中で、美しく賢く財力もある菊乃が、伯爵家を牛耳っていく様が面白い。
    当時の贅沢な上流階級の様子も楽しかった。
    (図書館)

  • 幕末から明治時代にかけての豪商出身の裕福な上流階級に育った菊乃。当時は女性が賢いことを嫌い、親が決める結婚は女性にとって、お家を守るための手段。家と家との取引や思惑が渦巻く中、気高く生き抜いた菊乃の姿に胸がすく思い。時代モノや歴史的な言い回しは実は苦手だったけれど、身分の違い、上流階級の暮らしぶりなども含めて、知らない世界に触れ、愉しむことが出来た。菊乃に心を通わせることなく、身近な女性に現を抜かす夫の通敬の様子に心を乱されたが、最後の種明かしで彼の弱さにホロリ。

  • 政略結婚と知りながら許嫁に恋をした菊乃を
    襲ったのは、妾の存在、隠し子、財産横領、
    やっと授かった我が子の流産…。
    地獄の中で芽生えた自立心が、菊乃の運命を
    変えていく。激動の明治・大正時代を生き抜いた
    女の一生を描く。

  • 何だろう、まとまりのない感じがしちゃったな。
    菊乃の話しだけで良かった気がするんだけど…

    この時代の話しは好きなんだけどな~

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著者プロフィール

1958年、東京都江戸川区生まれ。早稲田大学文学部卒業。松竹シナリオ研究所で学び、脚本家を目指し、プロットライターとして活動。その後、丸の内新聞事業協同組合の社員食堂に勤務しながら、小説の執筆に取り組む。2007年、『邪剣始末』で作家デビュー。2013年、『月下上海』で第20回松本清張賞を受賞。その他の著書に「婚活食堂」「食堂のおばちゃん」「ゆうれい居酒屋」シリーズや、『風待心中』『ゆうれい居酒屋』『恋形見』『いつでも母と』、共著に『猿と猿回し』などがある。

「2023年 『婚活食堂9』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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