「人口減少」で日本は繁栄する: 22世紀へつなぐ国家の道

著者 :
  • 祥伝社
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396612498

感想・レビュー・書評

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  • 以下、概要。

    ○ 2003年、2004年と連続して特殊合計出生率が1.29となり、史上最低の数字から上向かない。

    この値が2.07を下回ると、人口は徐々に減少していく。

    ○ 江戸時代中期になると、晩婚化が始まった。

    農業技術が進んだことで、生産性を上げられるようになったから、少ない人数でも従来同様の収穫が得られた。

    また、幼児死亡率の低下によって、できるだけたくさんの子供を生む必要がなくなった。

    そこで少子化になったが、産業や文化が伸びやかに発展したのは、その少子化が起こっていた江戸時代中期である。

    ○ どんなに日本不景気だの、落日だのといっても、GDPは約500兆円のままで横ばい。

    「ひたすら疾走して背伸びしてきた日本も、大人になって落ち着いた」とでも言うべきであって、嘆いたりする必要はない。

    しかも基調は円高に推移してきているのだから、同じ500兆円でも、「目減り」ではなく、「目増し」であって、実質的には使い出が増している。

    人口が多いからといって、豊かさは享受できない。

    例えば、団塊の世代などは、学校には大勢の生徒が詰め込まれ、施設や教育の質は後回しだった。

    道路は大渋滞、病院の待合室から入院用のベッドまで混雑した。

    人口減少によって経済が受ける打撃は、プラスとマイナスの両面があり、社会にとっても同じ。

    マイナス面ばかり強調されるのは、大人だけ、老人だけの家庭には落ち着きや安らぎはあっても活気がないから、さびしくなってしまうから。

    その心理的な寂しさが、国家経済の議論にまで拡大して入ってくる。

    少子化社会になると、税収が減るから心配だという気持ちがあると思うが、無駄になった税金は1000兆円といわれている。

    この無駄な税金を見直す、いいきっかけになるのではないか。

    地方交付税制度は都市住民が納めた税金を、自分たちが住む都市のためでなく、格差があって遅れている、不幸な地方のために使おうというもの。

    しかし、大都市は疲弊し、財政は破綻した。

    お金を尺度にして地域格差を論じるのは奇妙なこと。

    例えば、地方は給料が安いという。

    しかし、給料が安くてもいい生活がある、幸せな暮らしがあることに国民は気付き始めている。

    ○ 日本は鎖国しても生きていける。

    日本がどうしても国際化しなければいけない理由は、「エネルギー」と「食料」がないから。

    エネルギーは100%輸入に頼っているといわれる。

    しかし、輸入しているのは石油で、しかもそれは「安い」からである。もしも値上げされて高くなったら、日本人は必ず代替案を見つける。

    現在、日本が使っている全エネルギーのうち、石油が占める割合は半分以下で49%。

    残りは天然ガスと石炭と原子力。

    石油の用途は、移動用(車や飛行機)

    49%の石油のうち最大60%は自動車用。ということはハイブリッドカーの普及によって、石油の輸入は三割減できる。

    1990年のときは、全エネルギーのうち、70%が石油が占めていた。

    10年と少しで石油依存率は49%まで下がった。

    コストさえ我慢すれば、20%まで下げられる。

    エネルギー自立のメドはすでに立っている。

    石油も、日本が買えなくなったら、それ以上は値上がりしない。もし日本経済の負担力の限界が50ドルだったら、それ以上は誰も買わないのだから、50ドル以上にはならない。

