やわらかい砂のうえ

著者 :
  • 祥伝社
3.71
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  • (3)
本棚登録 : 1564
感想 : 148
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784396635893

作品紹介・あらすじ

ためらいなくつないだ手を離せるように、あなたを信じたい。
圧倒的共感度で大注目の著者が贈る“人生がいとおしくなる”恋愛小説。
砂丘の町で育った万智子は大阪の税理士事務所で働く24歳。
顧客のウェディングドレスサロンのオーナー了さんに頼まれ、
週末だけお手伝いのアルバイトをすることに。
了さんに連れていかれた「あつまり」で万智子は
美しくてかっこいい年上の女ともだちに出会う。
そんなある日、サロンに早田さんという男性が現れ、
人生はじめての「恋」のときめきを感じる万智子だったが……。
きれいになるのは誰のためかをぜったい間違えたらあかんで――
自分を好きになりたい万智子の、小さな勇気を抱きしめたくなる成長物語。

感想・レビュー・書評

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  • 寺地さん作品ですー
    定期的に読み進めてます!


    税理士事務所で働く万智子が
    ウェディングドレスのサロンの手伝いもすることになり、
    そこでの出会いで少しずつ成長していく話


    この主人公の万智子、
    なかなか面倒くさい人物で、、、
    どことなく自分に似ているところがありまして。笑


    会話の瞬発力が圧倒的にないところ、
    あとから脳内反省会してわーってなるところなど、ちょっと私?ってなりました。


    前はポンポン、なんなら何も考えずに話してたのに
    大人になって友達と会う機会が減ってきたからか
    会話の瞬発力の低下がすごくて、、
    後からああ言えばよかったのか、とかよく考えるんですよね。。


    でもこの万智子の脳内の
    絶妙な表現が好きでした

    例えば
    『自分のことを棚どころか屋上くらいに上げてしまっている』

    とか

    『タケオ、
    もうこの際呼び捨てにしてしまうが、タケオは』

    とか。

    細かい表現が好みで
    読んでいて楽しかったです


    万智子の全部に共感!ではなくて
    面倒くさいーって思う部分もあれば
    あーわかるーって部分もあって
    ふんふん言いながら読んでました



    その万智子の周りにいる人たちが
    とても素敵!!!!

    まず了さん、美華さん、冬さん
    もぅ素敵!かっこいい!!
    あつまりに参加したい
    憧れるー
    こんな生き方、考え方をしたい


    本庄先生も好き
    ポロッと溢れる言葉が好き


    あとは万智子のお父さんも好き!!
    うぅお父さん!!!


    ありのままの自分でいること
    自分を好きになること
    そのままの自分を見せること
    そのままの相手を受け入れること


    そんなことを教えてもらった一冊でした


    なんか女友達と会っているような気持ちになる作品でした(^^)

  • 4.5

    砂丘の町で育った万智子は大阪の税理士事務所で働く24歳。
    顧客のウェディングドレスサロンのオーナー了さんに頼まれ、
    週末だけお手伝いのアルバイトをすることに。
    了さんに連れていかれた「あつまり」で万智子は美しくてかっこいい年上の女ともだちに出会う。
    そんなある日、サロンに早田さんという男性が現れ、
    人生はじめての「恋」のときめきを感じる万智子だったが…。
    きれいになるのは誰のためかをぜったい間違えたらあかんで―
    自分を好きになりたい万智子の、小さな勇気を抱きしめたくなる成長物語。

    主人公真智子はとっても真面目で良い子。
    でもなかなかめんどうくさいかな…?
    今迄男性と付き合ったことがない、自己肯定は低く自分の内面を見て欲しい。
    やっと好きになった男性・早田さん。
    緊張しまくりのデート、上手く喋れない。
    嬉しい・楽しい・素敵で頭が一杯になる。
    でもひとりになると、その時はどうでもいいと思っていたはずの物事が、
    魚の小骨みたいに喉にひっかかっていることに気付く。
    抱いた感情を言語化し、他人に伝えられる状態にまでまとめあげるという作業に
    とても時間が掛かる。
    よって、会話の瞬発力が致命的だ。
    真智子のような考え方はとても固くて自分の中に溜めてしまう。
    しんどいだろうなぁと思った。
    了さんがらみで、とても素晴らしい三人の年代の違う女性と知り合えて良かった。
    ポンポン的確なアドバイスをしてくれる。
    周りの人の言葉でしっかりと気付く事が出来成長出来て良かった~♪
    「何が正しいとか、自分はこうするとかっていう方針は絶対に
    もっていかないといけないもの」なのですね!

