うつ病の脳科学: 精神科医療の未来を切り拓く (幻冬舎新書 か 9-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344981430

作品紹介・あらすじ

日本のうつ病等の気分障害患者が90万人を超えた。だが、病因が解明されていないため、今のところ処方薬も治療法も手探りの状態にならざるを得ない。一方、最新の脳科学で、うつには脳の病変や遺伝子が関係することがわかった。うつの原因さえ特定できれば、治療法が確立できる。今こそ、最先端脳科学と精神医学を結びつける研究環境が必要だ。うつ研究と脳科学の世界最新情報から、今後、日本がとるべき道までを示した、うつ病診療の未来を照らす希望の書。

感想・レビュー・書評

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  • 仕事関係です。今日もご一緒でした。
    ちょっと古いかなと思うところもありますが、課題はなにも変わってないのが悔しい限り、借りは即返さなければならない。できることをがんばります!

  • 日本におけるうつ病研究の課題を正面から捉えた本。

    うつ病自体の解説や論説という趣ではなく、うつ病研究者の現状を訴える内容に重きが置かれている。


    うつ病は刻々と日本での労働者層を蝕んでいるにも関わらず、
     ・ガンなどの疾病とは異なった国の対応
     ・日本人の文化的背景からくるうつ病の捉え方
    等により、うつ病の解明・治療方法の研究などが依然として進まないという叫びが聞こえてくる内容。


    脳科学という表題となっているが、科学的な議論ではなく、研究環境を整えるためのブレインバンク(脳標本の整備)の創設などを訴えている。

    素人でも読みやすい内容となっている。

  • 「国というものがなんだかよくわからない」といった首相がいたようですが、うつ病の原因は究明されているとは言いがたく、手探りの状況であることをこの本を読んではじめて知りました。
    診療内科医に対する患者や家族の不安や不満は、こういった現状を知らないことにも一因がありそうです。

    とはいえ、日本における脳科学の研究が世界の先端をいっており、解明が進めば原因がつかめそうなところまで迫っているというのは希望が持てました。

    うつ100万人時代ともいわれる現代だからこそ、病気の治療を医者任せにするのではなく、ひとりひとりが十分な知識を持つことが大切なんだろうと思った次第です。

  • うつ病の原因がわからない。治療薬も「偶然見つかった」もの。手探りの治療。びっくりしましたね。ストレスの大きい環境が発症の大きな要因であることはわかりますが、それ以外のことはほとんどわからないと同じじゃないですか!「東大紛争」が精神科で解決したのが15年前だそうです。「コミューン」の中で理想的に(おそらく)治療して貰った一部の患者さん達ってどんな人で、直ったんでしょうか? 人間の精神を扱うことの危うさ、難しさをひしひしと感じました。ストレスの少ない、少し不便で時間が掛かっても思いやりのあふれた世の中にはならないものでしょうか?もうムリか。

  • うつ病研究の最先端が分かり、知的好奇心を満たすとともに新しい治療法への希望がわいてくる。
    分からないことは分からない、研究課題だとしており誠実な態度。
    東大闘争が大学病院の精神病研究に30年の停滞を招いたとある。サヨクの黒歴史がここにひとつ。精神病は存在しない。精神病は弱者を抑圧するために社会が作り出したシステムだというトンデモ理論がかつて横行していたことは記録しておくべき。
    うつ病研究の発展には研究者の努力もさることながら、社会の要求も高まる必要があると著者は訴える。自殺者の多くが罹患しており、少なくない割合の勤労者が休職や失職に追い込まれるこの病気は、もっと世間から注目され、対策や救済の機運が盛り上がってほしい。

  • 少し古い本だが、精神疾患を治る病気と考え、その原因を解明しようという面に関心が払われていないとの指摘は現在も通用する指摘だと思う。
    disordersとdisabilityの違い、支援者も当事者も周囲も、時折忘れてしまっているような気がする。

  • 「うつ病九段」で先崎九段の治療に当たった医師は、うつ病は脳の病気だとはっきり言っていた。心の病、といわれることの多い病気だが、実は脳が原因であることは昔から言われていた(19世紀クリージンガー)。

