野蛮の言説 (春陽堂ライブラリー)

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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784394195016

作品紹介・あらすじ

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ブレイディみかこさん推薦!
「21世紀の差別を考えるための思想史講座
 進化論の暗部、優生学、能力主義、安楽死、ヘイトスピーチ。
 野蛮の言説から広がるトピックのなんと現代的でホットなことか。
 人はなぜ差別を合理化できると思うのか。
 「文明と野蛮=優と劣」の構図からそれを解き明かす。
 移民として欧州に暮らし、時々「見てしまうもの」の正体がクリアになった。」
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人類の長い歴史の中には、他者を蔑視し排除する言葉が常に存在していた。
コロンブスの新大陸発見、ダーヴィンの進化論、ナチ・ドイツによるホロコースト、そして現代日本における差別意識まで、
古今東西の著作を紐解き、文明と野蛮の対立を生む人間の精神史を追う。
人が他者を「野蛮なる存在」として見てしまう心理と、その眼差しを生む社会的背景を探る。

感想・レビュー・書評

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  • 2022年11-12月期展示本です。
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    人類の長い歴史の中には、他者を蔑視し排除する言葉が常に存在していた。コロンブスの新大陸発見、ダーウィンの進化論、ナチ・ドイツによるホロコースト、そして現代日本における差別意識まで、古今東西の著作を紐解き、文明と野蛮の対立を生む人間の精神史を追う。人間が人間を「野蛮な存在」とみなす言葉がなぜ生み出されてしまうのか、全15回の講義から考える。
    (出版社HPより)

  • カリブ海・フランス語文学の専門家による人種差別についての研究結果をまとめたもの。15世紀以降の西洋を中心に学術的にまとめられている。現在の価値観からすると、ごく最近まで甚だしい人種差別が当たり前のように行われていた事実は確認でき、とても役に立った。ただし、差別イコール「悪」と捉えて全体に論理が展開されているように感じられ、一方的に体制批判的なところには違和感があった。

    「圧倒的多数は戦争に反対でしょうが、戦争がこの世界から消滅したことは人類史上ありません。私たちのうちに民族・宗教・性別・文化などの差異がある以上、つまりは私たちが他者と共に生きている以上、他者を差別したり排除したりする言説は永続的に付きまとうと考えるべきでしょう」p19
    「自民族かどうかの区別は自分と言語を同じくするかどうかにあるということです」p25
    「(サイード『オリエンタリズム』)我々はヴィーコの「人間は自分自身の歴史をつくる」そして「人間が認識しうるのはみずからのつくったものだけである」という達見を真剣に取り上げて、それを地理にまで敷衍してあてはめてみるべきだろう」p31
    「ヨーロッパ人が新大陸を領有するにあたり先住民を「野蛮人」のように捉えて記述してきた事例は枚挙にいとまがありません。航海士、宣教師、医師、征服者、入植者たちが書簡や日誌などのかたちで当時の見聞を残しており、それらの記述から、私たちは彼らの認識をとおした先住民をめぐる記述をたどることができます」p43
    「アリストテレスによれば、支配/被支配の関係はさまざまに確認できる自然な現象である以上、肉体労働などの仕事に向く人間は支配されるほうが望ましい人間であり、「生まれつきの奴隷」がいるのだ、と結論されます」p44
    「(ラス・カサス)(エスパニョーラ原住民について)キリスト教徒はそのような人びとを獣よりも劣るとみなし、粗末に扱ってきたし、それどころか、彼らを広場に落ちている糞か、それ以下のものとしか考えなかったのである」p48
    「(西洋による植民地化(土地の所有))ジョン・ロックが所有権の範囲を労働に定め、少なくともインディオは土地を共有地として用いているだけで私的に所有していない、と論じたことにあります。オランダの法学者グロティウスが、その戦争論の中で、「野蛮人」が住む土地は「無主地」であると捉えうる考えを示しています」p56
    「土地を耕さない者、労働をしない者を「野蛮」とするロックのような見方は、モンテスキューにも引き継がれます。モンテスキューは『法の精神』で「野生人」と「野蛮人」を分類し、前者は狩猟民を典型とし、団結できない小民族、後者は牧畜民を典型とし、団結できる小民族としました。これらの野生/野蛮の段階と対置されるのが文明であり、野生/野蛮の段階にある民族は土地を耕作しないとしました。文明と野蛮の構図は、ヨーロッパの法思想の中でほとんど自明のこととして反復され、強化されていくのです」p57
    「奴隷貿易によって数世紀にわたってアメリカ両大陸・カリブ海に連行されたアフリカ人の数は、現在の記録では、約1250万人におよぶとされています。このうち「新大陸」まで生き延びることができたのは1070万人だと『環太平洋奴隷貿易歴史地図』(2010年)の序文は伝えます」p68
    「プランテーションの労働力としては当初は先住民や白人貧困層の契約移民が使役されたのですが、経済的利潤を考えた場合にもっとも効率が良かったのが、アフリカで奴隷を調達することでした。この奴隷制を一定の期間正当化するために、黒人を劣等だとする人種差別がヨーロッパの言説空間で生じてきたのです。「奴隷制は、人種差別から生まれたのではない。正確にいえば、人種差別が奴隷制に由来するものだった」(『資本主義と奴隷制』)」p68
    「(ホッテントット・ヴィーナス)ロンドンでの黒人見世物興行(1810年)イギリスの奴隷貿易禁止の3年後」p113
    「(ダーウィンの「生存闘争」)環境に適応した優位な個体が子孫を残します。優位な個体は新種となる一方、適応できなかった個体は絶滅します」p142
    「(ベルギーによるコンゴのゴム生産)1888年にはゴム原料の収穫量が80tであったのに対し、1901年には6000tに達します(車のタイヤとしての需要大)」p205
    「(コンゴでの大量殺戮)この驚くべき大量虐殺をアフリカ人以外の人間のほとんどが知らないという事実こそ、私には、もっとも異様なことに思われる(『「闇の奥」の奥』)p209
    「(優生学)優生学の基本視座は、医療、公衆衛生、倫理観の発達により自然淘汰が機能しなくなる「文明国」による「逆淘汰」と呼びうる現象を抑制し、進化論という「自然の摂理」に適った、より強い個体を増やしていこうとするものです」p251

  • 東2法経図・6F開架:361.8A/N37y//K

  • 自分には難しい・・・。

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著者プロフィール

中村 隆之(なかむら たかゆき)
早稲田大学法学学術院教員。フランス語を中心とする環大西洋文化研究。著作に『カリブ-世界論』、『環大西洋政治詩学』(以上,人文書院)、『エドゥアール・グリッサン』(岩波書店)、『野蛮の言説』(春陽堂書店)など。訳書にル・クレジオ『氷山へ』(水声社)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(夜光社)などがある。

「2024年 『マニフェスト 政治の詩学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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