志高く 孫正義正伝 新版 (実業之日本社文庫)

著者 :
  • 実業之日本社
4.12
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本棚登録 : 692
感想 : 57
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408552156

作品紹介・あらすじ

裸一貫から立ち上がり、いまや世界を見据える事業家となった孫正義。その原点となる少年時代から、アメリカでの青春期、ソフトバンクの創業、インターネットや携帯電話事業への進出、アリババの上場さらにはロボット事業に至るまで-波乱に満ちたその半生を、四半世紀にわたって孫を密着取材してきた作家・井上篤夫が熱く描く。勇気と活力が湧いてくる決定版評伝!

感想・レビュー・書評

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  • # 書評☆4: 志高く 孫正義正伝 新版 | 日本を代表する事業家はやはり天才的で凡人には参考にならない

    ## 概要
    - 書名: 志高く 孫正義正伝 新版
    - 副題:
    - 著者: 井上 篤夫
    - ISBN: 9784408552156
    - 出版: 2015-02-15
    - 読了: 2020-10-03 Sat
    - 評価: ☆4
    - URL: book.senooken.jp/post/2020/10/04/

    ## 評価
    与沢翼に興味があり彼の著書を読んでいると,孫正義に言及することが度々あった。日本を代表する事業家となった孫正義だが,彼の経緯については知らなかったので,教養として彼の自伝を読んだ。

    本書は孫正義が生まれてから,事業家として成功するまでが事細かに書かれた自伝となっている。関係者への緻密な取材に基づいて書かれており,かなり細かく書かれている。

    全体の構成は時代ごとに以下の3部に分かれていた。

    1. 学生時代
    2. 起業後
    3. 事業拡大

    3の事業拡大の部分は話が若干飛び飛びになっていた。

    高校1年生でアメリカの高校に留学して,そこから飛び級で名門のバークレー校に入学。在学中に飲食のビジネスや,発明のビジネスで起業。大学卒業後に本で日本ソフトバンクを起業。最初はソフトの商社から始まり,PC関係の雑誌,そこからソフト事業から一気に話が広がり,通信キャリアやインターネットのビジネスに広がっていった。

    ホリエモンの自叙伝の「[ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく](https://book.senooken.jp/post/2019/12/28/)」や与沢翼の「[スーパー フリーエージェント スタイル](https://book.senooken.jp/post/2020/07/28/)」を比べて,似ているところを感じた。

    学生時代にしっかり勉強して,いい大学に入学して,チャンスを掴んでいる。また,幼少時代に転機となるできごと,身の回りに助けとなる人物がいたこと,このあたりが共通点に感じた。

    ある程度レベルの高いところに行かないと,飛躍できないという点から,学生時代の勉強の重要性を感じられる。

    読み応えのある内容で読了に2週間ほどかかってしまった。

    ## 引用
    > ### p. 16: 序 正夢
    > 孫正義は父・三憲 (みつのり)、母・李玉子の四人の息子の次男として、昭和32 (1957) 年8月11日、佐賀県鳥栖市五軒道路無番地で生まれた。
    >
    > 正義は在日韓国人三世 (現在は日本に帰化) である。
    >
    > 孫家は、もともと中国から韓国に渡ったとされる。祖父の時代に、韓国の大邸 (テグ) から吸収に移り住んだという。
    >
    > 系図によれば、孫家は代々、武将や学者が多かった。
    >
    > 祖父、孫鐘慶 (ソンゾンギュン) は、築豊炭田で坑夫として働き、生計を立てた。
    >
    > 正義の父、三憲は、魚の行商から養豚業、ときには闇の焼酎作りにも手を出し、なりふりかまわず働いた。やがてパチンコ屋、飲食業や不動産業などで経済的な基盤を築いた。

    孫正義の家柄が書かれていた。

    > ### p. 39: 3 人生の衝撃

    こちらでは現在の妻である大野優美との出会いが書かれていた。1974年2月に高校1年生だった孫正義がアメリカの英語学校 (ELS) に入学して2-3週間で出会ったらしい。孫正義の2歳年上で大学生で結婚するまでここから一緒だった。

