官愚の国

著者 :
  • 祥伝社
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396613907

作品紹介・あらすじ

"衆愚"よりも恐ろしい霞が関の手口。たとえ首相が辞めても「殉職」する役人はいない。「政治主導」を潰し、国を動かす彼らの正体を実体験から解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • この本の筆者は「官僚中の官僚」と異名をとる旧大蔵省・現財務省の出身なんだそうです。日ごろ、僕たちが知ることのない官僚の世界をのぞき見ることができます。

    Facebook上で現役の官僚とおっしゃる方と『友達』になったので、あんまり官僚のことをこの本に書かれているように悪し様には書くことはできないんですわ。しかし、筆者は『官僚中の官僚』と異名を持つ財務省出身なだけに、日本の中枢が恐ろしいほどに克明に書かれてあって、読んでいてぞっとしました。もし、ここに書かれていることが本当のことだったら、日本はどうなるのだろうと思ったしだいです。特に自分が恐ろしいなと思ったところはかの宮澤元総理が旧大蔵官僚のエリート中のエリートだったということは有名ですが、相手の学歴を聞くときに『(東京大学の)第何期かね?』と相手が東大を卒業してあることが前提という、なんとも象徴的なエピソードに背筋が恐ろしくなりました。やはり、東京大学の人間しか基本的に行ってはいけないところなのだと。そんなことを思いました。

    そして、最も参考になったのは、試験問題を作成する場面で、あらかじめ問題はリークされてあるのだと、そして、その問題をきっちりと勉強した人はできるが、できない人はまったくできない。そういう風に作っている。というエピソードを聞いて、僕がなぜあの時公務員になれなかったのかと。その疑問が氷解しただけでもこの本を読んだ価値がありました。これからがんばって官僚を目指すみなさまは過酷な受験勉強の間にこの本を一読していただいて、これから進む世界はこうであると予習していただけるとうれしいです。

    • 夜半ノ嵐さん
      ウン。とくに終わりの第三段落目。

      ウン。とくに終わりの第三段落目。

      2012/01/29
  • 「さらば財務省」の著者による、官僚批判論。

    筆者がキャリア組の試験作成者をやったことからも、どのような人間をキャリアとして採用するか、また霞ヶ関の論理に飲み込まれて、レトリックの達人となるかを書いている。

    日本は官僚を何とかしないとやっぱりダメなんだろうかと思わせる本。

  • 中央官僚は怖いよな。
    その官僚を、無能と言い切る。
    日本の教育が、なぜ詰め込みで独自性を尊重してこなかったかといえば、多分それは東大がそもそも官僚養成学校だったからだろうなと思う。官僚に期待される能力がそれだからだな。
    んで、それが鼻持ちならないエリート意識と、縄張り意識と、権益の拡大と天下り先の確保を第一に考えりゃ、そりゃこうなるわな。

