緑と赤

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 154
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408536729

作品紹介・あらすじ

どうして伝わらないのだろう。こんなに近くにいるのに。ふたつの国で悩み、立ち上がる人々の青春を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 緑と赤、それは韓国と日本のパスポートの色。

    パスポートの色の違いで、在日韓国人であることを意識せざるをえなくなった知英。
    K-POPアイドルファンの日本人、梓。
    友人に自分が在日だということを隠していた龍平。
    新大久保のヘイトスピーチを見て反対運動に参加しはじめた韓流好きな良美。
    日韓のデリケートな状態が、彼らの目を通して浮かび上がって来ます。

    著者の本は、何冊か読んでいますが、
    その時も感じた事は、在日という日本と韓国の間に存在する人々の、
    日本人とも、韓国人ともいえない苦悩でした。

    当時はそのことを、特に意識した記憶はないけれど、
    中学時代、在日のクラスメイトがいました。
    優しくて聡明で、同級生の誰より大人っぽくて…
    私はそんな彼女のことが大好きでした。

    両国の歴史に根強く残る負の感情。
    そう簡単には解決できない難しい問題なのだと思います。
    もちろん、過去を知ることは大切。
    でもそれを知らない世代だから、できることはあるはず。
    国と国の問題によって、友人関係が壊れてしまうのは哀しい。
    本書を読んで、そう感じました。

  • タイトルの「緑と赤」は韓国と日本のパスポートの色にちなんでいるんだろうけど、WEBマガジンなどで連載されていたときは「ここではない」というタイトルだったらしい。「ここではない」も何がここではないのか、内容とのシンクロ感がいまいちという感じがしてしまうけど少なくとも葛藤や焦燥のにおいがある。それに比べると「緑と赤」はだいぶわけわかんない程度にマイルド化されたなあという印象。
    いつのまにか表立ってはずいぶん下火になった感じがするけど、連載されていた時期は新大久保などでのヘイトスピーチが盛んだった頃だろう。それに触発されて書かれた作品なのではないかと思う。自分が在日韓国人であることに戸惑い、葛藤する知英(ちえ、ジヨン)を中心に、その友人や母親、カウンターとして活動する中年女性、知英といい仲になる韓国留学中の在日青年、日本に留学していたイケメン韓国人らを各編の主人公に据えてそれぞれのおかれた状況やそのなかでの葛藤が物語になっている。
    小説としてはちょっと典型に過ぎる感じがし、読み応えもサラッとしすぎな感じがするが、これは一方でヘイトスピーチへの問題提起や在日韓国・朝鮮人の人たちのおかれた立場・状況・思いを紹介するために小説という体裁をとっているだけのものと思えば、回りくどくなくその本題に触れられるともいえる。
    北関東の地方都市で離婚して出戻り肩身の狭い暮らしをしていた良美が、韓流スターにハマって訪れた新大久保でヘイトスピーチのデモに出会い、カウンターとして活動しはじめ東京に出てきて、左翼くずれの叔父に諭されながらもいつのまにか活動家としてそれなりの立場になっている(らしき)エピソードが一番心に留まった。

  • 在日韓国人であることをKポップ大好きな親友に話すことが出来ずにいる知英、大好きなKポップアイドルグループのメンバーにそっくりな恋人を追いかけて韓国へ行ったら思いもかけない日本人差別にあった梓、新大久保で見かけた大規模な嫌韓デモをきっかけに差別と戦うことを誓う中年女の良美などを取り巻く今の日本人と韓国人、そして在日韓国人の関係性や苦悩を描いたお話。

    先日読んだ「海を抱いて月に眠る」よりも心の動きが理解しやすいかな。日本人からも韓国人からも中途半端と疎まれるなんて、そこに悪意をぶつけられるなんて、いたたまれない気持ちになる。何故そこに悪意や嫌悪感が生まれるのか、国籍の少しの違いで人の優劣が決められるわけなんてないのに。

    かなり考えさせられる、今まで在日韓国人がそんな苦悩を抱えているなんて考えたこともなかった。私のなかでは差別のない人でありたい、佐藤のような人でありたい。

  • 在日のお話。全6章、様々な立場の人から物語が紡がれている。
    繊細な話をわかりやすく、でも繊細に描いていて人にも薦めたくなる一冊。

  • 在日4世の知英を中心に、在日コリアン、日本人、韓国人を描く連作小説。
    アイデンティティと周囲の反応に悩む知英。
    ラストは手放しにハッピーエンドなんて綺麗事ではなく、でも希望もあるもので良かった。
    ただ、「何人とか関係ない、お前はお前だ」と日本人から韓国ルーツの人に言うのは、心から親愛を込めたものだとしても私は疑問を覚える。
    他人が言うのは簡単だけど、本人にしたら関係ないわけないよね。
    もちろん、発される関係によってはそれが救いになることもあるだろうけど…。
    読み終わってからも色々と考えていける小説だった。
    また読みたい。

  • グアム旅行を前にパスポートを申請した知英の手元にあるのは緑色のハングル文字の書かれたパスポートだった。…

    在日韓国人の知英、韓流アイドル好きの梓、新大久保のカフェで働くジュンミン、ヘイトスピーチに嫌悪する良美、帰化し日本国籍を取得したものの韓国へ留学した龍平。
    それぞれの立場から見た日韓問題が描かれます。

    日本国籍を持ち日本で暮らし、韓国にあまり興味を持っていなかった自分には、今回この作品に出会うまで、身近な話ではなかったです。
    今まさに複雑になっている日韓関係を思うと、当事者達には更に思うことは多々あるのでしょう。

    フラットにものを見ることの出来る龍平の友達佐藤のような人達ばかりだったら問題になることは少ないのかもしれません。
    とは言っても、それぞれの国の歴史もあり、仕方のない部分もあるのかもとも思います。

    これを機に、アイデンティティをテーマにした作品を、もっと手にしてみたいと思いました。
    良い出会いでした。

  • 文学

  • わかりにくかった事を
    教えてもらったような・・・

  • 日韓をまたぐいろいろな立場の人たちの人間模様。

    こじれている。

    作者はそれぞれの心情をうまく描写するが、日本での舞台が新大久保にほぼ限定されるなど偏っていて、展開もそれにつられるように偏っていく。

    作者の意図なのだろうが。

    日韓の国際結婚で幸せに暮らしている人たちもたくさんいるだろうに。

  • パスポートの色
    緑と赤
    同じ日本で育っても、日本人と韓国人
    だだ、それだけの違いなのにね
    2016.03

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著者プロフィール

東京都生まれ。2012年「金江のおばさん」で第十一回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。著書に受賞作を含む『ハンサラン 愛する人びと』(文庫版『縁を結うひと』)『ひとかどの父へ』『緑と赤』『伴侶の偏差値』『ランチに行きましょう』『あいまい生活』『海を抱いて月に眠る』などがある。

「2022年 『わたしのアグアをさがして』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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