    > ### p. 52: ユダヤの商法

    こちらではアメリカに来る前から事業をやりたいと思っていたというエピソードとして,日本マクドナルド社長・藤田田著の『ユダヤの商法』を読んで感銘を受けて,直接面会を申し込んだ話が書かれていた。

    > ### p. 62: 孫の発明のプロセス

    孫正義の逸話として有名な学生時代の5分間の発明の中で気づいた3の発明プロセスについて書かれていた。

    1. 問題解決法
    2. 水平思考: 逆転の発想
    3. 組み合わせ法: 既存のものを組み合わせる

    特に3番目の組み合わせ法により,大量の発明を実現している。

    > ### p. 67: 音声機能付き電子翻訳機

    組み合わせ法をコンピューターを使って試した。パーツ毎に新しさ,大きさ,などの要素を40ほど組み込んで何百万通りもの組み合わせから重みをかけ合わせたものを点数順に並べて検討していく。

    その中で,250絞り込んで「音声機能付き電子翻訳機」というコンセプトを導き出した。そして,これを自分では実現できないとして,所属していたバークレー校にいたその分野の権威である大学教授に持ち寄って事業化した。

    > ### p. 96: 結婚
    こちらでは孫の結婚のエピソードが書かれていた。孫21歳,優美23歳の学生結婚だった。

    > ### p. 122: あこがれ
    学生時代の起業での成功エピソードが書かれた後に,幼少期の細かいエピソードが書かれている。

    その中で,中学三年生でのエピソードが印象的だった。中学三年生に,北九州の中学から福岡の名門中学に転校すると,それまでオール5だった成績がオール2になった。これに危機感を持った孫は全校1位の級友に相談した。そこで,塾への入学を勧められた。

    しかし,ここで入塾を最初拒絶された。これを級友の母にお願いしてもらい,入塾を許可された。ここで入塾できていなければ,その後の成功はなかった可能性が高かった。

    > ### p. 126: 竜馬がゆく
    こちらでは孫正義の愛読書である竜馬がゆくについて書かれていた。孫は戦国武将に憧れており,織田信長や坂本龍馬に憧れを持っていた。

    > ### p. 212: 21 荒ぶる魂の叫び
    日本で創業した日本ソフトバンクの黎明期に孫正義が難病にかかっていた話が書かれていた。

    結局,奇跡的に新しい治療法で肝臓の病気を治すことができたそうだ。

    > ### p. 288: ソフトバンク
    日本ソフトバンクとノベルの共同出資でノベル日本法人が設立された1990年の春に日本ソフトバンクからソフトバンクに社名変更された。

    ## 結論
    日本を代表する事業家の孫正義の経歴が事細かに書かれており,どういう経緯をたどってきているのかがわかった。

    ただ,わかって思ったのは,やはり自分では再現するのは無理だろうということだ。自分の過去を振り返っても,このような大志を抱くことはなかった。家に閉じこもってゲームするくらいで,他にやりたいことも特になかった。

    あとがきで社外取締役の柳井正が読むだけじゃなくて,行動しろと書いてある。勿論わかるのだが,具体的に凡人に何ができるのか?いうのとやるのとでは全然違う。

    天才的なものを持って生まれて,身の回りに助けてくれる人がいたから成功できたという面が強いと思った。

    あくまで教養として,偉人のエピソードを知識として知るに留めるくらいしかできないと思った。孫正義が読んでいた「ユダヤの商法」と「竜馬がゆく」は読んでみたいと思った。

  • 孫正義氏がどれほど凄いかが分かる一冊。タイトルの「志高く」は、これ以上ないほど内容を簡潔に表現している。個人的に、孫氏は携帯電話のソフトバンク代表の方という程度の認識だった。だが本書を読み、それは失礼極まりない大変な誤りであることに気付いた。若い頃から「努力」と「挑戦」を擬人化したような生き方をされており、その行動力には脱帽する。読みながら目頭が熱くなる箇所がいくつもあった。本書を執筆された井上氏の取材力は素晴らしいと思う。ビルゲイツ氏をはじめとする登場人物もさることながら、解説は柳井正氏という、非常に贅沢な内容に仕上がっている。