    少し違うが私も似た所がある。
    だからなんかわかるなーと思った。
    後であの時のあの言葉は…って気になったり、言葉の瞬発力が遅い事

  • 「さんじゅってーん、ななじゅうごてーん」
    教室で人気者の男子が通りすがる女子たちの容姿を面白そうに採点する。
    はっきり言って不愉快。
    だけど、そんな無責任で不躾な他人の評価視点を内在化して、怯えたり消極的になったり。
    自分の好きな服装でも、恋人にウケが悪いとオロオロしたり、一方で、相手の好みに合わせた格好をするのを媚びではないかと感じてしまう。

    主人公の万智子の心情、よくわかる。

    自信のない私たちは、他者からの目線に常に怯えて、自信満々といった風情の綺麗な人を羨ましく思ったりもしますが、「自信は生まれながらに備わってるものでもないし、自然に身につくものとも違うの。他人から授かるもんでもないし」と、自信満々の美華さんは言うのです。
    「自信を持つぞ」と自分で決めて持ったらいい、と。

    自信を持つ、と言うことは、私は美しいと思えるという意味ではない。
    わたしがわたしのまま世界と対峙する力を持つということ。
    他人の不躾な視線を、毅然と跳ね返せるということ。

    自分のあり方、自分の生き方に、自分で責任を持つ。
    相手のすべてが好きなわけではなくても、欠点はそれはそれとして、友達でいられる。
    そんな大人たちがカッコいい。
    一人でいられる者同士の間にしか、友情は成立しないっていうのは本当だよね、ってあらためて思う。

    私はもういい大人の年齢ですが、これを10代や20代で読んでいたら、もっと楽な気持ちで、もっと
    カッコいい大人になれたかもしれないな。

  •  良かった。本を読み終えてまず思った感情。この良かったは、この物語が良かったというのではなく、主人公の万智子に良かったねと言ってあげたい『良かった』だ。

     さて、この物語の主人公、万智子は大阪の税理士事務所で働く24歳の女性。今まで自分の意見をはっきりと相手に伝えられないような女性だった。これまで恋人ができたこともない。

     そんな万智子だが、ウェディングドレスサロンの了さんと出会い、カッコいい2人の歳上の女性と知り合いになり、『自分に自信を持てるように』と思えるようになる。

     やがて男性嫌いだった万智子にも好きな人ができる。早田という男性だ。一見スマートで全てを包み込んでくれそうな早田と恋人関係になるが、万智子の理想とは違う早田と面倒くさい万智子。2人はすれ違い・・・。

     結局はハッピーエンドって話だが、ハッピーエンドありきで作られた物語ではないような気がする。一つ一つの感情やら友達との関係性、恋人に言いたくても言えない気持ちとか、本当にリアルで、だからこそ読んでいてイライラもするし共感もできた。

     この物語には魅力的な人物がたくさん登場するが、万智子の父親がいい。そうだよな。親ってこうだよな。こうあるべきだよな!って思わせてくれた。


     自分の好みに合わせてくれるあなたを気に入ってくれる人じゃなくて、あなたが好きなあなたを好きになる人に、いつかきっと会える。

     きっと早田はいつの日か万智子にとってそんな人になってくれるだろうなと思えた。

  • 寺地はるなさんの長編小説。

    ◆あらすじ
    過去のトラウマから男性不信になり、自分に自信を持てずにいる万智子は、税理士試験の勉強をしつつ実務経験を積むため、本多税理士事務所で働くことになる。
    本多先生に頼まれて書類を届けにいったオーダーメイドのウェディングドレスサロンで出逢った了さん、友だちの美華さん・冬さんとの交流、早田さんとの初恋等を通して"自分らしさ"とは何かに気づいてゆく。

    ◆感想
    了さん・美華さん・冬さんの個性的な3人が、それぞれ素敵なセリフを残していたので、特によかったものを引用。

    「美しくない女の人は、この世にはいません」
    「わたしが美しく変身させてあげるわけではないの。彼女たちが『自分は美しい』と気づくためのお手伝いをしてるだけ。自分が美しいことを知らない女の人が多すぎるから」
    →了さんの仕事に対するプロ意識と考え方がとても素敵。

    「内面を見てほしい、ってさっき言うてたけど、あんたってだいぶめんどくさいで。なんでそんなに自分の内面を良いもんと思えるんか謎やわ」
    →"外観より中身が大事"ってよく言う言葉だけど、このセリフを読んで、確かに!胸を張って内面を見てほしいなんて言えるほど、美しい内面を持っているか考えたことなかったなって、ハッとさせられた。

    「真実でも、正論でも、相手の状況とか状態いかんによっては、受け入れてもらえんこともあるしな。ぜんぶ話せるのがいい関係やとは、私は思ってない」
    →これは本当にその通り。言わない方が平和を保てるなら、全部を言う必要はないよね。

    「あんたが自分の思う『正しい生きかた』を実践するのは勝手やけどな。それを盾に他人を裁くのはどうなん。ちょっと傲慢なんとちゃう?」
    →これもごもっともだ。

    どれほど好きでも他人の存在を生きる指標にするなんて、そんなの…」
    「おもしろくない」
    →うん。面白くないし、生きる指標にされる側からしたら、重圧でしかないね。


    了さん・美華さん・冬さんの潔い生き方に対して万智子のネガティブで言い訳がましいものごとの捉え方が、途中から若干ストレスではあったけれど、一応最後まで読み切ってよかったという読後感ではあった。

