不敗の名将 今村均の生き方 -組織に負けない人生を学ぶ- (祥伝社新書 551)

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396115517

作品紹介・あらすじ

不敗の名将 今村均の生き方

感想・レビュー・書評

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  • 第1話 陸軍士官候補生/第2話 陸大入学/第3話 陸大卒業/第4話 佐々木一等兵/第5話 炊事当番兵/第6話 ノックス事件/第7話 小柳津少佐と少年給仕/第8話 上原勇作元帥/第9話 思想犯とされた兵/第10話 大激戦

  • 今村均は太平洋戦争時の帝国陸軍軍人として私が最も尊敬する人物の1人だ。本書タイトル「不敗の名将」副題の「組織に負けない人生を学ぶ」は今村均の生き方から、現代社会における組織内でのリーダーのあり方について言及する。今村の生い立ちから陸軍への志願、そして陸軍大学を首席卒業後まで少尉時代から中将まで(支那事変まで)に経験したことを、本人が戦後に記した「回想録」を引用する形で本書は進んで行く。
    若い時分から正しい事をはっきり上官に示し、階級社会の軍隊では時に周囲から注意を受ける様な厳正な態度で事に当たる。今時この様な勇気ある管理職(陸大出の将校にはすぐに部下が付く)はあまり見かけないが、リーダーのあるべき姿を地で行くような人間だ。中隊長クラスでは100名以上の部下を持つわけだが、全員の所属と名前、出身などを記憶していたそうだ。部下全員の怪我や健康状態にも気を配り、怪我を負った兵士を見かけると、その日の診察簿に名前がないことにも気付いたと言うエピソードから、チームとメンバーを大切にしていた事が窺える。100名足らずの組織に何年も在籍しながら、一向に顔と名前が一致しない私など、情けないこと極まりない。
    若い頃から部下を大切にする態度も大変立派だが、その背景に、人を信頼し、人に対して性善説にあること、善悪の判断にブレがない事、どのような状況に直面しても判断が早い事、機転が効き悪い状況に於いても複数の代案がすぐに出せる事、数え上げたらキリが無い程、リーダーに必要な素養を全て兼ね揃えている。特に性善説をとる立場は、周囲の人間に対しても、自分が信頼されれば自ずと相手を信頼しようとするという信頼の輪をどの様な組織でも作ることができる優れた考え方だと感じた。何かにつけて競争を意識する会社であっても、自分の利よりも会社の益を、他者との協力を重視するには性善説に基づく信頼感が基礎になければ難しい。
    そんな今村の周囲にも人格形成や立ち振る舞いに好影響を及ぼす偉人的な人々が多くいた事にも引用からわかる。特に上原勇作元帥とのやりとり、そして戦後に元帥婦人が亡くなる前のやりとりに関するエピソードなどは胸が熱くなる。
    本書は回想録を読んだ方も、まだ読んでない方も十分楽しめる内容となっており、今村均という人物の叡智を知る上ではもってこいである。
    おわりに記載された、戦後の戦犯としてのエピソードを知る方の方が多いかもしれない。巣鴨から部下のいる劣悪なマヌス島の監獄への移動を希望し、マッカーサーをして真の武士道と言わしめた話は有名だ。本書は太平洋戦争前で終わる為、今村の功績として有名なパレンバンへの空挺部隊の降下作戦やインドネシアで行った軍政については触れられない。今村均の真の凄さはそこでこそ発揮されると考えていたが、やはり本当にすごい人物は若い頃から抜きん出ていた事を本書にて知る事ができる。本書を機にそうした太平洋戦争から戦後の捕虜時代についても是非読んでいただければと思う。
    なおこの場を借りて推薦させて頂くなら、角田房子氏の「責任 ラバウルの将軍今村均」は内容も読みやすさも秀逸だったと記憶する。真のビジネスリーダーを目指す方の参考になればと考える。

  • インドネシアの話を読みたかったので、ちょっとがっかり。周りに尊敬されるサラリーマン像みたいな話で参考にはなった。

  • 人格的にも優れた名将、今村均陸軍大将。
    英知と信念と信頼、今村均という人物を的確に表している。

  • 200619 日下公人「名将今村均の生き方」 
    「2」素材は良いが、料理は下手

    勝利の哲学 作戦目的を達することで、相手を屈服させることではない
    司令官の決心 攻めるか守るかを決心して「目標」を設定
    陸大の試験   ①敵情の判断②任務と戦力③地形・気象
    →陸大首席卒業/56名

