ぬくい山のきつね (風の文学館 2-2)

著者 :
  • 新日本出版社
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784406027700

感想・レビュー・書評

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  • 児童文学?いやいや大人の読み物でしょと思う。上手くいえないけれど、ある程度歳を重ねた者が共感できる哀しさや可笑しさ、そして死を扱っていると思うのですが…
    「幽霊」と「洞門」が好き。

  • 意外と、いい。
    でも杉みき子系かなあ。つまり大人が読むとしみじみとした味わいがあるが、子どもには取り立てて言うような物語もあまりないし、心理もよくわかんないし、どこが面白いの?という。
    表題作は子どもにも一番読みやすいと思う。新美南吉児童文学賞を取ったのも納得。
    しかし家族をなくした変わり者の老人が、一人人形芝居をするうち、お客に見せたくなったりする哀れな滑稽さや、墓を掘り返して埋葬しなおす老人の心理や、過疎の村に赤ん坊が来てときめくお婆さん達の切なさなど、子どもにはわかるまいよ。
    「洞門」は死にゆく老人と、思春期で揺れながらも未来に希望を抱く少女を描き、子どもでもまあ、読める子は読めるかな、と思うが。
    これが2000年に出たというのに驚くほどの田舎の昭和の香り。
    いい作品だけど、児童書の棚では埋もれる。
    田舎のお年寄りに読ませたいなあ。

  • 「番外地の九十」・・・住所でいうと番外地の山に一人で住む、対人恐怖症の老人・九十。しゃくとり虫の動きをまねた人形を作り、操る。魚釣りに通りがかる小学生・進吾に拍手をもらうと、嬉しいんだ。
    「幽霊」・・・平作は死んで幽霊になった。近所のケチで変わり者の秀次郎に、勝手に家の杉の木を切られた事に文句を言いたかったのだ。でも、生前の口べたは幽霊になっても一緒で・・・。
    「河鹿」・・・川の土手の上、護岸コンクリートの所で見つけたがえろく(おたまじゃくし)に、フキばあさんは水をやった。ともすれば干上がってしまう所に卵を産んだ母カエルを怒りながら。畑の仕事、そして墓の引っ越しで、昔の土葬された骨を掘りなどをしてすごすうちに、あのおたまじゃくし達がカエルになったと感じる。
    「ぬくい山のきつね」・・・ぬくい山の麓の村だった所には、今はおトラばあさんが一人で住んでいるだけだ。そこに、死んだ筈の夫・金五郎が現れた。おトラばあさんは、それがキツネとわかっていたが、楽しく一緒に暮らすていた。しかし、おトラばあさんの誕生日、キツネの金五郎がいなくなってしまう。
    「洞門」・・・5年の桃子とみのりは親友で、お互いの家でお泊まりなどもしている。ある時、桃子の近所の空き家に、ふるさとで死にたいというお爺さんが来ることになった。
    「深沢の客」・・・村の人口26人、みんなが高齢者の過疎地区・深沢。孫の顔を見せに帰って来た近所の家に、地区のばあさまたちが集まった。赤ちゃんの姿をみては喜び、感動する。

    6編の物語が収録。著者の出身地、山形が舞台だろうか。田舎に暮らす老人たちの孤独や生命の美さ、輝きが伝わってくる。

著者プロフィール

1957年山形県生まれ。児童文学作家。読み物の作品に『ぬくい山のきつね』(新日本出版社/日本児童文学者協会賞、新美南吉児童文学賞受賞)、『じぶんの木』(岩崎書店/ひろすけ童話賞受賞)、絵本の作品に『たぬきの花嫁道中』(岩崎書店/日本絵本賞受賞)、『いのちがかえっていくところ』(童心社)、『すずばあちゃんのおくりもの』(新日本出版社)他多数。

「2023年 『じゅげむの夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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