  • 孫正義の青年期が描かれている前半部分がワクワクさせる。

  • 現役で活躍している偉人伝を書くときに、その対象人物からの評価を気にしてついつい過剰描写(ヨイショ)に陥りがちだが本書はまさにその典型となっている。孫正義の凄さは、変な脚色無しでも十分伝わるのに、著者の過剰な感情移入がかえってその偉業を歪める。
    ソフトバンクにおける孫正義のポジションはプレイングマネージャー兼総帥、各事業部毎に才能ある人材を配置育成し、アメとムチで最大限のやる気とパフォーマンスを発揮させながら、自らは最低でも10年先を読みながら指揮を振るう。もちろん、彼の未来予想がすべて当たるわけもなく、大金を投入するも早期撤退という事業も多々あれば、三顧の礼でスカウトした人材が孫正義よりも一枚上手で会社に貢献する前に濡れ手で粟の退職金で去られたこともある。その辺の負の実績も公平にさらけ出した方が、孫正義の器の大きさを実感出来るのに残念。また、私を含め読者最大の関心である、高校生で単身アメリカへ渡った行動力と高校生離れした発想力はどこから来たのかという点だが、「孫も中学時代からビジネスの方法を父から学び(P418)」と素っ気ない。孫正義の原点でもあるこの辺はもう少し掘り下げるべきでしょう。
    そして今後は、彼のライフワークでありながら現在鳴りをひそめている人型ロボットペッパー君の再復活案も楽しみに待ちたいと思います。

    • はなさん
      感想が的確で引き込まれました。
      感想が的確で引き込まれました。
      2024/02/03
    • mysterymanboさん
      過分なコメントありがとうございます。
      過分なコメントありがとうございます。
      2024/02/03
  • 働く意味を再考し、夢の実現のために志を持つ必要性を考えさせられる作品!
    孫正義が世界の情報社会を変えるという、大義を成すことが出来た理由が少し分かった。孫さんが行動していた、幼少期から高い志を持ち、多くの人を巻き込むことで、同じ志の同士を増やしていく。このことは、業種や会社問わず活かせることだが、なかなか実現させることは難しい。モチベーションを上げるきっかになった!

  • どんな苦境も圧倒的なプレゼン力で跳ね返し、明るい未来を描く孫正義。その原点ともいえる幼少期から米国留学、日本ソフトバンク企業までのストーリーに胸が熱くなります。情報革命で世界の人々を幸せにしたい。そんな思いで、排他的な出版業に飛び込んだり、覇権的な欲望で規格統一を狙うアスキーに対して徹底的に対抗したり、NTTに通信業で挑んだりするエピソード。孫正義のまさしく「正義」と貫き通す志高い一人のビジネスパーソンとしての姿をありありと映し出す。覚悟と信念、そんな言葉を心に深く刻む小説だった。
    (追伸)稲盛和夫との商談は、両者ともに現役であることもあり、リアルで緊張感があり、手に汗握る描写だった。

  • ソフトバンク創始者の孫正義の、幼少期から出版当時(2010年)までの軌跡。後半はソフトバンクに降りかかる困難やその対処法が淡々と綴られていたが、前半の躍動感はすごい。起業家となるまでの孫の学業への邁進ぶり、来るべき情報化社会に向けてビル・ゲイツら世界最高峰最先端の精鋭たちとの親交、失敗と成功を繰り返しながらトップに躍り出てくるまでの様子が、ドラマチックに描かれている。何事も自分次第!と、やる気を鼓舞される。

  • 孫さんのことはもちろん知ってはいたが、何をして来た方なのかは正直言って知らなかった。
    その孫さんの歴史を追っていく内容。孫さんの考え方や行動力、何より世の中を変えてやる!っていう志が凄い。

    ただ、1番グッと来たのは本の内容ではなく、ユニクロの柳井さんのあとがきの一文でした。

    これを読んで感動したなら【行動】しないと意味がないです。

    というメッセージ。

    この手の本は読むが、感動した!俺も前向きに生きる!なんて思うけど、そのまま時間がだけが過ぎていく。行動まではいかない。
    柳井さんのこの一文は私に響きました。

