京都企業の実力

著者 :
  • 実業之日本社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408110769

作品紹介・あらすじ

京都の強さは「京風イノベーション」にあり!!素晴らしい人材を強力に吸い寄せる「不思議な街」。真似は恥。1200年の景気変動を生き抜いた京都の集合知。伝統的なネットワークに世界中が注目。

感想・レビュー・書評

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  • 京都の企業は老舗のイメージですが、その老舗なりのルールや横の繋がりが分かりました。必ずしも合理的に進めることが善ではない事例を垣間見れました。

  • 京都企業の実力2015/1/8
    著:財部 誠一

    著者は、野村證券退社後、3年間の出版社勤務を経てフリーランスジャーナリストとなる。1995年に経済政策シンクタンクを設立。金融経済誌等に幅広く寄稿すると共に、TVやラジオでも活躍している。

    なぜ京都にはこれほど多くの老舗企業が集積し、今なお増え続けているのだろうか。京都では自分だけがよければいいという考え方をしない。人と人が、企業と企業とがじつは濃密につながっている。人としての器量、力量が京都のコミュニティでは徹底的に問われている。

    本書の構成は以下の5章から成っている。
    ①町衆の伝統が京都企業に生きる
    ②好奇心が京風イノベーションを支える
    ③京都花街 育てる極意
    ④断絶の歴史を乗り越えた京都伝統文化のすごさ
    ⑤強烈な人とのつながりがパワーの源泉

    古くから大切にされている
    街並みや文化だけではなく
    時折本書で取り上げられている
    老舗の企業の力・魅力について
    多くのメディアが取り上げている。

    これだけグローバル化が進んでも
    やはり京都らしさというのは
    根強く残りそれが良い意味で閉鎖的な
    空間を作りながらより昇華されながら
    ブランド化されている。

    しかし、それは閉鎖だけではなく
    実はじ~と回りの環境、移り行く時代を
    しっかりと見据え戦略的に閉鎖しており
    そしてその中では絶えず柔軟に
    変化しているということも挙げられる。

    古いものを大切にするだけではなく
    新しいものに対してもしっかりと
    リスペクトする
    老舗の企業にはそんな
    大人の対応的な印象を受ける。

  • 京都の文化、気質と企業についての本。老舗と言えるような企業も多いが、絶えず変革していく気質、繋がりを大切にする気質、教育を大切にする風土が特徴。エピソードもいろいろ書かれていて面白い。
    目次を下に
    第1章「町衆」の伝統が「京都企業」に生きる
    01規模よりシエアを評価する京都
    講師の力量が間われる先斗町・お茶屋での勉強会/尋常ではない創業の思い/
    時代の変化に事業の形を変える老舗企業/京都ではただの金儲け、肩書は意味を持たない/京焼の伝統を汲んだ最先端の電子部品メーカー/他人の領分を侵さない独自性で勝負/「シェアは実力、企業規模は運」/細分化された分業に「匠」が存在する
    02他者との関わり合いを大切にする
    京都に空虚感が広がる/羊菱の「虎屋」は京都企業/東京はあくまでも「仮住まい」/一代で築いた京都の中華料理店/お金の問題ではない/相互肯定的な人間関係が存在
    03単純な事業拡大よりも地域優先
    料理の神、菓子の神/地域と神事は切っても切れない関係/事業を途絶えさせない知恵と執念/地域に対する絶対的な責任/京都人の本音は「町衆」にあり/町衆の普遍性が先進性につながる
    第2章好奇心が「京風イノベーション」を支える
    01食文化に見る繁栄の伝統と歴史
    「和食」と「京料理」/京料理と一線を画す精進料理/手間をかける精進料理の知恵/京料理の食材に京都産なし/京野菜の話は京都ベンチャーにも通じる/歴史だけにこだわっていたら衰退あるのみ/四百年続けてきた出汁の取り方を変える/高橋少年の失敗/東京、大阪に見習いに出される/従来の常識を捨てる/マグロ節を作るところからはじめる/それでも何かが足らない/若旦那が軽々に口を挟めない
    02何があろうと「本道」にしがみつく
    おもしろおかしく/堀場雅夫氏を鍛えた三人の谷町/京都、日本で成功しても喜ぶな/一番大切なことは本道をいくこと/人も事業も本物でなければ価値はない/本道を行くワコール/「世界のHORlBA」に躍進させた二代目/本物に常日頃から接する/「技」以上に大切な人としての「器量」/お粗末ぶりがすぐに広がる/京都で有名な瓢亭と菊乃井の関係
    第3章京都花街育てる極意
    01地域社会との深い関係に人も企業も育つ
    古い歴史を支える厳しい教え/同じ「花街」でも風情が違う/「都をどり」の魅力/「融通無碍のお茶屋に学ぶ」/「誰が来てたか」は絶対にいわない/「東京の企業も使う」/お茶屋とリスク管理/新たな客のリスクは紹介者が負う/「一見さんお断り」の本当の意味とは
    02黛花街のスーパーアイドル、舞妓
    デビューは十五歳/「置屋」が姿を消しつつある/お便所掃除や洗濯をする舞妓のタマゴ/では、なぜ舞妓は京都だけ?/教える側の覚悟/一人前にするには一千万の投資が必要/世間のイメージから逸脱した十七歳/祇園以外で教授出来ない京舞井上流/祇園の人になるにはものの価値が分かることが絶対条件/畳生活が減少していることが悪影響/万国博覧会でのおもてなし/銀座高級クラブのホステスとの決定的な違い/芸のプロ集団/「おおきに財団」の活躍/圧巻の景色/リタイヤする舞妓、芸妓が増加/正座をしたことがない子が祇園に来る/お茶屋のお母さんの本音/厳しい目を持つ旦那衆の存在/今、祇園が抱えている悩み/限定的な名取制度の創設

