痕跡師の憂鬱 (幻狼FANTASIA NOVELS H 6-1)
- 幻冬舎コミックス (2010年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344818996
作品紹介・あらすじ
世界で唯一の魔術師を専門に教育するマーベランク学園。新入生のレウ・レイシアは入学と同時に、スタッフの多くが学生で構成される学園維持組織「メインゲート」へ属していた。マーベランク内で起きた事件の現場に向かったレウの前に、現れたのは魔術犯罪捜査の専門家である"痕跡師"。しかしアッシュ・クロムウェルという名のその人物は「語らずの先生」と呼ばれ、魔術の使えないダメな教師だった…。異世界ファンタジー。
感想・レビュー・書評
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【内容】魔術が重視される学園都市で発生する連続殺人事件。一方で魔術師育成学校の女子寮でも小さな事件が発生していた。
【感想】ファンタジー世界とはいえミステリとしては弱い感じ。たぶん、魔術で何ができて何ができないかの説明がちゃんとなされていないからなんでもありになって読者が推理に参加できないから。まあ、著者がそういうつもりで作ったというならそれはそれでいいのだけどそこいらへんができてたらもっと面白かったかなとも思う。あと、事件数をもっと増やして短編集にした方がよかったような気もするなあ。
▼マーベランクについての簡単なメモ
【アッシュ・クロムウェル】マーベランク学園の教師。25歳。ノンマウスなので生徒からは軽く見られているが最強レベルの痕跡師でもある。頼りなさげな風情とていねいなものごし。
【アンナ・オコーナー】メインゲートの学生捜査官。三回生。
【エルガー】腕利きのベテラン捜査官。おっさん、なので学生ではない。魔術師でもない。
【痕跡師】職業ではなく王からいただく称号。魔術がらみの事件に対する探偵のようなもの。国内でも数人しか存在しない特権階級でもある。魔術師を超える存在ともされるが魔術師から出ることがほとんど。多くは気まぐれで鼻持ちならない連中のようだ。
【杖】大気中の魔力に働きかけやすくするためのアイテム。一般人にとっては凶器に等しい。
【ノンマウス/口無し】呪文を唱えることができない非魔術師のこと。
【パトリシア・パーセル】気さくでちゃらんぽらんなタイプでレウと親しくなる、という設定らしいがそこまでわかってくるような記述はさほど出てこない。
【フランシス・アーバスノット】美人で毅然としている優等生だがガチガチの貴族主義者ではない。寮ではレウと同室。アーバスノット家の人間にあるまじきことだが将来痕跡師になるのが夢。
【マーベランク】あらゆる意味で中心にマーベランク学園がある都市。ほぼすべての機能が渾然一体をなす。「とある」の学園都市みたいなものか。
【メアリ】クロムウェルが引き取っている少女。口はきけないが魔法は使える。泌話(しんわ)の魔術で会話はできる。
【メインゲート】学園秩序維持委員会の俗称。マーベランクの実質的な警察組織。「とある」のジャッジメントみたいなものか。
【メグ・リーブ】バイトに精を出す学生。レウと同じ寮に暮らす。どこか壁を作っているところがある(という設定らしいがそこがわかるほどの記述はない)。
【レウ・レイシア】主人公。まじめな学生。一回生。メインゲートの学生捜査官。非魔術師の家系(小麦農家)に突然変異的に現れた魔術師。
【ワイズマンの呪文集】この世界の魔法は主に呪文によって大気中の魔力に働きかけるもので、呪文の内容は実はなんでもよい。ゆえに様々な呪文集が作られているようだが、その中では色物視されているもの。内容はほぼ、乙女のぽえむ、らしい。なんか、魔力に対する恋を重視したとかなんとか。でも、それでちゃんと実用の呪文が作れるんやから大したもんて気もする。著者は医療魔術の第一人者という顔も持っている。もっとも医療魔術ははやらないらしい。魔術師は奉仕される存在であって奉仕するものではないという「常識」がはびこっているため。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
魔法学園を舞台にしたミステリー。謎解き部分、意外に伏線が張られていた。フランシスは事件後、寮の中での立場は大丈夫だったんだろうか。痕跡師に色々があることが匂わされてるけど、後々明らかになるんだろうか。
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魔法がある世界でのミステリー。
世界観とか発想とかおもしろいが、犯行の方法が魔法なので、後出しじゃんけんのような感じがしなくもない。 -
設定なんかは面白いと思ったのですが、ヒロインが好きになれませんでした。
魔法が使える町で、事件が起こる。
魔法を教える学校で、魔法を使えない先生が、実は超やり手の痕跡師だったという筋なのですが。
事件も、それなりに考えてあって、面白いと私は思ったのですが。
そこにヒロイン役として登場する主人公が、素直で、行動力はあって、厄介ごとには首を突っ込む。ただし、最初は他人任せで、非難だけは一人前に言って、後半一人で突っ走って、窮地に陥るみたいな。
・・・もうちょっと考えようよ、と。
いや、そういうキャラクターがいなくては、話が進まないという場合もあるのは分かります。でも、自分はそういうキャラが主人公の本は合わないということを忘れていました。
一応、多少成長しているかと期待して、二巻まで読んでみたのですが、あまり変わっていないので、たぶん、もう次は読まないかもです・・・。 -
“すごい人物?クロムウェル先生が?
