東アジア・イデオロギーを超えて

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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784403230974

作品紹介・あらすじ

北朝鮮はなぜ「カルト化」するのか?日本は本当にアジアの一員なのか?東アジア・イデオロギーの核心に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 東アジア共同体形成に向けた研究の一環として、東アジアおけるアジア主義、中華思想とは何なのかを学ぶために読んだ本。

    東アジア諸国は、「主権概念が強く自己完結性が極めて高い」ことが特徴で、「一国家を独占する一民族が自己の文化的優越性(これを「中華」という)を主張し、周囲の少数民族や諸国家を蔑む」という。

    また古田さんのいう「内発的発展型中華思想」(西洋の衝撃に対し、もともと自国に内在するものを再発展させればよいという中華思想)は、中国だけでなく韓国にも存在し、戦前期の日本にも存在した。それらは現在の中国、韓国においてナショナリズムを鼓舞し、知識人や民衆の矜持を支えているが、日本では戦前期でその歴史を終えているというのが古田さんの解釈である。

    面白かったのは、彼の作ったアジア主義の見取り図である。(図が作られていればもっとわかりやすかったのだが、本の中には説明だけが書かれている。)
    アジア主義やアジア連帯運動の思想家には三つの軸があり、その軸はそれぞれ、「アジア連帯」と「欧化」と「優越(日本中華)」の3つの方向に向けられていて、それぞれの思想家・運動家はその3つの軸上に配置できるというモデル。

    そしてそれと関連して、現在の東アジア研究にかかわる人間のマッピングがあとがきに書かれている。
    いわく、古田さんが大学で指導している現代の研究者の卵は3つのグループに分かれ、
    1、東アジアに対する「贖罪」から入ったいわゆる「連帯」派学生
    2、「優越」からはいった愛国的学生
    3、中国オタクおよび韓国オタク
    の3つのタイプによって成り立っているというものだ。

    このカテゴライズは非常に興味深く、これからの東アジア研究を支える人間のアジア主義とは一体なんなのか、そして自分の立ち位置がどこかのかを改めて再考する機会になった。

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著者プロフィール

1953年、横浜市生まれ。慶應義塾大学文学部史学科東洋史学専攻卒業、慶應義塾大学大学院文学研究科東洋史専攻修士課程修了。ソウル大学大学院国語教育科に留学。博士(法学)。韓国の延世大学・漢陽大学の日本語講師、下関市立大学経済学部専任講師、筑波大学社会科学系助教授を経て、2000年から筑波大学社会科学系教授を務め、2019年に退官。2003年から2005年には第1回日韓歴史共同研究委員会委員、2007年から2010年にも第2回日韓歴史共同研究委員会委員幹事を務めた。東洋政治思想史や東アジア文化論、韓国社会論、北朝鮮政治を専門にしながらも、西洋の哲学・思想をその独自の視座から読み解く著作も発表。著書に『悲しみに笑う韓国人』(ちくま文庫)、『東アジアの思想風景』(岩波書店。1999年度、サントリー学芸賞)、『東アジア・イデオロギーを超えて』(新書館。2004年度、読売・吉野作造賞)、『ヨーロッパ思想を読み解く』(ちくま新書)、『使える哲学』(ディスカバー・トゥエンティワン)ほか多数。

「2020年 『旧約聖書の政治史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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