    日本は省エネルギー化の最先進国だし、今後の需要の増加は原子力発電所を作れば済む。

    それでは、アメリカが困るので、「原子力は危険だ」というキャンペーンや、感情的な反対運動を終わりたてが、最近では、アメリカでも原発の建設を再開した。

    食料に関して言えば、日本の食料自給率は役40%で先進国では最低とよくいわれる。

    しかし、これも、安いから海外から買っているのであって、輸入品が高くなったら国産できる。

    今までは、品質が良かった。品質が保たれていたのは、各国が日本に「開発輸入」を認めていたからである。

    開発輸入とは、日本の商社やメーカーが外国へ行って指導して生産し、そして輸入すること。

    日本の厳正な品質保全と、味の面のため、開発輸入を各国が大歓迎し、さらに二は日本がそれを持ちかけてきた結果の自給率低下である。

    正直に日本の注文にあわせて生産する国もあれば、禁止されている農薬を撒いてインチキする中国のような国もある。

    日本の野菜は高くても安心である。

    必要とあれば、日本は十分に食糧生産も輸出もできる。

    また、国民一人当たり1日に供給されるカロリーは、約2600キロカロリーだが、実際に食べているのは役2000キロカロリーである。その差はロスで捨てている。

    この無駄を省けば、2割も3割も改善できる。

    海外でも「Mottainai(もったいない)」という日本語を広めようとする動きがあるほどで、もともと日本人は食べ物を無駄にしないということを美徳としてきている。

    つまり、食糧危機がもし到来したら、節約と、国産倍増によって食料の輸入依存率を大幅に下げることは簡単である。

    ○ 日本は世界で一番信用されている国だとの自信を持たなければならない。

    アメリカが日本で輸出される牛肉について、BSEの全頭検査をするかどうかでもめている。

    アメリカ側の根拠は「アメリカ人も食べている」。

    ごり押しに屈する必要はないが、逆にアメリカへ行って牧場を作ることも考えられる。

    安全性を高めて、日本に輸出する。

    そうすると、厳しい日本の安全基準をパスする肉だから、とアメリカの金持ちの需要が出てくる。

    アメリカ分と日本分で増産せざるを得ない。これが開発輸入である。

    日本のマーケットの力は質・量ともになみなずれて優れているので、遠からず日本のマーケットの好みに、世界の生産は従うことになう。

    日本が鎖国すると言い出すと、多分鎖国させてもらえないだろう。

    国際化はその程度でよいのであって、日本のほうから焦ることはない。

    ○ 世界中で作られている商品の中から、日本人が気に入ったものは、一流品の証明とされている。

    ルイ・ビィトンは、日本向けが一番多くて、約4割に達している。日本市場への注目度は非常に高い。

    銀座には、エルメス・シャネル・ディオール・コーチなど世界の高級ブランドの直営店が並んでいる。

    銀座で売れているという評判が立つと、上海でもソウルでも売れる。

    銀座はアジア人の憧れの中心地となっている。

    つまり、日本人は消費のリーダーである。

    BMWも「世界で一番うるさいお客は日本人です。

    日本のお客を満足させなければ、BMWの将来はありません」といっている。

    これからは「量の経済(アメリカ)はさようなら、質の経済(日本)よ、こんにちは」となる。

    ○ 外国語になった日本語は近年、急速に増えている。現代英語の外来語を調べると、日本語に由来する言語はフランス語に次いで2番目に多いという報告もある。

    英語で「アニメ」というと、「アニメーション」とは異なるし、「マンガ」も、「アメリカン・コミック」「カートゥーン」は含んでいない。

    ○ 将来の日本は人口が減る。経済が縮小して貧乏になると心配する人がいる。だが、日本文化に憧れる国がどんどん増えるから、心配はない。

    これからは、ビジネスモデルの中に日本をちゃんと出していくことが必要だろうなぁ。

  • 概要はGaijin Pressさんのレビュー
    http://booklog.jp/users/gaijinpress/archives/4396612494
    にて言い尽くされている。

    タイトルから分かるように、天の邪鬼というかネガティブと考えられている情報をポジティブにとらえている。根拠があやふやならただの空元気であるが、全うな根拠がある。しかしながらその根拠となる情報は今まで正しく報道されてこなかったものもあり、情報を正しく見る目を養わなければと感じた。中国の政府筋等との会話からも著者の主体性、ならびに機転を感じる。相互の連携は大事であるが、先ず自分がどうしたいのかを考える必用があるということを教えてくれた本である。

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著者プロフィール

1930年、兵庫県生まれ。三谷産業株式会社監査役。日本ラッド株式会社監査役。東京大学経済学部卒。日本長期信用銀行取締役、(社)ソフト化経済センター理事長を経て東京財団会長を務める。ソフト化・サービス化の時代をいち早く予見し、日本経済の名ナビゲーターとして活躍。未来予測の正確なことには定評がある。『いよいよ、日本の時代がやってきた!』 『日本人への遺言』(渡部昇一氏共著)『日本人への遺言partⅡ 「和の国のかたち」』(渡部昇一氏共著)『反核愚問』他多数有り。

「2018年 『「発想」の極意 人生80年の総括』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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