大江健三郎とその時代: 「戦後」に選ばれた小説家

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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784409520796

作品紹介・あらすじ

文学と時代の相克

生誕から現在まで、戦後文学の頂点を極めた作家の全貌に迫る

四国の山深い地に生まれ、上京後まもなく東大生作家としてデビュー、23歳で芥川賞を受賞、1994年にはノーベル文学賞受賞。華々しい活躍とともに時代の寵児となった小説家は、核や憲法九条など戦争と平和をめぐる問題について社会的発言を続けた知識人であり、オピニオンリーダーでもあった。本書では、半世紀以上にわたり書き継がれた数々の作品と発言を隅々まで渉猟し、相互に影響し合った作品と時代の関係を丹念に解き明かしていく。気鋭の戦後史研究者が挑む、画期的評伝。

「本書は、大江健三郎の文学と発言とを辿りながら、戦後日本社会を論じていくが、大江に注目するのは、単に彼が「有名人」だからではない。そうではなくて、大江自身が、近代日本をめぐる思想史的関心を持続させてきたからこそ、彼を軸にすることができるのだ。より具体的に述べると、「共同体」と「超越性」という二つの概念を意識しながら、大江の試みを戦後史のなかに置き直していく。その上で、大江健三郎を主人公にして戦後日本社会の諸問題や論点とその変化を記述したい。」(本書より)

感想・レビュー・書評

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  •  やはり六十年代の時代のうねりの中の大江の姿が興味深い。

  • 気鋭の文学研究者による大江健三郎の評伝である。一見、大江の評伝などは既に類書だらけではないか、という疑問を持ったが、実は2000年以降、大江自身が「レイト・ワークス」と銘打った数々の作品も含めて一気通貫でまとめあげた評伝はそこまでないのだという。確かに大江の評伝として、そもそも「レイト・ワークス」にまで踏み込んだものとなるとかなり限定されしまうのだろう。

    本書では大江の文学を「共同体」と「超越性」という2つの概念を軸にしながら、どのように戦後民主主義社会で彼が自作の小説世界を深化させてきたかということがテーマになっている。特に前者のキーワードの「共同体」というのは、確かに大江の様々な作品を振り返ったときに共通的に描かれているものであるということに気付く。私自身が大江の作品から一つ選ぶとしたら初期の『芽むしり子撃ち』であるが、あの閉鎖的なコミューンの持つグロテスクさは読んで十数年が経つ今も生々しい読後感を保っている。

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著者プロフィール

山本 昭宏(やまもと・あきひろ) 1984年、奈良県生れ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。現在、神戸市外国語大学総合文化コース准教授。著書に『核エネルギー言説の戦後史1945~1960 「被爆の記憶」と「原子力の夢」』(人文書院、2012年)、『核と日本人 ヒロシマ・ゴジラ・フクシマ』(中公新書、2015年)、『教養としての戦後〈平和論〉』(イースト・プレス、2016年)、共編著に『希望の歴史学 藤間生大著作論集』(ぺりかん社、2018年)、訳書にスペンサー・R・ワート『核の恐怖全史』(人文書院、2017年)がある。

「2019年 『大江健三郎とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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