労働者のための漫画の描き方教室

著者 :
  • 春秋社
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784393333631

作品紹介・あらすじ

労働者よ、ペンを執れ! 過重労働から心を守るためには、漫画を描こう。30日連続出勤かつ残業200時間超という経験をした著者から、懸命に働くすべての労働者へ贈る、忙しい日常でも実践できる、生き抜くための方法論。働きながら表現しよう。

感想・レビュー・書評

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    自分に重なるところが大きい

    「労働者として働き、表現者として生きる」

    これは素晴らしいアンセムなのでは

    表現者として働く必要はないのだ

    今のまま労働者でありながら、同時に表現者にもなる

    これは、漫画である必要はない
    詩でもいいし、なんでもよいのだ

  • ▼この本のポイント
    ・労働に盲目的になり心を殺されないために表現をしようと呼びかけた本。
    ・この本では「表現は思考のための道具である」とし、表現の中でも漫画が一番カンタンであるとしている。
    ・その上で、漫画を描く動機の作り方、目的のつくり方、具体的な描き方について触れている。

    ▼思ったこと
    ・この本では、漫画という表現はあくまで自分を客観視するための手段として言及していて、自己承認欲求についてはさほど触れてはいない。
    ・例えば「原発反対」という怒りを持っていたとして、そのことについて漫画にしていく過程で「なぜ俺は反対なんだっけ?」と自問したり「そうか賛成派はこういう気持ちなのか」と他者の意見に目を向けたりしていく中で視野を広げていくことを勧めているのだと思う。
    ・学校でのいじめの構造にも近い。いじめられてる本人は"学校にしか居場所がない”と思っているからいじめを我慢し続けてしまうが、広い視野を持てれば「学校なんてやめてもいっか、いじめに我慢する必要ないな」と自分を安心させ、解決へのアクションのきっかけにもなったりすると思う。
    ・自分はクリエイティブという仕事を通して、一応表現をし続けてはいるせいか、この本に対しする感動はそこまでなかったかもしれない。
    ・ただ、「表現は思考のための(自分を俯瞰するための)道具である」ということは、まさに心を殺されないためにも常々覚えておきたい。
    ・漫画じゃなくて日記でもいいかもしれない。時々tumblrに思ったことをクローズドでメモ書きしたりするけど、それをすると少し心が落ち着ける気がする。

  • 「漫画を描いて苦しい自分を変えるんだ」と表紙にある。
    すごい言葉だなと感じた。
    漫画は表現であり、表現のための技法も織り込まれているが、本質的な部分は、観察し、現実を肯定するということ。
    その上で漫画を発表するのだ、という500ページ弱の大作である。

  • 仕事に心をすり減らされてしまっている労働者に、マンガという表現の方法を手に入れて、人生に新鮮な風を入れることを勧めている本です。

    著者自身、編集者として忙しい日々をすごし、労働者として生きることに疲れ果てているなかで、マンガをえがくことで精神の安寧を得るとともに、現実についての思考を深めていく経験をしたことが語られています。そうした経験にもとづいて、多くの労働者たちにとって表現手段としてマンガをえがくことがどのような意義をもつのかということを論じています。

    とくに本書の前半は、表現することについての著者の内省的なエッセイとなっており、マンガの技術の上達をめざすひとのために書かれたものではありません。後半はもうすこし実践的な内容ですが、あくまで労働者として社会生活を送りながら、マンガをえがきつづけるための注意点など、著者自身の経験にそくしたかたちで、表現することの意義が論じられています。

  • 労働者のための漫画の描き方
    ・ジョブは職業。ワークは生きる目的。ワークを大事に労働に殺されない。
    ・怒りを出発点に。許して冷静に。疑ってさらに深く、問いかける。
    社会や他者に対して、自分の意見ではない反対意見からも観察する。跳弾した言葉。
    ・現実の肯定は思考を磨く最大級の道具。
    ・実現可能な範疇にある未来は否定する。そして正確で主観的な思い込みではない、雑念を消した観察をし、思考を突きつけたとしても揺るがないものとして心の底に息衝き続けられるか。
    ・自分で負けを認める将棋の敗北の美しさ。
    ・言葉を強くするには、言葉を裏切る。逆の考えをのべる。
    ・企画立案→素材集め→進行スケジュール


    ・7は敵対読者もいれる。
    ・時間を大切に。時間を編集する。労働の自由時間。
    ・描き方はまず円を書く。何にでもなれるから。点を書く。空間から孤立させない。
    ・表情なんて無くてもいい。練習する時間がない。熱意が冷める前に急ぐ必要がある。ストーリーが表情が表したい感情を伝える。
    ・鼻と眉毛はいらない。表情を伝える。
    ・状況を説明するためだけの背景はいらない。

    ・ストーリーは描きながら考える論。終わりは朧げに決めておく。
    ・エッセイ漫画は経験でしか語られず、読者に飽きられてしまうため、限界がある。
    ・駒はまず、1ページに3つ。横幅は均一。
    ・漫画は余白を作ることと同義。視聴者の思考の余白となる。
    ・同人誌やネットで発表し、次回作の火種とせよ。
    ・作る以外を目的かすると継続ができない。
    ・仕事環境にまずは感謝。

