ダーウィン、仏教、神: 近代日本の進化論と宗教

制作 : 碧海 寿広 
  • 人文書院
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409041147

作品紹介・あらすじ

日本人は進化論にどう向き合ったか。新たな思想史の誕生


明治の幕開けとともにもたらされたダーウィンの進化論。これまでの研究では、日本人は進化論を抵抗なく受け入れたとされてきた。しかしそれは全くの神話である。その受容の歴史には、仏教、神道、キリスト教、哲学、マルクス主義、国体論などあらゆる思想やイデオロギーとの衝突や交渉がみられた。本書は明治から現代まで幅広い言説を博捜し、近代日本の思想を進化論への反応を軸にダイナミックに描き出す。

「進化論は、日本に無批判的かつ無抵抗に受容されたのでは、決してない。進化論という光のもとで自然界を再考し、また自然・人類・社会・科学・聖なるもの・神のあいだの関係を再検討するための、知識の流用・翻訳・考察・討議が、日本では一世紀にわたり行われてきたのだ。進化論への宗教的な態度について議論する場合、受容と拒絶、どちらかの痕跡を探すような見方を超えたところに行くべきだ。」(本書より)

〇目次
第一章 明治期の日本における進化論の宗教的伝播
第二章 進化、個人、国体
第三章 ダーウィン以後の仏法――明治仏教と進化論の抱擁
第四章 ユートピアの約束――社会主義ダーウィニズムと革命的ユートピア主義
第五章 「進化論は近代の迷信です」
第六章 観音による久遠の抱擁

感想・レビュー・書評

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  •  著者は東北大学大学院国際文化研究科准教授.専門は日本近代思想史・宗教史.

     訳者は武蔵野大学文学部准教授.専門は宗教学,近代仏教.


     翻訳書とは思えない,こなれた日本語になっているので楽に読めるが,論旨を理解しきるには相当な知識が必要と思われる.以下はごく表面的なまとめ.


     日本における進化論の受容は,西欧世界とは異なっている.
     道徳は優れて社会的である.道徳も普遍的ではありえず,社会状況に依存する.
     日本においても,進化論が政治的・宗教的に利用あるいは拒否される時期が戦後期まで続いた.


     思いがけない人が,思いがけないことを書いているらしいので,その部分を引用.『進化唱来三十年,一声能破万夫眠,家禽淘汰鑑人力,生物起源帰自然,埋骨帝王廟前地,留名学界史中篇,請君長臥九泉下,誰怪偉功千載伝.』 井上円了

     なお,井上円了は1878年(明治11年)東本願寺の国内留学生に選ばれ上京し,東京大学予備門に入学する.清沢満之は1882年(明治15年)大学予備門に入学.南方熊楠は1884年(明治17年)大学予備門(現・東京大学)に入学している.


    2021.07

  • 東2法経図・6F開架:162.1A/G55d//K

  • 著者:クリントン ゴダール |
    訳者:碧海寿広
    4,500円+税
    出版年月日:2020/12/20
    9784409041147
    4-6 400ページ
    未刊・予約受付中


    日本人は進化論にどう向き合ったか
    新たな思想史の誕生

    明治の幕開けとともにもたらされたダーウィンの進化論。これまでの研究では、日本人は進化論を抵抗なく受け入れたとされてきた。しかしそれは全くの神話である。その受容の歴史には、仏教、神道、キリスト教、哲学、マルクス主義、国体論などあらゆる思想やイデオロギーとの衝突や交渉がみられた。本書は明治から現代まで幅広い言説を博捜し、近代日本の思想を進化論への反応を軸にダイナミックに描き出す。

    「進化論は、日本に無批判的かつ無抵抗に受容されたのでは、決してない。進化論という光のもとで自然界を再考し、また自然・人類・社会・科学・聖なるもの・神のあいだの関係を再検討するための、知識の流用・翻訳・考察・討議が、日本では一世紀にわたり行われてきたのだ。進化論への宗教的な態度について議論する場合、受容と拒絶、どちらかの痕跡を探すような見方を超えたところに行くべきだ。」(本書より)
    http://www.jimbunshoin.co.jp/smp/book/b548280.html


    【目次】
    日本語版への序文

    序論
    日本における進化論と宗教を再考する
    本書の概要

    第一章 明治期の日本における進化論の宗教的伝播
    モース以前の日本の進化論
    反キリスト教としての進化論――エドワード・S・モースとアーネスト・フェノロサ
    神とダーウィンの間、日本と西洋の間――キリスト教徒による進化論の伝播

    第二章 進化、個人、国体
    個をめぐる問題
    国体イデオロギーの興隆
    神道と進化
    倫理と道徳
    井上哲次郎
    スペンサー主義の崩壊
    結論

    第三章 ダーウィン以後の仏法
    ――明治仏教と進化論の抱擁
    仏教者による進化論の抱擁
    唯物論――「コレラ病よりも害毒」
    進歩と退化
    輪廻転生
    仏教者の進化倫理学
    生物学のなかの仏教
    南方熊楠の仏教的エコロジー
    丘浅次郎――進化の無常と矛盾
    結論

    第四章 ユートピアの約束
    ――社会主義ダーウィニズムと革命的ユートピア主義
    進化論の左旋回
    社会主義ダーウィニズムに対する最初の宗教的バックラッシュ
    アナーキストのダーウィニズム
    宗教的進化のユートピア主義
    北一輝――「ブッダとマリアが恋する」時
    宮沢賢治と石原莞爾
    賀川豊彦と進化の宗教
    結論

    第五章 「進化論は近代の迷信です」
    マルクス主義、生物学、無神論
    進化論に対する宗教的バックラッシュ
    神道と進化の和解
    キリスト教からの応答
    天皇の生物学的な概念化
    進化論と戦時下日本のイデオロギー
    「近代の超克」
    結論

    第六章 観音による久遠の抱擁
    科学と民主主義
    「地球も含めた全宇宙は、生命の実体です」
    今西錦司
    西田幾多郎の生物学の哲学
    生き物の世界
    今西の遺産

    結論

    謝辞
    訳者あとがき
    人名索引

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著者プロフィール

クリントン・ゴダール G. Clinton Godart/1976年オランダ生まれ。大阪外国語大学(現:大阪大学)言語社会研究科日本語日本文化修士課程修了、シカゴ大学大学院歴史学専攻博士課程修了。南カリフォルニア大学歴史学部助教、北海道大学現代日本学プログラム講師を経て、現在、東北大学大学院国際文化研究科准教授。専攻は日本近代思想史・宗教史。著書に「日蓮主義と日本主義との衝突―日中戦争期における東亜連盟運動」、石井公成監修、近藤俊太郎、名和達宣編『近代の仏教思想と日本主義』(法藏館)、“Nichirenism, Utopianism, and Modernity: Rethinking Ishiwara Kanji’s East-Asia League Movement,” Japanese Journal for Religious Studies, 42/2、など。

「2020年 『ダーウィン、仏教、神』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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