    議員は、法律を作ることが仕事で、議員立法がキチンと出来ることが政治主導だという記述はなるほど。

  • 官愚の国 / 高橋洋一 / 2011.11.11(26/78)
     政治主導はあたりまえ、日本はいつまでたっても当たり前のことができない。
     国家公務員試験の特徴:①勉強量と正答率が比例するような問題ばかりが出題、②正答率を上げるために、難問を避けて平易な問題を優先的に処理する。
     行政の世界では新しい問題について対応することはまずあり得ない。すべて定型的な問題である。官僚は定型的な問題への対処能力だけが求められ、その意外のことは全くする必要がない。。いやできない。したがって、官僚に「未曾有の問題」についての解決策を求めても、求めるほうが間違っている。
     ヨコ・タテ能力=横文字を縦(和約)できる能力。明治期の欧米列強にキャッチアップする過程では、いち早く情報を入手し、民間におしえることで、産業が発達してきた、そしてありがたれら、しかし、日本が今日キャッチアップしてしまった時点でその優位性は失った。必要なのは競争にもまれること。
     かつての通産省=日本株式会社の司令塔、mighty MITI。通産省による産業政策が戦後の高度成長を主導したという定説あるが疑問。
     日本的産業政策はもはや過去の遺物だ。という論文
     成長産業を見出し、保護・育成する産業政策は日本独自。(各社ごとに車の種類の生産に特化するような規制を図ったが、民間の猛烈な抵抗にあい、実現せず、実現してたら、日本の自動車産業が海外を石鹸することはなかった)
     通産省はマーケットの動きを後追いし、それだけでなんとなく、自分たちがやっているようにふるまっていた。産業界の先導役なんて果たしてなかった。
     専務理事政策=事業者団体への天下り。
     衆愚政治=国民と政治家だけを批判。官が抜けている。代議制民主政治の行政府にあって、選挙の洗礼をうけない。その官が実際には政治を動かしている。
     日本人が官僚をこぞって批判するのは、実は日本人のメンタリティーとして、本当のところでは官僚を尊敬しているからではないか(お上という言葉)
     ヨコタテの優位性があればこそ、尊敬されていた、明治時代の官僚神話はいつのまにか、官僚信仰となって日本人に刷り込まれた。
     官僚は①政治的な中立性はあるが、即応性はない。政治家は信用していいない。行政は官僚にまかせろという日本人の気持ちを代弁している。システム的にも、各省庁のトップである事務次官は政治任用ではない。資格任用。
     官僚は絶対的に正しいという神話の裏側で、官僚をチェックし、ペナルティーを与える仕組みがない。しかも、政治家と官僚が二分されているため、いつも行政上の責任をとるのは政治家であり、官僚は責任を負わない。
     まるで通産省の官僚が全知全能であるかのような振る舞い。市場メカニズムより官僚機構のほうがすぐれている。上から目線で介入。政策といいながら、単に役所の仕事づくり。
     増税は財務省の最終目標
     財務省は他省庁のことを民主主義プロセスに選ばれた族議員の言いなりになって無駄使いすると見下している。他省庁は、地方官庁や地方議員はダメで自分たちが指導しなければならないと思い込んでいる。その典型が総務省。職員を地方公共団体へ多数派遣して、参加に収めることに熱心。
     産業政策を力説しても、本心は補助金が欲しいだけ。関係業者に分配し、天下り先をつくる。専務理事政策。
     事務次官クラスの幹部職員でも、身分保障の話になると労働者の権利を持ちさす。私も一労働者ですからと。普段は社長のようにふるまっておきながら、保身に走る官僚の習性。社長がかわれば、取締役も一緒に退陣するのが筋。
     公務員も失業保険に加入せよ。
     大蔵省=われら富士山、他は並びの山、官庁の中の官庁。
     政治家は脱税だけは逃げられない。故に、政治家は財務省には頭が上がらない。
     政権与党を屈服させる力がある。国政局の要職に出向後は、首相秘書官等政治的な要職につかせる。
     日本の国家公務員の人件費は約5兆円。地方をあわせると30兆円。
     IMFに増税をアナウンスさせるのも日本の官僚。黒舟よろしく重く響いたかもしれない。
     官僚は作文能力に長けている。「官僚レトリック」
     霞が関修辞学=Aをやるといったときは、Aだけをやる、反対解釈でA以外はやらないという意味になる。押しつ受け的斡旋はやらない=おしつけてき斡旋でない斡旋はこれまでとおり黙認という意味。完全民営化と完全に民営化。完全民営化=民有・民営、完全に民営化=政府が株式を所有して経営形態のみ民営にする、または政府が根拠法律だけを持つ特殊民間法人化(農林中金)。
     数学的には二律背反。しかし、官僚の作文は油断ならず、Aであるが、Bともいえると両立してしまうことを平気でかく。言葉の遊び。
     天下り先を筆頭に、ファミリー企業と呼ぶべき大蔵傘下の団体・企業がおおいのは、大蔵一家の人間は路頭に迷わせないという前提。
     ファミリー意識は、組織の維持だけが主目的になってしまう。手段を目的化してしまったら、もっとも迷惑を被るのは国民。
     政治家は官僚をうまくつうかいこなしてこそ政治家だといわれるが、現実面では使いこなすことは難しい。官僚が気に食わなければ替える以外に方法はない。政治家は官僚を吟味し、選ぶ立場にある。しかし、官僚の首を飛ばせば、私たちは一労働者でございますと身分保障を持ちだす。しかし、民間であれば職位があがるほど経営責任にかかわる比重もおおきくなるのであって、一定以上の役職者なら口が裂けても言えない。
     政官のもたれあい構造:官僚の政策立案能力(作文能力)に政治家は依存しながら、政治家としてのパワーを蓄積・増大させていく。互いにメリットをけいさんした持ちつ持たれつの構造。官僚に作文をまかせると天下り先の確保のロジックが刷り込まれる等官僚のやりたい放題になる。議員立法なくして政治主導なし。
     官僚出身の議員をもっと上手につかうべき。政策立案を過去官僚たちにさせればよい。これなら官僚主導とは呼ばれない。