    第4章「断絶の歴史」を乗り越えた
    京都伝統文化のすごさ
    01今も昔もコミュニティが支える「京焼」と「清水焼」
    太平洋戦争で古い街並みが打ち壊される/窯元、問屋、陶器屋が数日で消えた/京焼コミュニティが南北に分断/天才陶工が京都に現れる/九州から磁器技術を盗んで成功した名陶工/似たものをほしがる気持ちが文化を振興させた/個性がないのが、京焼、清水焼の個性/職人と深い関係のある五条坂界隈/五条坂にある独特な「登り窯」/焼き具合を微妙にコントロール/登り窯が五条坂界隈のコミュこティ
    窯業を化学的に捉える/民藝コミュニティが十二段家本店でいまでも息づく
    02人と物を強烈に引き寄せる不思議な「都」
    京セラ、村田製作所と京焼の意外なつながり/産業用、武器用に役立つ京焼/日本の電化に大きな存在だった松風工業/技術力のあった五条坂の窯は生き残った/外部から優れたものを導入する京都人の執念/何度も改善して自分のものにする/京都文化を象徴する「京薩摩」/「SATSUMA」ブランドが定着/ブームはあっという間に去った
    03大きな試練をチャンスに変える
    苦境にさらされた京焼に光/「化学の眼と詩人の心」を持った陶芸家/京焼の伝統技法が電子に生きる/生き延びるために新しいものに食らい付く/究極の空洞化が京都に出現する/京薩摩は新しいビジネスモデルを導く/近代化への大きな分岐点とは/化学用陶磁器は順調に機械化が進む/陶磁器が碍子やコンデンサにつながる
    04流行りすたりを凌駕した京都に括目
    目を見張る芸術と産業の関係/自分なりの技法を追求する/茶飲み茶碗は果たして工芸品、それとも美術品?/"写しもの"が京焼の独自スタイル/京焼を過去のものにしないためには/京都は「断絶の歴史」に直面しつつある/
    市場がない京都の弱み/「大きくなったら、あかん」/昭和の名監督が愛した銀座の陶器店/「茶わん坂」というネーミングカ/製作から販売まで関わっている「東哉」/収支を合わせることが容易に/目が行き届かないと利益は出ない/百貨店から抜け出すのに三年/東京と京都では売れるものが違う/市場の二ーズにこたえる「粋」と「上品」/対面販売で信頼関係を構築する/店舗のうしろにはすべてがある
    第5章強烈な「人とのつながり」が
    パワーの源泉
    01「世界一」なら尊敬される
    圧倒的な専門性を持つ/システマティックにつながっていない大田区や東大阪市/意外な場所に求めていた会社があった/京仏具は伝統工芸の集合体
    よその産地の職人に丸投げすることも/議論の分かれる伝統産業の近代化
    02干渉し合って鍛える
    経営者としての振る舞い/「どこの所属」より「何者か」が間われる/幾重にもつながる人とのつながり/「ゲマインシャフト」がその本質/古臭いゲマインシャフトの街、京都/近所どうしが干渉し合う/地域がよくなればいい/人間が人間として鍛えられる街

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著者プロフィール

1956年東京都生まれ。80年、慶應義塾大学法学部を卒業し、野村證券に入社。その後、出版社勤務を経て、95年に経済政策シンクタンク「ハーベイロード・ジャパン」を設立。テレビ朝日系「サンデープロジェクト」「報道ステーション」などに長年にわたって出演。金融・経済誌への寄稿も多数。2015年、脳梗塞で倒れるが、リハビリを経て完全復帰。現在、BS11「タカラベnews&talk」に出演中。『京都企業の実力』『ローソンの告白』『農業が日本を救う』『中国ゴールドラッシュを狙え』など、著書多数。

「2020年 『冷徹と誠実 令和の平民宰相 菅義偉論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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