    何か小さな一歩を歩み出せたら、この本を読んだ本当の価値があるのではないでしょうか。

    考えさせられました。

  • ライターがうまく書いているから多少の脚色はあると思うけど、それにしても生き様がかっこよすぎる。。

    あれほど大胆な生き方をまねすることはできないけど、人生で何かを成し遂げてやろうっていう気概を持って生きることの大変さとかっこよさとを、改めて感じた。

    大学生活で色んなことに触れて、経験を稼いで、世界観を広げ、いずれはこれだと思えるものを見つけたい。

  • 孫正義の圧倒的すぎる逸話と考え方、信念を目の当たりにして、しばしば読む手を止めてしまった。あまりにも刺激が強く、ぼく自身が自信を失ってしまうこともあった。

    特に、久留米附設を数ヶ月で中退してアメリカに渡り、1ヶ月で飛び級して、その直後にアメリカの大学検定を受けて、UC Barklyに合格。在学中にはアメリカで事業を立ち上げ、うまくいく。すごい。

    ソフトバンクは良くも悪くも、時代時代に合わせて様々な事業をやってきた。この点は、例えば楽天やユニクロといった企業とは大きく異なる。

    また人生の要所要所で様々な勝負を仕掛けて、やりきってきたところは本当に凄まじく、勉強になる。

    名言はいくつもある。

    「300年先からいまを見るんだ。自分の考える時代はきっとくる。」

    「積み上げ方式の人生なんてつまらない」

    一方で孫正義ですら、最初はソフトウェアの販売で、地道に小さな売上を積み重ねていった。

    そして様々な失敗をしたこともあるが、すぐに失敗として諦めるのではなく、徹底するなかで成功をおさめていくことができた。

    孫正義に会う人会う人、特にビジネスの交渉をした人は、「不思議な魅力がある」と口々に言う。

    印象的なのは、その時々において、時代をつくる勢いのある企業のトップとパートナーを組んで、道を切り開いてきたことだ。その提携関係も、ただの小金稼ぎというよりは、新しい事業を展開するというwin winな関係で、ちゃんと相手にとって本当に魅力的なパートナーシップを提案して、提携して、ものにしていく様がすごい。

    そしてソフトバンクが2兆円でボーダフォンを買収すると決めたときの決断と、買収方法はすごい。金融にも長けており、ソフトバンクがリスクを追わずに、利益を得ることのできる体制を作り上げている。またソフトバンクの携帯電話事業展開に伴って、ファン獲得とコンテンツ獲得のために球団(ホークス)を買収するというその発想と視点にも、ただただ驚く。

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著者プロフィール

井上篤夫 いのうえあつお
作家、翻訳家。早稲田大学在学中から執筆活動を始める。欧米を中心に、時の人物を深く掘り下げた評伝を数多く出版、翻訳の分野でも活躍している。
1987年、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長、CNNのテッド・ターナー会長などをインタビュー『若きアメリカ企業の勝利者―12人からの直言』を発表した。1990年から3年間ボストンに住んで『ボストンに友情あり』を著した。
代表的な著作にベストセラー『志高く 孫正義正伝 新版』(実業之日本社文庫)、本邦初の評伝『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』(集英社新書)、『ポリティカル・セックスアピール 米大統領とハリウッド』(新潮新書)がある。
2011年、NHK-BSハイビジョン「永遠のヒロイン」で放映されたヴィヴィアン・リー、マレーネ・ディートリッヒ、キャサリン・ヘプバーン、イングリッド・バーグマンの4大女優の番組内容に加筆して『永遠のヒロイン~ハリウッド大女優たちの愛と素顔』(NHK出版)を著す。
翻訳に『ミシェル・オバマ ~愛が生んだ奇跡~』(アートデイズ。訳・解説)。マリリン・モンロー没後50年、遺稿集『マリリン・モンロー 魂のかけら』(青幻舎。訳・解説)。ネイティヴ・アメリカンの生き方を描いた詩『今日という日は贈りもの』(角川文庫)他多数。
配信サイト「アップストア」で最初にダウンロード数が1万を超えたのは、『志高く 孫正義正伝』(実業之日本社)である。英語版電子書籍、Aiming High - A Biography of Masayoshi Son [iBooks Edition](You Teacher)をリリース。
2017年には、児童書『とことん 孫正義物語』(フレーベル館)を出版した。

http://www.ainoue.com

「2018年 『マタ・ハリ伝<電子版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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