- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408537351
感想・レビュー・書評
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ミミズ人間として迫害されてきたノエルが自殺する前にと出会った女をレイプしようとするが目の前には常に2人の女性。さてどちらに手を出した?から別の事件が始まる白井節全開の連作短篇。乳児溺死事件に宴会での毒殺、旅館での連続密室殺人にサーカス団皆殺しとバラエティに富んだ事件がノエルの被害者が誰なのか?も絡めて解決されていく過程は恐ろしく精緻なんだけど、汚物は飛び散りまくるし探偵役は妹の復讐に燃える悪徳刑事に監禁虐待されているミミズ少女のマホマホだしで倫理の欠片は相変わらずなく眉ひそめまくり。しかしその鬼畜描写に色々仕込まれているので本当に油断出来ない。連作の軸になっている刑事ヒコボシの妹の事件の顛末も乖離する事なくきちんと嵌め込む腕は見事。毎回白井さんは人に薦めにくいといい続けているけど、ミステリとしては薦めたいジレンマが発生する。
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気になるタイトルだなぁと思っておりましてついに読みましたけども、これは好き嫌い分かれそうですね。なかなかな描写と非常識な世界観なので。ミステリーを忘れそうになりましたけど、このミステリー部分がアンバランスに緻密というか、すごい作家さんだなぁと思いました。
最後がまたなんとも、やるせない気持ちになります。 -
最強エログロなので耐性がない方にはオススメできませんが特殊設定と奇想天外な推理で面白かったです。
ラスト前でまさかの真実に言葉を失いました。
奇抜なタイトルは(ケルアック&バロウズ『そしてカバたちはタンクで茹で死に』から来てるとか? -
「ミミズ」という特異体質な人間がいる世界。
レイプ魔のノエルが選ぶ二択で、どちらを犯したかによって推理が開けてくるという、今まで見たことのない展開です。
「ミミズ」や「トカゲ」など、色々な性質をもつ登場人物や、彼らが持つ特異体質により可能なトリックなどを駆使し、パズルがばら撒かれています。
白井智之の小説を読む時は、大抵の推理を諦めて進めてしまっています。
とんでもない設定に頭が追いつかなくて。
なので、素直に、純粋に、エログロを楽しんでいると共に、パズルを拾い謎かけを解決していく様子を楽しんでいます。
タイトルは結構怖そうで引きますが、内容はコミカルな感じです。 -
レビューを眺めていると「エログロ」と評される事が多く、その頭で読み始めたから駄目なんだろうけど、別に言うほどエロでもグロでも無いかな…
まあただ、背徳性はまあ分かるかなぁ…
ミミズと言う特殊なセグメントを増やす事によるものと、性と生の軽視だけど、現在では道徳的にって事でも少し前の時代や少し未来の価値観ってこうなってても別に不思議じゃなく思えてくるね。
まあ何を書いてんのか自分でも今回は特にわかってないけど、特殊設定すぎるからアニメや漫画のヴィジュアルで見たかったなと。要は入り込みにくかったなって言うのが率直なのかな。
あと多重解決の要素も…
面白かったんだけど、やっぱ漫画かアニメで見たかったな -
なんとも刺激的なタイトルだが元ネタありとのこと(J・ケルアック&W・バロウズ『そしてカバたちはタンクで茹で死に』)。
こちらは未読なのでどの程度影響を受けているのか確認できず。
頭のキレる悪徳刑事が主人公の連作短編ミステリだが、とにかく癖が強い。
独特の世界設定に曲者だらけの登場人物たち。
まともな連中は早死にしてしまうので、結果ろくでなししか残らないという。
安直なネーミングや露骨な性描写は悪ノリが激しい筒井康隆のようでもあり、情動の裏に潜む論理性や口あんぐりな伏線回収は、狂った伊坂幸太郎のようでもあり。 -
ぶっ飛んだ設定、エログロ、暴力的な文章から織り成す独特な世界観は顕在。多重推理の綿密さや仕掛けの切れ味も素晴らしいです。不愉快さ極まりなく読む人を選びますが、作者の特徴が遺憾なく発揮された唯一無二の良作だと思います。
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白井智之さんの作品は東京結合人間以来、およそ5年ぶりにして2冊目。東京結合人間読了時は「とても秀逸だが、とてもグロい」と思っていた。なので、なかなか2冊目に手が出せないでいたが、インターネット上で、「東京結合人間が好きなら、お前の彼女は二階で茹で死にも好きになるはず」…みたいな投稿を見かけたもので、以来気になっていた。そんな中、先日偶然見かけたもので思わず手に取ってみた次第。
さて、前置きが長くなったが…
いやあ、グロいことグロいこと。
今作に関してはエログロで理不尽。汚い言葉を使わせてもらうなら、胸糞悪い。逆に言えば、この世界観を構築できる、その振り切り方はいっそ清々しいとさえ思った。
ただ、ミステリとしては極めてフェアで素直だった。推理できる材料は提示されているし、作中の推理以外は成立しないように、きちんと伏線を敷いて否定している。ミステリとしての公平さと伏線の鮮やかさが紡ぐ気持ち良さと、描写や世界観の気持ち悪さ。この2つが大きな落差を生じさせながらも矛盾なく共存できているのが興味深い。
読んでいる最中の私の感覚で言えば、描写がえげつないせいで、文章を追うことに精一杯となり、伏線に対して無警戒となっていた。それ故に謎解きの際の伏線回収は不意の一撃を何発も浴びせられるような、鮮烈な驚きの連続だった。多分描写の気持ち悪さで目を眩ませて、伏線の秀逸さを引き立てるっていう、そういう意図を持って書かれたんじゃないかなぁ、と勝手にそんな風に思った。
上記のようなことは、東京結合人間を読んだ時にも感じたが、本書は多重ミステリかつ連作短編であったため、緻密さがより一層際立っていた。各短編ごとに度肝を抜かれつつ、終盤になると全体の伏線も少しずつ明かされていって。通して飽きることはなく、むしろ加速しているかのような感覚で読み進められた。その完成度の高さには舌を巻くばかりである。
タイトルと言い、描写と言い、人に勧めにくい作品であることは間違いないし、実際勧めることもないだろうが、それでも本書は紛れもなく優れた作品であると思った。
こちらの本、以前から見かけては気になるタイトルだとは思っていたんですが、そういう感じ...
こちらの本、以前から見かけては気になるタイトルだとは思っていたんですが、そういう感じなんですね!白井智之さんの本は読んだことがないので、この本読んでみようかと思います!
白井さん、ミステリとしてはとても凝っていて新本格系が好きな方にはハマると思うのですがいかんせ...
白井さん、ミステリとしてはとても凝っていて新本格系が好きな方にはハマると思うのですがいかんせんグロいし汚いので駄目な人は駄目だと思うんです。
でも冒頭から世界感全開なので、始めの何ページか読んでいけそうだったら大丈夫かと。
面白く読んでもらえるといいのですが。