- Amazon.co.jp ・本 (279ページ)
- / ISBN・EAN: 9784393935217
作品紹介・あらすじ
実際の「舞人」の視点から、雅楽の伝来、花開く平安王朝文化の隆盛、そして、現在に至るまでの来歴を語りつつ、知られざる雅楽の全貌を示す注目の書。
感想・レビュー・書評
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『雅楽「源氏物語」のうたまい』を読み、付属のDVDを観賞してから、雅楽についてもう少し詳しいことが知りたく本書をひもといた。
先の本のおかげもあり、雅楽の基本的な知識を持つことができたことで「舞人の視点で雅楽の伝来をひもとき、どのように王朝文化の中で開花したのかなど」を物語った本書も、興味と関心を持って学びながら楽しく読了する。
新しく知る世界の面白さにペタペタとたくさんの付箋を貼りながら夢中になって読み終えてしまったので、もう一度付箋を元にメモを取りながら読んでみるつもりだ。
「はじめに」で、雅楽の4つの分野
・「国風歌舞(くにぶりのうたまい)」と呼ばれ、古来、日本で歌い継がれてきた楽舞
・5世紀から10世紀にかけて、広くアジアの国々から伝えられた外来音楽を起源とする管弦
・雅楽の伴奏で舞う舞楽
・雅楽を伴奏に用いる催馬楽、朗詠などの歌曲
の基本的な特徴が解説されている。
この部分を頭の片隅にでも置いておくと、本編はスムーズに理解していけるのではと思う。
本編は4つの章で構成され、雅楽の伝来・伝習・宮廷行事での舞・次世代への雅楽伝承などなど、「舞人の視点」でさまざまな角度から雅楽の面白さが紹介、解説されている。
ここにはアニメ映画『遥かなる時空の中で 舞一夜』で知った舞の楽家である右方の多氏と、もう一方、左方の狛氏という舞楽の中心的存在のことに触れた箇所もあって興味深かった。
また、舞楽装束についての頁では、私のお気に入り【陵王(蘭陵王)】の「毛縁裲襠装束」のことも詳しく説明されており、また『雅楽「源氏物語」のうたまい』を読んだときに疑問に思った光源氏が舞った【青海波】の装束の色合いについても、『舞曲口伝』や『小右記』(寛弘2年7月29日条)といった文献から解説されていたのは嬉しかった。
あと【青海波】については、平清盛の孫・維盛が安元2年、後白河法皇の五十の賀宴で烏帽子に桜と梅の枝をかざして、青海波を舞ったことから「桜梅の少将」と称され、その学識と端正な容姿から「光源氏の再来」と絶賛されたという逸話もあることを知る。
維盛は私のお気に入りの敦盛の笛で舞うなんてこともあったのだろうか。それを大好きな知盛がお酒を呑みながら楽しんだなんてこともあったのだろうか……、ふーむ、『平家物語』もちゃんと読みたくなってきたよ。
さらには宮中の儀式や行事において奏でられる公事曲、行幸での舞の演目などの詳細も掲載されており、これらは『源氏物語』を読む上でも参考になりそうだ。
今回は『源氏物語』に登場する雅楽について知りたいという気持ちが出発点だったので、本書では『源氏物語』に直接書かれず想像するしかなかった部分に関係することを、たくさん知ることができ大変面白かったし、勉強になった。
そして気づいたのは、それらについては『源氏物語』だけでなく『枕草子』にも記されていたってこと。このあたりの『枕草子』を見返したいし、『小右記』や『権記』、『御堂関白日記』なども気にかけていきたい。
とにもかくにも、来年は実際に舞楽を観賞したいものだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示