- Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
- / ISBN・EAN: 9784406053556
感想・レビュー・書評
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朝鮮 被爆 身体
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プロ野球日本最多安打3,085本の大記録を打ち立て(09年にイチローの日米通算安打数には抜かれたが)長島や王と共に人気選手だった張本勲。
しかしその生い立ちは生易しくはなかった。4歳の時の自動車事故で、小指と薬指が焼けて三分の一程残るだけ。しかもその2本が癒着。また親指人差し指は内側に曲がったまま。その後手術をしたが、元通りにはとてもならなかった。更に5歳で広島原爆の被爆者となり、その原爆では姉をうばわれた。
また在日韓国人として、差別を受け貧乏の中で生きてきた彼は、暴れん坊のやんちゃ小僧でもあった。しかし母からおそわった民族の誇りのなかで成長し、18歳でプロ野球選手となり、22年間のプレーで数々の記録をつくった。90年には野球殿堂入り。 その張本が次世代に残すメッセージの一冊。
退役後も韓国と日本の野球を愛し、具体的に球界の発展のために何かと労を惜しまない活動ぶりが嬉しい。そして戦後朝鮮半島がアメリカと旧ソ連によって分断され、以後それぞれが分断されている現状を憂い,自分を「半島人」としてのひとつの民族の一人であるとしている。
貧乏,民族的差別,身体的ハンディを乗り越え,生涯の原点ともいうべき原水爆禁止運動のためにも発信し,「戦争に喝!」という心意気。
そしてオバマの核廃絶宣言を歓迎し、実現を求めている。
一生のなかで、人間がどれだけのことをやれるか、という素敵な個人史。