    英知と信念と信頼と
    性善説と人間の理性への信頼がある
    「人間の尊厳への敬意」    

    しかし「日本軍」においては
    兵器・馬匹より軽視された兵士の命      

  • 今年(令和2年)のGWは昨年まではテニスを楽しんでいましたが、今年は緊急事態宣言が出ていてスクールはお休み、なので今回の連休は読み終わった本をできる限りレビューを書く予定にしています。

    恒例のGWの部屋の大掃除で発掘された本です、この新書は今から2年前の10月に発行されたものですが、奥付を見ると原文は私が大学生になったころの1983年とあります。著者の日下氏の本を読み始めたのが、社会人になった平成元年からですから、それ以前に書かれたものです。

    読んだ当時に心に留まった部分を確認しながら、この本のおさらいをしたく思います。

    以下は気になったポイントです。

    ・アメリカは平和時には少将が昇進の最後になっている、大将は職務に付随するもので、海軍大将は作戦部長、太平洋、大西洋、アジア艦隊司令長官の4人だけが在任中なれる、転職するとまた少将に戻る。日本も戦前戦中はこのように運営されていた(p46)

    ・昔は軍人は大佐が最高であった、陸軍なら隊長、海軍なら艦長で、その上は王様か皇帝が直々に就任する司令官しかなかった。ところがナポレオンが連戦連勝して全欧州の各地の王様を相手に政治折衝するようになり、いちいちナポレオンに相談できないので隊長の上に政治もできる将軍を置くようになった。戦争以外に和平や戦後秩序のあり方まで決定できる権限を持っているので、ジェネラル(一般)と呼ばれた(p46)

    ・平常心の回復手段として、東洋では座禅、書、和歌、茶の湯、舞など、西洋では瞑想、器楽、散歩、ギリシア哲学の読書、詩の暗誦等、上に立つ人は努力している(p68)

    ・日本陸軍では中隊はもっともよくまとまった戦闘単位及び生活単位で中隊長はお母さんだと教えていた、兵隊人数は戦時平時で増減するが、約160名、これを補佐するのは兵隊から昇進してきた准尉、中隊の下には4小隊があり、小隊には分隊がある、兵隊をよく殴ったのは分隊長とか班長とかの下士官、一年先輩の古兵である(p81)

    ・徴兵で入ってくる兵隊は二年間勤めると満期除隊して社会へ帰っていく、志願兵は一生勤務して少しずつ昇進するので年長でも士官学校出の将校の下につくことが多い(p93)

    ・会社でも家族でもなんでも同じだが、何か問題を見つけた人は、その解決策もセットで直接当事者に提案するとよい(p108)

    ・人の信用は勤務に永続性があるか、と賃金を後払いされてもそれまで待てる財力があるかどうか、及び一度に多額の給料をもらってもそれを浪費せずに1週間か1ヶ月計画的に消費する生活ができるかにかかっていて、それが日給、週給、月給に現れていた(p132)

    ・人には誰でも暗い思い出や悲しい話、引け目に思っていることがあるが、それはそれを本当に理解してくれるだとうと思う人にしか言わないものである(p135)

    ・第一次世界大戦でドイツ、イギリス、フランスは近代工業の酔を尽くした新兵器を投入して戦った、兵器の進歩に伴って戦術戦法、軍の編成、指揮命令の考え方までが大きく変化した。しかし欧州大戦の局外にあった日本は陸軍も海軍も一挙に二流の軍隊になってしまった(p149)

    ・昭和12年以降の全面戦争において、日本の若者は手渡された兵器が、日露戦争当時の38式小銃、第一次世界大戦終了後に英仏からバーゲンで買った大砲、機関銃を使用、補給システムや補給用車両の近代化も全然できなかった状態で戦わされた(p150)

    ・日本全体を軍国化させようとする動きはテンポを早めた、国民もその陸軍の動きに強い支持を与えた、その理由として国民の過半をしめる農民の生活があまりにも貧弱であるのに対して、都市に住む華族・官僚・インテリ・商工業者等の生活がかけはなれて裕福だったことが挙げられる(p178)

    ・日本が保有する師団は、近衛師団以下28師団あったが終戦時には194師団あり粗製乱造された(p188)

    ・日本の軍政下にあったインドネシアの人々は、なぜ今村均を救おうとしたのか、それは日本軍が行ったのは軍政であり、圧政ではなかったから(p229)

    2020年5月5日作成  

  • 明治から第2次大戦までの軍人、名将と称えられる今村陸軍大将の生き方を本人による回顧録の引用と著者による解説で辿る。
    本書で今村を知ったが、様々な立場の理と情、時代背景を踏まえながら、筋は曲げずに関係者が納得するような対応ができた人物だという印象をもった。
    人物と認められる人の考え方や行動には、自分には及びもつかないことを痛感させられた。
    18-174

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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