- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408107165
感想・レビュー・書評
-
タイトルにびっくり。京都礼賛の本は数多かれど、その逆を行く内容かしら、と気になります。
中身は奇をてらった過激なものではなく、京都人としての目で、内側から京都を語っている本です。
ペンネームだとは思いますが、著者はいかにも京都人というお名前の方。
京文化について語り合う「京都大不満の会」があることからのようですが、会員でない人が読むと、タイトルと中身のギャップに違和感を感じそう。
題名はさておき、慣れ親しんだ町についてシビアな愛情で語っている目線は興味深いものがあります。
八坂神社が祀っている牛頭天王について、よくわからずにいましたが、牛頭天王信仰はもともと秘密めいた隠された、明らかにされていないもののようです。
「昔から京都の店は有名になるとダメになる傾向がある」というのは、京都に限らずどこの町でも有り得る話。
また、京都人は、拝観料の必要なお寺には行かないそうです。
観光で行くと、つい財布の紐が緩みがちですが、そこはシビアな地元民。
世界遺産が身近にあっても、踊らされないドライな関係を保っているようです。
「銀閣寺イコール東山文化」とどうしても考えてしまい、銀閣寺の敷地は東山文化の世界そのものだと、つい考えがちですが、印象的案銀沙灘と向月台は江戸時
代の作品であって、東山文化とは関係ないとも書かれており、ハッとしました。
親日派のシラク大統領が来日した時、当然ながら京都も訪問したようですが、三条大橋の南側にパリのポン・デ・ザールを模した橋をかけてはどうかと提案した
というエピソードには驚きを越えてたまげました。
鴨川の橋のデザインに満足がいかなかった様子。それでも洋風建築はないでしょう。
大統領パワーによって、京都市は実際に施工しかけて、住民反対にあって中止したそうです。
京都の碁盤の目の町並みは、わかりやすく単純に見えますが、道が狭くて走りにくい上に近道がないため、実用的なメリットはあまりなく、イライラすることが多いそうです。
日本の世界遺産第1号の法隆寺は、建物の修復のために化学充填剤が使われているというのも驚きでした。
すべてが建築当時のままではなかったとは。
これまで全く気が付かなかったこともあり、なかなかするどい視点を持つ新鮮なエッセイでしたが、時々挿入されるへたうまイラストが、文章の雰囲気とはそぐわない上に、言わんとするポイントがつかめず、違和感を感じました。
文章だけのほうが集中できた気がします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
惰性で進んでいこうとする京都に、警笛を鳴らす本。
-
斜め読みしただけだが、凡百の他の京都本に無い醒めた姿勢と感性が面白かった。単なる観光都市でない京都の意味づけを考える手がかりになりそう。
-
2008.3.14