- Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344415591
感想・レビュー・書評
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ある朝、邦和信託銀行神田支店で、一人の社員による立て篭り事件が発生。過去の杜撰な経営と不正の公表を要求し、それらが詰まったデータで上層部に揺さぶりをかける占拠犯は、六年前の金融危機で袂を分かった同期を交渉役に指名した。犯人の動機は、そして事件の真相は?
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好きな作家なので、中身を良く確認せずに読み始めたが...
いや、これまさか「水族館ガール」と同じ人とは(^ ^;
ものっそい硬派な企業ものでした(^ ^;
が、解説を読むと、こちらの方が水族館ガールより
ずっと初期の作品らしい。
そして作者は元銀行マンだったそうで、
なるほど銀行内部のことについて詳しいわけだ。
テーマは、実際に起きても不思議ではない事件。
とある信託銀行の社員が、支店に立てこもって
会社の不正を糾弾していく、という話。
最初は、誰が犯人なのかも明かされていない。
フーダニットの話かと思うと、犯人が判明してからは
ホワイダニットの様相を呈す。
犯人との「交渉役」に指名されたのが、
犯人と同期入社の、経営企画室勤務の男。
その他にも「同期」が何人か登場して、
この「同期」が後半重要なキーワードとなる。
登場人物一人ひとりの性格と生活を丁寧に描き、
会社とは、社員とは、働くとは...という
遠大な問を読者に投げかけてくる。
最後の最後に、大きなナゾが明かされて、
なぜこの同期の男が交渉役に指名されたかが分かる。
それはそれは「救いがない」道化で...
と思ったが、本当にラストに、まぁ陳腐ではあるが
ハッピーエンド(おそらく)に持って行ってる。
そのため、暗くて重い話ではあるが、
読後感はそれほど重くない。
いや、これは中々の読み応えでした(^ ^ -
『我々はずっと耐えてきた。誰のために』
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バブルから、不況そして、護送船団方式とその崩壊。金融機関について書かれている本では、高杉良さんの著書などで、その内実をある程度本を読んだりしていたけれど、今回は信託銀行が舞台となっているすこし変わった作品です。
しかも、タイトルからは想像できないような騒ぎは大きいが、問題を感じつつ生きてる人たちの矛盾をつくだけに終始する内容です。
タイトルの占拠には変わりないが、それに縛られることなく手に取ってもらいたい作品です。