- Amazon.co.jp ・本 (206ページ)
- / ISBN・EAN: 9784380960031
作品紹介・あらすじ
本書は、江戸300年、被差別民衆の"頭"として13代にわたって勢力を振るった弾左衛門の歴史と実態を明らかにする。
感想・レビュー・書評
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弾左衛門や車善七の名や乞胸という呼び名を知ったのは都筑道夫さんの『なめくじ長屋捕物さわぎ』シリーズだった。なんとなく知っていたのがだいぶ整理できた。
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先日読んだ「弾左衛門 大江戸もう一つの社会」をかみくだいた感じでよりわかりやすくまとめられた1冊。
初めて弾左衛門のことを知り、その概要をすばやく把握したい方にはおすすめの1冊でもある。
私にとっては、同じ本を再度読んだ感覚に近かったが、中尾健次先生の本書に懸ける思い(あとがき」参照)をじゅうぶんに感じ取ることができる1冊だったなと。
私個人としては、「あとがき」を読むだけでも十分に価値ある1冊だと思う。
印象に残った小単をつらつらと…
「エタ・エタ頭」(p15)
「御仕置役のの実際」(p106)
「職務の縮小」(p168)
「『賤民制廃止令』と弾直樹」(p178)
「あとがき」(p201)
印象に残った文章を…
新政府による資本主義化政策は、江戸時代を通じて成長してきた資本主義生産の芽をつぶしながら、上から財閥を育成するという方向で進められてきました。その結果、資本主義の成長と並行して進められるはずの意識革命(人権意識や個人主義・職業観など、いわゆる資本主義の精神)は遅々として進まず、その遅れた意識が、“資本主義社会のもとでの封建意識”として残存していきます。“差別意識”がそれを象徴的にものがたっています。さらに、松方デフレに代表される強引な経済政策によって、貧富の差はますます拡大していき、今日においても福祉行政の課題として残されています。現代社会の抱える矛盾は、この明治新政府による強引な上からの資本主義政策に、その遠因があったといっても過言ではないでしょう。