  • 売り

  • 高橋洋一先生著

  • 財務省出身の高橋洋一氏の霞ヶ関の中枢の財務省の超内向き思考の問題点を纏めた一冊。
    何が問題なのかの事象を列挙してわかりやすいがどうしたらそれを解決できるのかまで突っ込んで欲しい。
    霞ヶ関が役人全てが公務員法に守られ、日本の抱えている大半の問題点は霞ヶ関。財政再建も。明治の宰相・山形有朋の原案がそのまま守られてきている。やはりこれにメスを入れる事が出来る政権を選び、育てるしか国民の生きる道は無い。

  • 官僚政治、中でも大蔵官僚の特権階級意識の強さを目のあたりにした。国民の政治への関心が高まり、マスコミ以外から違う視点で情報を取らなければ、体制が変化することは難しい。

  • 作者は制度内を知り尽くしているのだからもっと実現の追及を目指した語りでもいいんじゃないかなあと。
    他の官僚批判の本とあまり変わりがない。

  • キャリア官僚については様々言われておりますね。当の本人がその立ち位置だった訳で、その意味ではリアリティがあります。一方で「私感」であることも留意しなければなりませんが、ただ! 本当に官僚が優秀であるならば、今の日本は「今の日本」のような状況であるハズもなく、その事実こそ、この本の内容を担保しているように思います。
    今の民主党内閣を見れば、原発再稼働にしろ、消費増税にしろ、どう考えても今の日本が取るべき政策ではないと思われ、なのになぜ政治生命を懸けて、などと無責任な言葉を発してまで実現しようとしているのか――完全に官僚に弄ばれているとしか思えないのが残念です。
    さて、次期総選挙ではどこの誰に自分の意志を委ねるか・・・悩ましい。かなり悩ましい。それでも棄権はしません。「棄権も意思表示」なんて責任丸投げな愚行はするつもりは毛頭ないので。
    にしても、官僚の思い通りに動く政治家のみならず、マスコミも、それを鵜呑みにする人々も「いかがなものか」。

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著者プロフィール

1955年東京都生まれ。数量政策学者。嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科教授、株式会社政策工房代表取締役会長。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。1980年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)などを歴任。小泉内閣・第1次安倍内閣ではブレーンとして活躍。2008年に退官。菅義偉内閣では内閣官房参与を務めた。『さらば財務省!』(講談社)で第17回山本七平賞を受賞。著書はほかに、『正しい「未来予測」のための武器になる数学アタマのつくり方』(マガジンハウス)、『高橋洋一式「デジタル仕事術」』(かや書房)、『国民のための経済と財政の基礎知識』(扶桑社)、『理系思考入門』(PHP研究所)、『国民はこうして騙される』『プーチンショック後の世界と日本』(徳間書店)など多数。YouTube「高橋洋一チャンネル」でも発信中。

「2023年 『日本の常識は、世界の非常識! これで景気回復、安全保障は取り戻せるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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