シャムのサムライ 山田長政

著者 :
  • 実業之日本社
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本棚登録 : 85
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (608ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537801

作品紹介・あらすじ

江戸時代、日本からタイへ渡った駕籠かきがいた。山田長政。異国で総督にまで上りつめた、謎に包まれた男の生涯を描く歴史長編!

感想・レビュー・書評

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  • 山田長政については、正直名前を聞いたことがあるだけで、全く知らなかった。しかしこの本は圧倒的に面白い。
    異国の地に放り込まれた日本人(武家に勤める商人出身)の主人公が、様々なきっかけにより、タイの王様に認められ出世し、その後出世し過ぎたが為に、後継者争いのど真ん中に巻き込まれ、最後は自ら独立国を作ろうとする、途方もないスケールの実話ベースの物語だ。600ページ以上あるこの大作をあっという間に読み終えた。
    読み終えて感じたことは、現代社会との多くの共通点である。山田長政は、今よく聞かれる「アンラーン」をして、猛烈な勢いで出世するものの、最後はアンラーンできずにこの世を去ってしまう。彼はダイバーシティを尊重してのし上がるものの、途中から現地の人の心を理解しきれずに世を去る。そして資源のない国、日本との貿易。これが彼の資金のバックボーンになるわけだが、ここも半導体不足、エネルギーなど諸々足りていない昨今の世の中と考えさせられるものがある。注意したい点は、商業取引をしているからといって、戦争が起きないわけではないことを、歴史と当時のタイの実情が教えてくれる。そして、徳川が世に平和をもたらし、溢れ出た浪人の今後の人生。現代の高齢化社会と非成長社会の日本と通じるものがある。生産性の観点だけでなく、どういうふうに生きがいのある人生を送ってもらえるのか?1600年代からの宿題は、まだ未解決のようだ。
    いずれにせよ、当時のタイやカンボジアに日本人がいたこと、ましてや浪人が軍人として雇われていたこと、大阪の陣の勝利の裏側に、タイで活躍した日本人商人がいたこと、さらにはその中で日本人町の頭領がタイの王様に叙勲されていたこと、象の上にまたがって活躍して、独立国まで作ろうとしていたこと、その生き様から現代の日本人が学べることが多いのではないだろうか?
    是非しっかりした予算のもと、映像化して欲しい作品だった。
    何度もタイに出張に言っているのに、知らないことだらけで恥ずかしい反面、インスピレーションを受けた超大作であった。読んでお腹いっぱい。

  • 日本で犯した事件の為に日本を追われタイに裸一貫で辿り着いた山田長政の一代記。

    山田長政なる人物をまったく知らず'籠かきからタイの英雄にまでなった男'という事で気になり読んでみた。
    タイの人達や役職名の名前の長さにびっくりしながらも意外に頭に入り(個人的になんか音が良い気がする)知らない事だらけのストーリーでも山田長政に共感しながら詰まる事なく楽しめました。
    幡大介さんは初めて読みましたが、なかなか良かった。
    そしてタイ王朝やタイ人の思想なども少し勉強になり記憶に残る1冊になりました。

    次は騎虎の将太田道灌を買ってあるので読んでみようと思う。

    2022/01

  • 主君を守るため江戸城内で禁じられている抜刀をしてしまった大久保忠佐の駕籠かき山田仁左衛門は出奔しシャムに逃亡する。シャムで繰り広げられる山田長政の立身出世の物語。

  • 約600ページのボリュームだけど面白く読めた。エンターテイメント的なテイストが強めながらも大きな流れは史実もある程度踏まえているのだろうと思う(Wikipediaで少し眺めた限りですが)。アユタヤ、山田長政、日本人町というフレーズはタイに行った時にふーんと聞いていた程度だったけど、戦国時代の終わりに南洋に逃れた武士や貿易で一儲けした商人たち、それをとりまくタイ王朝の権謀作術やヨーロッパの国々の動き、徳川将軍家の貿易奨励から鎖国への動きなどダイナミックさとエキゾチックさが心地よい。

  • 分厚いのに、飽きずに一気に読めた。駕籠かきから外国人の大臣になる、成り上がり物語。後継ぎ問題の難しさを痛感した。

  • 余りにも主君に忠実すぎたのか?

  • 政争に巻き込まれて以降は、何とも言えない気持ちになりながら読みました。頑張ってるのに空回りする、という。

    ライと長政の忠義について意見を戦わせるやりとりは面白かった。

  • 実在の人物(山田長政)で、シャムでの活躍ということで、なかなかに興味深い話でした。

    徳川家光の時代のようでしたが、その頃のシャムにたくさんの日本人がいて、「豊臣だ、徳川だ」といって日本人同士で戦ったり、その土地の戦いに巻き込まれたり、奴隷となったり、世界的にも、戦国時代だったのかなと思いました。

    読んでいくうちに、シーシン親王は本当に悪い奴だったのか?ライの方が悪じゃないの?そっちに付くのが世の中の流れなの?
    確かに、正義が勝つばかりではないのは分かりますが、生きていくのは大変だなと、悲しくなりました。

    色んな人の思惑があるので、自分が正しいと思ってやってきたことも、時代が変わってくると、本当に正しかったのか、何が正しいのか、分からなくなってくるのは辛いですね。
    なるべく後悔しない道を選んでいきたいと思いました。

  • 2021.10 分厚い小説だけれども今ひとつ浅かったかな。

  • 名前は知っていても詳しく知ることのなかった山田長政について、当時の時代背景とともに知ることができてよかった。おそらく史料が多くないところから作者による研究と推察に基づいて書かれたのだと思うけど、主人公やその周りの人物の魅力、背景についての程よい説明、文体の読みやすさなどもよかった。

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著者プロフィール

一九六八年、栃木県生まれ。武蔵野美術大学造形学部卒業。テレビ局嘱託職員を経た後、CM製作会社勤務。イラストレーターとして広告に挿絵などを描いていたが、一九九五年、フリーライターに転じ、実録物など、数多くの媒体で活躍。二〇〇八年「天下御免の信十郎」シリーズで、時代小説作家として文壇デビュー。人気を博す。

「2021年 『騎虎の将 太田道灌下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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