  • 漫画というか……創作論に近いかな。
    ただ、著者は、漫画という表現方法を選んだだけの話な気がする。

  • いい本だったなー。
    労働するだけで疲弊していく毎日の中に、表現する時間を持つこと。
    気持ちをそこで開放すること。
    限られた時間の中で、漫画を描くことは、他の趣味に比べてもハードルが低い。
    用意するものが少なく、ひとりで、時間も場所も取らずにできる。
    発表の場も、ネットや即売会など様々にある。
    言葉や絵を通して、自分の考えを吐き出したり、整理して客観的に観察することで
    精神が安定するし、やりたいことを持つことで日々に張り合いが生まれる。
    その時間を作るために、仕事や生活を見直すきっかけにもなる。
    プロを目指すとか、誰かに認められようとすると、作るものが歪んでいくので
    あくまでも自分のやりたい気持ち、自由さを失わないことが大事。
    上手くなること、書き込むことよりも、限られた時間の中でまず完成させること。
    嫉妬や自信を喪失するような思考に、時間を奪われている場合ではない。
    つい陥りがちな状況を丁寧に避けながら、自分のために表現することを続けていく。

    漫画に限らず、日常の中に、表現する・創るを持つことはすごく大事だと思う。
    私自身、漫画を描く、絵を描く習慣はとうの昔になくなってしまったけど
    今は手縫いがある。
    作りかけのものを近くに置いておいて、ちょっとした隙間時間にパッとできる。
    発表する、他の人の反応を見る、というのはなかなかないけれど
    自分で作ったものを自分で使うだけで、十分に満たされるし。
    これもまた「誰かに喜んでもらおう」が入ると、
    モヤモヤを増やすだけなので、
    自分のためにやるという基本を忘れてはいけない。

    この本、とても面白いのだけど、持って歩くには重すぎる。
    おかげで読みたいのになかなか読み進められなかった。
    ボリュームのある内容はこのままでよいので、
    紙質をもう少し軽いものにしてほしかったなあ。

  • 労働に心を殺されると思ったことはないが、表現せねばと思う所あり購入。一人で戦う姿勢が素敵な本でした。さて漫画を描くかはたまた。しかし、どの本にも出てくるのは結局継続ってことだよなぁ。

  • 『労働者のための漫画の描き方教室』川崎昌平 春秋社 2018.7

    限界を迎えた川崎は漫画を描いてストレスを調和した。労働者である当人が、今この瞬間に厳然とある苦しみをどのように超克(回避)するか
    なんとかならないものはない。労働も何とかなるから蝕む危険がある。

    表現とは思考のための道具である。
    別に漫画でなくてもいい。表現に貴賤はない。ジョブとワークは重なる義務はない。重要なのはワークだ。

    絵が好きだから勉強して表現する理由する理由を見つけるのではなく、表現しなければならない理由を抱いて技術を鍛える。
    怒りを抑え込むのは惜しい。個人的な革命を。怒りを自分の怒武器にする。

    相手を許すと自分が優秀に見える。怒りを静かに抑え込める人が実践という領域に踏み込めると川崎は信じる。

    疑っているいる自分は疑えない。デカルト。
    「農民芸術概論概要」宮沢賢治。労働をいかに同期に昇華させたか。

    あらかじめ結論に至るような手ぬるい甘ったるい観察はくだらない。変わろうと願って考察すればいい。相容れない相手を観察すればいいのだ。

    未来は否定したほうがいい。未来における変化を自分に求めすぎると敗北の意識が芽生える。
    未来は予め計画した通りに完敗しないから価値があると思っている。

    あらゆる勝負においてもっとも過酷な敗北は将棋のそれである。
    ひたすら自分のみの責任として敗北を受け入れるほかに打つ手がない。
    だから敗北が美しい。

    敗北による自分の変化を武器とするならば何に向けるのか。私が変わったと誰に訴えかけるのか。
    あたなの漫画の対象には必ずあなたの目に見えるところにいる人にしよう。

    自分で描いて自分で編集しないと描き続けられない。
    企画立案素材作成。進行管理。

    全ての表現は主体的に意志をもつ鑑賞者を得て初めて完成する。
    スキャナ・エプソンのプリンタ EPSON EP905A
    絵をスキャンして以降はPCで作成する
    ソフトウェアはアドビ。クリエイティブクラウドを使用している。

    自分が劣っているとわかれば嫉妬が自ずと逃げていく。対象と自分を比較しないから嫉妬せずに済む。

    つくる行為以外のものを目的んすると作れなくなる。
    つくる技術が導くある種の肩書を求めてしまい、作る行為そのものの質が下がり肩書も得られない
    苦しさからつくる行為への情熱を失う。逆に面白いものを作りたいと願い続ける人の作品は面白い。

  • 「労働者として働いて、表現者として生きるんだ」
    470ページ超えの本書内容を要約すると、上記の一言に尽きます。

    ジョブとワーク、労働と表現を2軸にして、より豊かな人生を生きようと言うこと。
    そして、最も効率的な表現の手段として漫画を推奨しています。
    ちなみに、漫画の技法の説明は3分の1もありません(特に背景不要試論は興味深かったです)。

    その人に最適な表現手段は、漫画に限ったことではないと思うのですが、お金をもらえない個性は個性でないというような風潮を否定する作者の主張にはおおいに共感しました。
    多忙な仕事ゆえに趣味としての表現を諦めたことを非常に後悔し、計画的に表現の再開をしたいと考えていたタイミングで読んだこともあり、たくさんのヒントと勇気をもらえました。

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著者プロフィール

東京工業大学「メディア編集デザイニング」非常勤講師、昭和女子大学「日本文学概論(近現代)」非常勤講師。大学入学共通テストに不安を抱く受験生を一人でも助けたいと思い執筆を決意。作家・編集者としても精力的に活動しており、著書・編書多数。主な著作に『重版未定』シリーズ(河出書房新社)、『書くための勇気:「見方」が変わる文章術』(晶文社)などがある。

「2020年 『マンガでわかる! 大学入学共通テスト[国語]記述式問題』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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