チャーチル(祥伝社新書 ガリマール新評伝シリーズ) (祥伝社新書 437 ガリマール新評伝シリーズ)
- 祥伝社 (2015年9月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (275ページ)
- / ISBN・EAN: 9784396114374
感想・レビュー・書評
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第二次大戦時の存在感のイメージが強いチャーチルだが、その当時すでに老齢だった。全身から滲み出るようなエネルギーがこの人の真骨頂で、偉人とは何かを端的に表現した人生だったように感じられる。生きた時期が栄光から衰退に向かう大英帝国と重なっているのも象徴的。それもあってか本書は、生身の人間像を描いたというよりは、近代英国史的な内容に近く、伝記の味としては薄かったようには思えた。
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フランス人著者による、チャーチルの評伝。著者がフランス人であるためか、その人となりや歴史的な功績を、功罪織り混ぜながら客観的な筆致で描き出している。
本書によれば、チャーチルの人となりは、「偉大な企ての偉大な立役者であり偉大な歴史の偉大な芸術家」(ドゴール将軍)、「情熱は壮大で、中庸とは無縁」、「楽天家でよく笑うかと思うと怒りっぽく鬱傾向もあっ」て「節度や節制とはほとんど無縁」、「血気盛んな優れた軍人であり、レトリックを強力な武器とする見事な統率者」、「雄弁な政治家、ジャーナリスト、作家、記録文学者、そして歴史家」。
何となく、老獪な政治家というくらいのイメージしか持っていなかったチャーチルが、実は戦場に活躍の場を求める血気盛んな司令官(軍人)だったとは…。また、第一次世界大戦、第二次世界大戦に臨んで、先を見通す優れた洞察力を備えた戦略家だった事(ただし、敵も多く失脚を繰り返し、なかなか権力を手中にすることができなかった)や、自分で直接手掛けなければ気が済まない、自己顕示欲の強い傲慢な政治家だったこと、毀誉褒貶が激しかったこと、晩年はその老害が目立ったことなど、チャーチルの影の部分も知ることができた。名門貴族として、ノブレスオブリージュに富んだ人物でもあったようだ。
チャーチルのように行動力に実行力富んだやんちゃな政治家、挫折をものともしないタフな政治家、日本にも居て欲しいなあ。決してお仕えしたくは無いけれど。 -
一般的な「チャーチル像」に沿って描かれた伝記的な一冊。昨年の2017年に映画になったことも影響されて読んで見た。
すでに確立した「チャーチル像」を揺さぶることなく、イメージとそぐわない周辺の事実も含まれており、また批判的な視点(ドレスデン爆撃やアルメニア虐殺の傍観への意見)も記載してあるあたり、ピースサイン一辺倒なイメージとは違った面も見せられてよかった。
最後の方のページに掲載されている、カメラに背中を向け庭園を眺めるチャーチル。この写真を初めて見たのは80年代の終わりに『LIFE』の写真展で見たのだが、こうして伝記を読んだ後にその写真を目にすると、40年近く前に見たときとは大きく印象が異なり、60年代の掲載時の「意味ぶかさ」が理解できた。
あまり深みはないものの一冊でさくっと読めて良い。 -
コンパクトに纏まって楽しんで読める