サルトル全集 第35巻 聖ジュネ 2

著者 : 白井浩司 ジャン・ポール・サルトル

• 人文書院 (1983年8月1日発売)

感想・レビュー・書評

[hitomimimimimiさんの感想 · 2014年10月22日]

下巻になると訳者が変わり、またサルトルの思想に馴染んだ為か上巻ほどてこずらずに読めた。が、ここで概要を提示するには力足らず。その複雑難解さ故にこそ面白く、ときめきを覚えずにいられない。ジュネのメタモルフォーゼをまるでイリュージョンのように目紛るしく展開するサルトルの思考と言述に、イマジネーション刺激され、現前する世界をも別の表情に然らしめる。ジュネの蒙る汚辱の世界（悪への意欲）は美へと蒸留され、壮麗化する。サルトルの錬金術に目を見張りながら読み進めると、最終章『ジュネの善用のための祈り』でサルトルの未来への実直な思いに行き当たる。感に堪えない。

「現代人が誰しもとるべき決意とは、現在只中のこの歴史の瞬間に身をおいて、一切の状況に対抗して、敗者の頑張りをもってこの歴史の一瞬を意欲することだ」