- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784393325537
作品紹介・あらすじ
師であり友であったペラン神父が、長い躊躇の末はじめて公表したヴェーユの、魂をゆさぶる信仰告白の記録。工場体験のあと直面した彼女の信仰への疑念を示した手紙を併録。戦間期の混乱のなかで、あらゆる価値観が崩壊していくのに直面して、教会をこえた信仰のあり方をとうた著作。工場労働者など虐げられたものたちへの共感など、シモーヌ・ヴェーユの柔らかい側面がかいま見える一冊。
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
メルカリ、¥1200
-
フランスの女性哲学者であったヴェーユがカトリックのぺラン神父に宛てた洗礼を受けていることを希望する旨の手紙、その返信から始まる。文章が美しく、また難しい言葉は全く使われていないにも関わらず禅問答のように感じる言葉の数々。最後に神父が書いているヴェーユの信仰はあまりにも観念的という解説で納得した。以下のぺラン神父の説明がストンと落ちた気がする。以下に長文を引用する。
「シモーヌが持っていた誠実さや真理への愛をちょっとでも疑おうとするのではない。それは彼女を知っている人にはだれにも思い浮ばないことである。彼女ははげしく真理を愛し、真理を求めるために生きた。それだからこそ真理が彼女に臨んだのである。しかし私には彼女が宗教的真理の性質について多少間違っていたように思われる。彼女は知性とだけしか関係を持たない数学的真理や理知の領域に属するもののように、宗教的真理を抽象的な真理として考えすぎたように思われる。」「私がここに集めた文章の深い意味と比類ない価値は、それらが一人の著者の思想であるよりも、一つの魂の表現であるというところにある。ヴェーユの偉大な驚くべき証言は、だれでも無条件で真理に動かされるようになって、 すべての隣人を自分のように愛そうとする人は、すでに神を見いだしているということであり、そういう人は神が自分のところへ来るのを見る状態にごく近いということである。私がこの本を「神を待ちのぞむ」と題したのはそのためであって、シモーヌが一番好きだった言葉の一つで、それはおそらく彼女がそこにストア風の味わいをみとめたからであるが、もっと確実なことは、それが神に身を捧げ、すべてを神にゆだねる彼女のやり方だったからである。それは待ち望んで、完全に神に動かされうる状態にあることであった。」
ヴェーユが「兄は天才、妹は美人」と数学の天才だった兄と並べて誉められたことに劣等感を持ち、真理を所有することに比べそのような美は全く役に立たないと魅力になりうるものを無視しようとしたとの態度は興味深く、彼女の信仰に通じるものを感じた。