その点だけでも、まさかと思ってしまう。
生徒に馬鹿にされて、それでも諾々と甘んじる情けない教師。
それがレウの中での、アッシュ・クロムウェルという人物の評であった。それを覆すだけの何かがクロムウェルの中にあるとはとても思えなかった。
しかし、クロムウェルのことを語るアンナの顔は自信に満ち溢れているようにさえ見えた。
「よくお聞きよ、レウちゃん。このクロムウェル先生は、この国……いや、世界でも唯一の――」
アンナは一度そこで言葉を切る。レウは知らずの内に息を飲み、彼女の話に耳を傾けていた。
「“語ラズの痕跡師”」”
思っていたよりもしっかりとした内容だったというのが本音。
「魔術の存在する世界で、新米刑事に値する少女と探偵に値する青年の推理小説」といったところだろうか。少し違うか。
魔術が出てくるといっても、内容に無茶がある訳ではなくて、設定もしっかりとしている。
レウ視点で考え出された推理が、ちょっとしたことで一転二転するのが読んでいて楽しめる。
殺害された人物があまりに身近だったのには正直驚いたけど、事件の真相にはさらに驚嘆。
深い。それでいて、面白い。
登場人物も良かった。
皆に茶化され振り回されるレウが可愛い。
クロムウェル先生がどツボすぎた。
メアリ可愛いよメアリ。
“「おやおや、これはこれは。噂をすればというやつだねえ。いやあ、いいところに来ましたよ、“語ラズ”のセンセ。実は今、ちょうど――」
「どっせぇえええいっ!」
「ごふっ!?」
「こほん。お待ちしていました、クロムウェル先生。さ、現場はあちらですよ」
「いや……あの……あれ……」
「どうなさいました、何か気に掛かることでも?おや?アンナ先輩、そんなところで転がってどうしたんです。そうか、野次馬に押されて転んでしまったんですねそうですね」
「いや、今のはどう見ても君が……ショルダータックル……」
「どう見ても?どう見ても何だって言うんです先生!?今はどう見えたかなんて重要じゃないんです。そうでしょう……!」
「そ……う……だね。うん、なぜかは分からないが、僕にもどう見えたかは重要ではない気がしてきたよ。少なくともそうしておいた方がよいと思うね」
おそらくそれは、防衛本能とか生存本能といったことに起因すると思われる。” -
ファンタジーミステリー物。
故に、ネタバレをしてしまうなら、普通じゃない方法で
事が起こって解決した、という所です。
最後を読んで振り返れば、なるほど、と思います。
むしろあちらこちらにヒントはうじゃうじゃ。
なのに気がつかない…w
始まりがすぐ授業内容なせいで、ものすごく面白くないです。
が、そこを通り越してしまえば普通の物語。
むしろ、授業なのがよく分かるほど
退屈な書き出しでした(笑)
1話1話完結して、最後に繋がる系です。 -
2010/05/12:魔法学校&都市を舞台にしたミステリーっぽいファンタジー。口絵の漫画は最初よく分からなかったですが、本文中でそのシーンが出てきた時に思わずニヤリとしてしまいました。