  • 満智子の気持ち、私もそうと思ったところがたくさんありました。たとえば

    〈「不愉快だった、という体験を語ることが悪口になるなんておかしいね」
    首を傾げられて、わたしは押し黙る。
    不愉快だったと感じること、それこそが自分が狭量なせいではないかとも考えていたのだ〉

    〈以前勤めていた事務所や地元の会社では、そうではなかった。
    前髪をほんのちょっと切っただけで「あ、髪切った?」とか、新しい服を着ていったらすぐに「買ったの?」と訊いてくる人ばかりだった。
    男の人も女の人もそうで、それがちょっと面倒だと思っていた。
    気づく人は気づいてほしい人でもあるから、わたしも彼らの変化に気づくたびコメントしなければならないのだろうかといちいち気を揉んでいたわけだ(中略)
    要するにわたしは自分の意図せぬタイミングで注目されるのがこっぱずかしいのだ〉

    他愛ないことだけど、同じようなことを考えている人がいて、ほっとしました。

    この本はそんな彼女が、ちょっと大人の人たちとの関わりの中で成長する話。

    〈冬さんの事情。美華さんの怒り。菊ちゃんの不安と、早田さんの苛立ち。
    わたしはそれらを、もっと尊重すべきだった。
    彼らの心は、彼ら自身のものだった。
    わたしはただ欠けたり不用意に傷をつけることのないように、そっと手のひらにのせればよかった。
    正しいとか、間違っているとか、賢しらにジャッジするより大切なことがあったはずなのに〉

  • 本多税理士事務所に勤める鳥取県出身の24歳の万智子は許容範囲が狭く面倒くさい性格である。本当は心の優しい生真面目な人間である。
    そんな万智子が初めて男性と交際する。その男の名前は早田。子供ぽっい所があるが優しい心を持った好青年。
    そんな二人だからすれ違いが生まれ上手くいくはずがない。共通する点は勘違いされやすい二人。
    本多先生からアルバイトを紹介され、了さんたちの『あつまり』に参加する。
    歳上の魅力的で芯のある女性たちから頂いた言葉が万智子の懐を深くする。

    自分に自信を持つ、美しくなるとは、他の誰かのようになることを目指すのではなく、自分が自分のまま世界と向き合う力を得ること。不躾な他人の視線を、毅然と跳ね返せるということと、人の心の中の問題はわたしのありかたとは、なんにも関係ない。

    そして、再会した早田と、不安定なやわらかい砂のうえを手を繋いで、時には手を放して向き合っていけるだろう。お互い素直な心で。

  • 読み終わった後、色々と考えることが多かった本。

    人間は、一生、やわらかい砂のうえを歩いて生きていくものなんだなぁ、と思いました。外側から強い風が吹いてきて、歩くのが難しくなって、バランスを崩したり、自分を見失って(内側から強い風が吹いて)、よろけたり、砂地獄に陥ったり。誰かに支えてバランスを取ったり、でもその誰かと一緒に、砂の上で倒れてしまったり。

    バランスよく歩くには、自分に自信を持つこと。「自分は美しい」という外見ではなく、ありのままの自分で、世界と対峙する力を持つこと。淡々と物語は、進んでいきますが、心に残る印象的な言葉が多い本でした。

  • 万智子は、大阪の税理士事務所で働く24歳。
    顧客のウェディングドレスサロンのオーナー・了から週末だけのアルバイトを頼まれたことから、静かだけれどどこか心もとなかった万智子の日々は変わってゆく。

    了と彼女の友人たちは、美しく自信に満ちあふれた年上の女性たち。
    そして、サロンに出入りする業者の早田さんに、初めての恋。
    ちょっとした他人の言動に引っかかりながら、簡単にやり過ごすことも出来ず、悩みとまどうことの多かった万智子は、少しずつ勇気を出して自分と向き合い、装ったり、話したり、怒ったりする力をつけていく。


    『水を縫う』に続いて、これが2冊目の寺地はるなさん。
    万智子の繊細さをそのまま受け入れて、あたたかく導いてくれる女性たちがカッコいい。
    こんな風にズバッと言ってくれる他人なんて、なかなか出会えない。

    「自信は生まれながらに備わってるものでもないし、自然に身につくものとも違うの。他人から授かるもんでもないし」
    「内面を見てほしい、ってさっき言うてたけど、あんたってだいぶめんどくさいで。なんでそんなに自分の内面を良いもんと思えるんか謎やわ」

    ええ年して、いまだに万智子並みに何かと自信がないくせに繊細さはかなり失った私にも、力強くありがたい言葉だった。

  • 「いくつになっても娘は娘ですから 」で泣く。娘を想うお父さん、お母さんネタに弱い。。

    菊ちゃんの妊娠をお父さんに告げた時の「万智もなにか菊田さんの力になれることがあるといいな」このセリフも満点だった。

    万智の考え方とか、早田くんの言葉など、若い頃ってそんな事もあったなーって感じで思い出したりして、なんとも言えない感情になったけど、読後感はすっきり。

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著者プロフィール

1977年佐賀県生まれ。大阪府在住。2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

寺地はるなの作品

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