    気になったのはこんなかんじ
    80年代に変わった診断基準dsm。日本では精神疾患は障害、そのため原因解明研究が手落ちになりがち。アメリカのブレインバンクが提供するサンプルに頼った研究にならざるを得ない。学生運動の余波で立ち遅れた研究施設の思い出。

    dsmは仮の分類として始まり、結局固定化されてしまった。病気の因果関係を明確にせず、併発しがちのパーソナル障害などもうつ病とならべて併記するようになる。
    dsmをもとにした「大うつ」に分類することでおこる問題として、病相エピソードのヒアリングを怠り、患者が(以前と違って)悩みを聞いてもらえないと不満になる。
    先走って憶測を書けば、エピソードヒアリングのような方法は、そのままのかたちではないかもしれないが当面要望されつづけるのではないだろうか。結局のところ脳内分泌物質や薬の反応をどう評価すればよいのか、そもそも分析するためのデータ集めさえ難しいというのが現状だし。

    うつ病は精神疾患のなかでも最古の病気。古代ギリシアで黒胆汁(メランコリー)の増減によると考えられ、中世では魔術、宗教的な理解。19世紀にクレペリンが早発生痴呆(現代の統合失調症)と躁うつ病に分け、1960年代アングストの研究で双極性障害とうつ病のふたつに分類され、現代に至る。
    dsmにより診断基準が共有され、躁うつ病には遺伝が関与し、うつ病では遺伝は比較的小さいことがわかってきた。
    ただこのゲノム、脳科学の知見がそのまま治療に使えるわけではない。
    04年遺伝子一個全体が増えたりなくなったりする大きな違いが起こることが発見され(コピー数変動)数千人の統合失調症患者で検査を行った結果、健常者に備わっている塩基対の欠損が発見された。が、その後てんかん、自閉症など他の病気でも同じ異常が確認される。うつ病に特有の疾患をもたらすなんらかの脳の変化、病変の発見こそが、今後の根治治療の鍵となる。

    ここまでは基本のおさらい。後半、ようやく主題にはいるのだが、これがまた細かい話の連続。00年代に入ってから飛躍的に進歩を遂げた脳科学の知見から、うつ病研究の最前線をレポートしたものなのだが、なかなか細かい話が続く上研究途上ではっきりと断言できるような原因や治療法が示されないため、読むのが難しい。

    原因がわからない以上、その治療も対処療法にならざるをえない。2章で極端な例として、非定形型の患者の治療記録が紹介されているが、かなり混乱している様子。2年間さまざまな方法を試した結果、はじめて改善が見られる方法にたどり着くのだから、患者・治療者の苦労が忍ばれる。

  • S493.764-トウ-142 300104361
    (幻冬舎新書 142)

  • [ 内容 ]
    日本のうつ病等の気分障害患者が90万人を超えた。
    だが、病因が解明されていないため、今のところ処方薬も治療法も手探りの状態にならざるを得ない。
    一方、最新の脳科学で、うつには脳の病変や遺伝子が関係することがわかった。
    うつの原因さえ特定できれば、治療法が確立できる。
    今こそ、最先端脳科学と精神医学を結びつける研究環境が必要だ。
    うつ研究と脳科学の世界最新情報から、今後、日本がとるべき道までを示した、うつ病診療の未来を照らす希望の書。

    [ 目次 ]
    第1章 現代の社会問題としてのうつ病
    第2章 うつの現在、過去、未来
    第3章 脳科学の到達点
    第4章 うつ病の脳科学1―うつ病の危険因子と脳
    第5章 うつ病の脳科学2―抗うつ薬の作用メカニズム
    第6章 うつ病の脳科学3―エピジェネティクス仮説
    第7章 うつ病の脳科学4―臨床研究
    第8章 日本のうつ病研究の現状
    第9章 日本の脳科学研究の現状
    第10章 残された課題―うつ病の死後脳研究

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  • 9784344981430  245p 2009・9・30 1刷

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著者プロフィール

順天堂大学大学院医学研究科 精神・行動科学 主任教授。1988年に東京大学医学部卒業後、同附属病院にて臨床研修。滋賀医科大学附属病院精神科助手、東京大学医学部精神神経科講師などを経て、2001年理化学研究所脳科学総合研究センター(当時)精神疾患動態研究チーム チームリーダー。博士(医学)。2020年より現職。

「2023年 『「心の病」の脳科学 なぜ生じるのか、どうすれば治るのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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