浅草ルンタッタ

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344039940

作品紹介・あらすじ

今は一人ぼっちでも、またみんなの前で歌うんだ──。100万部突破のベストセラー『陰日向に咲く』を超える、さらなる大傑作!12年ぶりに書き下ろす、圧倒的祝祭に満ちた物語。行き場をなくした女たちが集う浅草の置屋「燕屋」の前に、一人の赤ん坊が捨てられていた。かつて自らの子を亡くした遊女の千代は、周囲の反対を押し切って育てることを決める。お雪と名付けられた少女は、燕屋の人々に囲まれながら、明治から大正へ、浅草の賑わいとともに成長する。楽しみは芝居小屋に通うこと。歌って、踊って、浅草オペラの真似をして、毎日はあんなに賑やかで幸せだったのに。あの男がすっかり台無しにした──。

感想・レビュー・書評

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  • 陽気な作品かと思ったらそぐわない程暗くて深い内容の小説。
    社会の底辺で暮らす虐げられた人達の人情が温かい。それでも負けない気構えの逞しさをあの頃の日本人は持っていたんだ、と思った時、題名の力強さが改めて哀しく響いた。これも映画化されるのかな。

  • 泣いて笑ってまた泣いて。
    劇団ひとりに私たちは何度驚かされるのだろう。驚いたあと何度喜び続けるのだろう。
    彼が書き続けてくれる限り、驚きと喜びは続く。その幸せよ。

    遊郭、置屋。
    そこに生きる女たちの矜持と、命の物語。
    こんなにも悲しくて切なくて、そして美しい「ルンタッタ」が今まであっただろうか。
    歌に救われたかつての自分の、その涙を思い出した。
    どんな境遇の中にでも「救い」となる「それ」がある。あるからこそ生きていられる。
    かすかで見えない光かも知れない。でもその「それ」を見つけられたらきっともう大丈夫だと思える。
    言葉に出来ない「それ」を紡いで私たちは生きている。
    劇団ひとりの優しいまなざしを、そこに感じた。

  • なんとも切なくてだけど物語を追いかけていきたくなってしまう、とても心にぐっくとるお話。陰日向に咲くの時も才能に感動したけれど、今回も悲しみの中に強い志や深い情が感じられてすごいなぁとただただ感嘆。厳密にいっちゃうとピアノがそんな簡単にマスターできるわけないとか、7年間も一人で生活するのは不可能ではと突っ込みどころもいっぱいあるのは確かなんだけど、全部ひっくるめて結果オーライであったように思う。
    理不尽なことは多々あって何を大切に生きるのか深く考えさせられたお話だった。
    題名とのギャップにまんまと騙された人は多いのでは。

  • 隙間時間に読み始めなくてよかった。
    1行目「赤ん坊がねむっている」から、楽譜の上の音符よろしくリズミカルな文章が踊る。
    スルスルとその世界に引き込まれ、頭の中に映像が浮かぶ。
    綴られる言葉遣いは、その情景をスムーズに思い起こさせてくれて気持ちがいい。
    あっという間、2時間の浅草夢の世界だった。
    全編読み終えて真っ先に思ったのはぜひぜひ映像化して欲しいということ。
    当然、頭の中ではキャスティングが始まる。
    まだまだ暫くは、千代は誰、信夫は誰と楽しめそうだ。
    血はつながらなくとも、命はずっと繋がっていく。
    読者の胸も踊る傑作。

  • 過酷な運命と境遇のなかでも
    小さな命をつなげようと
    健気に、
    懸命に生き抜く姿を描く感動作。
    疾走感も躍動感も、
    ともに突き抜けていた!
    浅草オペラに関東大震災と
    大正時代のノスタルジーも満載。
    何とも小気味よく、何よりおもしろい!
    ルンタッタのリズムが心地よく残り、
    劇団ひとりの溢れんばかりの才気に
    酔いしれた!!!

  • 明治、大正時代の浅草が舞台。
    雪の日に女郎屋燕屋に捨てられた女の赤ちゃんを拾った千代が母親として娘を守ろうとする。
    いつの間にか燕屋のアイドルになっていたお雪をなんとか守ってやりたいという思いが溢れていた。
    お雪の強さにも驚く。母性本能が繋がっていく。

  • タイトルと表紙からは想像できないくらい、暗くて重いお話だった。
    時代背景について、しっかり描かれているから、没入感はすごくあった。
    悲しいはずなんだけど、それよりも日本人の強さを感じた。
    義理と人情って、最近は重視されないし、古いって思われるかもしれないけど、その恩恵を受けて生きてきた自分にとっては、やっぱり大切にしたい気持ちだなと。

  • 心弾む「ルンタッタ」だと思って手にしたら、人間の醜さと優しさたっぷりの物語。ひとりさん、たいした才能です。

  • 劇団ひとりの新作。

    日露戦争が終わり、関東大地震が起こったその当時。
    吉原には程遠い安く男が女を買える安宿の、女郎たちの貧しくも逞しい暮らし。

    横暴で変態な鹿児島出身のいやな警察官のせいで、薄幸な女郎は地獄に落とされる。
    女郎たちの光は、雪の降る晩に宿の軒先に捨てられていた赤ん坊、お雪。

    その小さな命が唯一の幸せ。
    突っ込むところは多少あるが、わたしは、芥川賞受賞の又吉さんよりも好きな作風。

  • Amazonの紹介より
    行き場をなくした女たちが集う浅草の置屋「燕屋」の前に、一人の赤ん坊が捨てられていた。かつて自らの子を亡くした遊女の千代は、周囲の反対を押し切って育てることを決める。お雪と名付けられた少女は、燕屋の人々に囲まれながら、明治から大正へ、浅草の賑わいとともに成長する。楽しみは芝居小屋に通うこと。歌って、踊って、浅草オペラの真似をして、毎日はあんなに賑やかで幸せだったのに。あの男がすっかり台無しにした──。


    題名から想像するイメージは、明るく楽しい雰囲気のあるイメージだったのですが、読み進めてみると、地震や殺人といった壮絶な出来事の連続で、心情としては重い気持ちになるばかりでした。

    多少、違和感やご都合主義な部分もありましたが、みんなで協力し合いながら懸命に生きている姿に心が救われた気持ちにもなりました。

    気になる箇所というと、冒頭の赤ん坊が捨てられる場面です。福子が発見し、「燕屋」で育てることになるのですが、その際、赤ん坊=お雪が結びつきませんでした。表紙の帯では、あらすじが書かれていて、その際「お雪」も書かれています。

    ところが、その辺りは小説内では端折っています。赤ん坊を発見し、その後5年後の世界になるのですが、その際「お雪」=発見された赤ん坊だったとは、少しの間わからなかったので、ちょっと戸惑っていました。

    また、5年後だったり、7年後だったりと読み進めていくと、色々時代が変わっていきます。「お雪」の変化はわかるのですが、「燕屋」の面々が、年齢を重ねてもそんなに変わっていないなという印象があり、もう少し変化が見られるのではとも思いました。

    他にも、久々の再会!?と思いきや、事あるごとに偶然!?かのような悲運な出来事をいくつか登場させるので、ちょっと「作り込まれてる」感があって、感動がちょっと冷めて、ひいてしまいました。

    そういった部分はあるものの、「子」を想う「母親」の気持ちや「親」を想う「子」の気持ちに心が痛かったです。
    でも、時たま登場する歌やオペラが、心を和ませてくれました。

    裕福じゃなくても周りがいれば、なんとかなる。浅草での人情が感動的でした。

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