法医学者が見た再審無罪の真相(祥伝社新書) (祥伝社新書 395)

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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396113957

感想・レビュー・書評

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  • 鑑定試料の紛失や取り違えなどが原因で冤罪が起きている。

  • 著者は元日本大学法医学教室教授であり、数々の鑑定を手がけた。特に足利事件や、東電OL殺人事件など、有名な冤罪事件のDNA型判定において中心的な役割を果たしたことが多く、あの事件の再審の裏側はこうだったのかと真相を知ることが出来る。

    本書を貫くのは、怒り、であると感じた。実際、裁判において著者の鑑定が言及されること無く原判決が誤った判断の元に下されることが多く、著者は怒りの余り、そういった間違った判決を下した裁判官の実名と、叙勲歴などを記して、このままで良いのかと疑問を呈する。
    今著者は、大学を定年退官後、民間の法医学研究所を主宰し、様々な鑑定を引き受けているらしい。

    DNA型鑑定というと、それだけで決定的な証拠能力を持っているかのように錯覚してしまうが、実際には足利事件に見るように、単純に被告のDNA型が被害者の遺留品に見つかったから被告が犯人と決めつけられるわけではないことが本書を読めばわかる。DNA型といっても、その一致率が1兆人に1人であればそのDNA型は他に持ちようが無いだろうが、1000人に4-5人、みたいな可能性であれば、偶然一致してしまう可能性は十分にあるわけだ。

    データを活かすのも人次第というのを痛感する。それにしても本書を読んで空恐ろしいのは、証拠を捏造しているとしか思えない、警察・検事機構である。日本は一見とてもまともで権力者が正しく権力を行使していることに我々は漠然とした安心感を抱いているが、実際にはそうでもないことがわかる。提出された、報道された証拠が、本当に正しい証拠であるのか、我々は常に批判的吟味を必要とするのだろう。

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著者プロフィール

押田 茂實(おしだ・しげみ) 日本大学医学部名誉教授(法医学)。1942年、埼玉県寄居町生まれ。埼玉県熊谷高校、東北大学医学部卒業。医学博士。足利事件、東電女性社員殺人事件などさまざまな事件に関する法医解剖、DNA型鑑定、薬毒物分析、重大事件・災害での遺体検案、医療事故分析・予防対策など、50年にわたって法医学現場の第一線で活動。 主な著作に、『実例に学ぶ医療事故』(医学書院、2000年)、『法医学現場の真相』(祥伝社新書、2010年)、『医療事故はなぜ起こるのか』(共著、晋遊舎新書、2013年)、『法医学者が見た再審無罪の真相』(祥伝社新書、2014年)、『Q&A見てわかるDNA型鑑定(第2版)』(共著、現代人文社、2019年)、『死体からのメッセージ【改訂新版】』(万代宝書房、2020年)などがある。

「2021年 『最終 法医学講義IV (押田茂實の最終法医学講義)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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