- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784409230220
感想・レビュー・書評
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砕けたガラスが輝くさまは美しい。だが、それが暴動のあとと
なると話は別だ。
1938年11月9日夜から10日未明にかけて、ドイツ各地で
ユダヤ人の商店や住宅、シナゴーグが襲撃される事件が
起こった。
クリスタル・ナハト。水晶の夜とのどことなくロマンチックな
呼称とは裏腹に、この事件はナチス政権下でのユダヤ人
差別の大転換点となった。
本書はドイツがまだ東西に分裂していた頃、両ドイツの公文書
から資料を探し出し、この暴動が民衆の自発的な行動の結果
だったかのか、官制暴動だったのかを検証する。
ホロコーストやナチスに関しての出版物は多いが、水晶の夜に
関しては日本で手に入る作品が少ないんだよね。探しまくって
本書に行き当たったのだが、資料の寄せ集めの感は否めない。
それでも、事件のきっかけとなったフランスのドイツ大使館員
暗殺に関しては犯人であるポーランド系ユダヤ人の青年との
同性愛関係の疑いは非常に濃厚だ。
暗殺されたひとりのアーリア人の命と引き換えに、多くのユダヤ
人がその報いを受けるなんて考えは狂っているとしか言えない。
しかも、政権内部で行われた会議の資料からは、これをきっかけ
に国内のユダヤ人から何もかも奪おうとする権力者たちの姿が
垣間見られる。
自発的暴動か、官制暴動か。著者は一切の判断を下しては
いないが、官制暴動の疑いが強い。狂信者たちが国を治める
と何が起こるのか。ぞっとする。
ただ、それは為政者だけではなく市井の人々にも言えること
なんだよね。何かしらのきっかけがあれば、日ごろの不満や
ストレスのはけ口として攻撃衝動が爆発する。
それは近年の日本で、頭のねじがちょっとおかしい人たちが
行っているヘイトスピーチにも当てはまるんじゃないかと思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示