ピカソになれない私たち (幻冬舎文庫 い 64-4)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344432260

作品紹介・あらすじ

国内唯一の国立美術大学・東京美術大学油画科。なかでもスパルタで知られる森本ゼミの望音・詩乃・太郎・和美の4人は、自身の才能や未来に不安を感じながらも切磋琢磨していた。そんな時、ゼミに伝わる過去のアトリエ放火事件の噂を聞き――。不条理で残酷な「芸術」の世界に翻弄されながらも懸命に抗おうとする〝美大生のリアル〟を描いた青春小説。

感想・レビュー・書評

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  • 美大の大学生の青春物語ですね。
    国立の東京美術大学油画科の四年生で、厳しい指導で知られる森本ゼミの四人の青春群像です。

    作者さんが、東京芸大の出身ということもあり、美術の世界の仕事を経験した、一色さゆりさんの渾身の一冊です。

    美術家を目指す四人が、個性豊かに描写されています。
    作品を作り出す苦悩や、それぞれのトラウマと格闘しながら、自分を見つめ直す成長物語ですね。
    美大生の生活の一面も興味深いですね。
    芸術家として、大成できるのは、一握りに過ぎない。自分には才能は、本当に有るのか、そもそも「才能」とは何?
    芸大生の苦悩と挑戦も浮き彫りにしています。
    教授の森本の強引な指導の影に有るものは、本心は?
    学内で起きた過去の事件や、四人の身の回りで起きる事件など、飽きることなく読ませます。

    一色さゆりさんのファンなので、少し好意的な感想になりました。これからも読み続けたいですね。

  • ヒリヒリ...ヒリヒリ....。
    冒頭読み始めから、心がヒリヒリしましたね。
    最後はなんとかホッとしましたけど。

    そういえば大学生って、20代前半なんですよね。
    大人の仲間入りしたって感じだけど、実はまだほんの入り口。悲しいかな私たちが年月をかけて作って来た大人の仮面の付け方が分からないから、自分の気持ちに素直。行動もそれに伴う。いいことだし、無くしたくないものなんです本当は。
    その瑞々しい粗削りな若者たちが、「自分」の作品を通して「自身」が露わになってしまう芸術畑なんかに集っていたら...。いいものを作ろうとする気持ちも相まって、そりゃあお互いの気持ちも直に伝わりギスギスしちゃいますよね...。
    本人たちはその渦中にいると、分からない、辛い。
    でもそれを必ず乗り越えることの出来る若者は....ああ、おばちゃんには眩し過ぎる。未来への可能性オーラがバリバリ見える。可能性羨ましい。

    ...あれ?家にも、眩しい未来をもってる大学生の息子が、夏休みを名目にゴロゴロと...。
    ああ!今日の天気は曇りだからか〜。いつか眩しいオーラを纏ってくれるかな...。

  • 東京美術大学。国で唯一の「国立」美術大学。油画科 森本ゼミに属する学生四人の、切磋琢磨や葛藤が描かれた本です。
    芸術に悩み、「才能」に悩み、それに重ね、友人関係や家族関係も絡み…、主人公が四人いて、一冊に納めるには、大変だったと思う。読者としても、もう少し掘り下げて欲しい部分もあった。
    登場人物たちは、自分の創り出す作品に対してプライドはあるけれど、迷いもあって、そんな時にライバルからもらえるアドバイスを素直に受け止めてしまえるのは、ライバルのことを認めているからなのだろうな。
    読んでいて、「蜜蜂と遠雷」を思い出しました。

    楽しく読んでいて、でも、「これは都合がよすぎでは?」と現実に引き戻される部分もあるのですが、四人の中の、友人でライバルで、嫉妬してぶつかり合いながら作品を昇華させていく部分、良かったです。
    「才能」という言葉、その一言に含まれる羨望が、生々しいくらいに描かれていた。
    それがすごくリアルでした。

  • 美大4年生の1年を描いた物語。芸術をどのように教えるか、どのように教わるか、教わった先に何があるのか、そんなことを考えさせてくれた。芸術の世界では才能の2文字で片づけられてしまうことも多くあるけれど、この本では「才能とは何か?」ということも考えさせてくれる。
    登場人物が描いた絵を実際に見てみたいなあと思う。文章しかないので、読む人の想像力によって読後の爽快感が変わってくるんだろうなあ。でもいい本。

  • 原田マハさんの本を読んでいて、
    ピカソ、ゴッホ、モネをネットで検索した時に
    偶然見つけた一冊です。

    表紙が衝撃的で。

    最寄りの駅中の小さな本屋で見つけました。
    この書店の仕入れ担当、
    私と趣味一緒なのでは、と思ってしまう品揃えなんです。
    少ない商品数なのに、遭遇率高いです。

    本書は、国立の美術大学が舞台です。
    厳しくて有名な森本ゼミに集まった、4人。
    それぞれが、事情を抱え、悩み、葛藤します。
    学生たちの内側を引き摺り出そうとする森本の真意は?
    過去が明かされたりと、少しだけミステリーのような要素も。

    嫉妬と自己嫌悪と自己防衛。
    描かずにはいられないのに、知らないうちに見失って迷子になる。
    何を描きたい?伝えたい?あなたの考えは?

    ギリギリまで追い詰められる姿は、
    見ていて苦しくなります。
    一気読みでした。

    4人が出した答え。
    森本が時に常軌を逸したような厳しさを見せる真意とは。

    ナオコーラさんの本の余韻が抜けてないからか、
    いろんな本があって、いろんな物語があって、
    たくさんの登場人物がいて、
    それを動かしている作者がいて。
    ただただその事実に圧倒されてます。
    読書って本当にすごい。

  • 美術大学ゼミに通うゼミ生と教授の話です。
    謎な点があり気になって読み進めていくので、読んでいて楽しい本でした。

  • 少し青臭い気もするけれど、面白かった。

  • 美術というこれといった正解がない世界でもがく大学生たちのお話だった。読んでいてずっと苦しい。

    いろいろなタイプの大学生4人だけれど、読み進める中で誰かしらに感情移入できる気がする。
    苦しいシーンが多かったけど、最終的にそれぞれが自分が納得する形で進んでいたのが本当によかった。森本先生も含めて。


    自分らしさとは何か、才能とは何かを考えさせられた。お互いにないものねだりで、他者が羨ましく妬ましく感じることもある。でも作品の中の詩乃の思いの中で、他人には他人しか描けない絵があるけれど、その分自分にしか描けない絵がある、みたいな言葉のように考えられるということが生きていく上で、美術に限らず大事かもしれないと思った。

  • 東京芸術大学。最難関であり、就職にいちばん遠い大学…。
    入学するときは芸術のエリートなのに、その後の生活の保証なし。
    そんな学生生活をおくる4人の若者の群像劇。

    作者さんが藝大ご出身なので、中のことが知れて面白かった(興味本位で読むには)。
    しかし才能で淘汰される世界、しかも選び抜かれた者たちのなかで、嫌というほど自分を思い知らされる…。
    友でありライバル、才能に嫉妬し嫉み苦しみ。個性を見出すために七転八倒する。若いからできるバカや苦労もある。
    それでも自分の道を進むしかない。
    読後はスッキリしてよかったが、小説としてはもうひと超えほしかった。

  •  個性とは?
     自分らしさとは?

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著者プロフィール

1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞して作家デビューを果たす。主な著書に『ピカソになれない私たち』、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』からつづく「コンサバター」シリーズ、『飛石を渡れば』など。近著に『カンヴァスの恋人たち』がある。

「2023年 『光をえがく人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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