「ユマニチュード」という革命: なぜ、このケアで認知症高齢者と心が通うのか

  • 誠文堂新光社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784416616819

作品紹介・あらすじ

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「介護する側もされる側も、
どれほど多くの人々の心に
希望の光が灯ることでしょう」

――エッセイスト 阿川佐和子

(「週刊文春」2016年8月4日号
より)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

―「優しい心」は「優れた技法」に宿る。そしてそれは誰もが体得できるものである。―

寝たままの姿勢で行う清拭は、「寝たきり」を助長してしまっていないだろうか?
入浴を嫌がるのは、本当にその人自身に問題があるのだろうか?
徘徊は転倒の危険性があるから、身体拘束や向精神薬の投与はやむを得ないのか?

私たちが良かれと思って行っているケアは、高齢者の健康維持を害してしまっているのかもしれません。
人が人に寄り添う病院やホームなどのケアの現場では、こうした「哲学」ともいえる問いが不可欠なのです。

フランスで生み出された、認知症高齢者が穏やかな人生を取り戻すケア技法「ユマニチュード」。
本書は、その考え方と技法の実践を開発者自らが語り下ろした本です。

・攻撃的、徘徊などの問題行動が減った。
・身体拘束や向精神薬の量が減少した。
・適切なケアレベルの設定により、患者が寝たきりになることがなくなった。
・スタッフや家族の負担も軽減。専門職の離職率が大幅に改善した。

「ユマニチュード」を導入した施設では、こういった「魔法のような」症例が数多く報告されています。
フランスでは400以上の病院やケアホームで導入され、すでに日本を含め数か国で実践されています。

この技法は、「顔の正面から同じ高さで目を合わせる」「何をしているか実況するように伝える」「腕を上からつかまず、必ず下から支える」などの確立された具体的な技術と、「ケアする人とは何か」「人とは何か」という哲学から成り立ちます。

本書では、なぜユマニチュードが生みだされたか、また、ケアにおいて「なぜそうすべきなのか」「なぜその方法に効果があるのか」という根拠をやさしく丁寧にひも解いていきます。

介護・医療の現場、そして認知症高齢者のいる家庭にて、誰もが実践できるケア技法の本質を、技法の開発者本人の体験や、患者さんのエピソードを交えて紹介していきます。

感想・レビュー・書評

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  • 4年前に読んだが研修デザインのインプットとして再読。欲求段階説をここまでこき下ろしていたっけ? すっかり忘れてた。この考え方に至るまで歴史的背景と著者らの実践、人間をどう理解、認識するかなど、わかりやすく述べられている。医療・介護従事者は読んでおいて損はない一冊。

  • これ、社会人3年目に読んだかな。たしか。
    当時のわたしにとっては霹靂的理論の発見に感動した。
    著者ロゼットさんによる認知症ケアの模範的問題行動の対処として、とても根拠に基づいた革命的支援術に思われたが、ユマニチュードとは、ひと言で言えば、その人らしさを尊重して、認知症の方々の世界観を受容して内から沸き起こるエンパワーメントやその人自身の意欲を引き出す効果を体系的にまとめたものだったと記憶している。

    けれど現場の意見からすると、あくまで基本的な対人スキルとして参考にしたい要素はたくさんあるけれど、認知症だからみんなにこの法則が合うとは限らない。相手はひとであり、病気でも症例でもなく唯一無二のバッググランドを持った、病気になるまでの経験があるから、
    ユマニチュードの理論を実践することが先行して一人ひとりの個性を見ることをおざなりにしてしまうのは本末転倒だと経験から実感。
    参考程度に知識に入れておき、その人に合わせて丁寧にヒアリング、生活歴を聴き、個別のカルテ、ケアプランを実践していくこと。
    双方が互いに機能し合ってこそ、ユマニチュードが生きてくるんだろなぁと思いました。
    こんなケア技術もあるのか!という介護現場初任者には早いうちに一度は読んでおきたいバイブルと言えるかもしれない。

  • ユマニチュードのマインドは医療福祉に従事する人は持っておくべきだけど、このマインドだけで医療福祉に関わっていくことは危険だと思います。
    ユマニチュードを構成する一つ一つから何を実践すべきかどうかを他の思想や科学的根拠をベースに吟味していくことが必要だと感じました。

  • ユマニチュードを病院で実践して実際に患者を歩かせた次の日にその患者歩けると思い込み転倒しているなんてことがあったから正直懐疑的だった。
    実際本を読んでこれからの施設の課題や性に関してなど視野が広がることも多く学べるところはあったと思う。ただ色々やはり引っかかる部分もあって、施設に入ったときの失うものについてとかまずそのレベルだったら施設の選択とか介護の選択方法が間違えている気がするし例えが極端すぎて過激に感じる。他も書かれていることはとても良いことに聞こえるけど、実際に実行するとなると精神的に良くても身体的に患者の不利益につながるのではと思うことや介護側の負担が多すぎて潰れる人が増えそうだなと感じることも多かった。

  •  不可解な点の多い本だ。

  • ダマシオ『デカルトの誤り』からヒントを得たユマニチュードというアプローチについての解説書。

    認知症における「認知」の書籍にもかかわらず見当識などにはほとんど触れることなく「人に対しての認知」という社会的な認知を中心とした、新しい(そしておそらく正しい)アプローチを解説する入門書。

    「恐れ」という「感じ」の取り扱いについての記述とアプローチが素晴らしい。まず「何を恐れているのか」というあたりをきちんと理解していない状態にあることに問題があることや「人間とは何か」という問いへの思考が必要であることなどを説く。

    かなり突っ込んだ内容ながら下らないケア本のような自己満足的な胡散臭さはない。「コレは違う」という感じがしないので読みやすく感動的。
    あと、ダマシオの『デカルトの誤り』は読んだ気になってたのだけど、よく調べたら読んだのは『よみがえるスピノザ』の方だった。うーんタイトル似てると思ったけど全然似てないよな。

  • 認知症ケアに関わる人すべてにユマニチュードという「人間らしさを取り戻す」ケアの本質を理解してほしい。

    ※本学学生はOPAC経由で電子版を閲覧できます。

  • URL:https://mol.medicalonline.jp/library/ebooks/detail/?id=4450

    *学外からは「学認」をご利用ください(利用方法↓)
    http://www.shiga-med.ac.jp/library/support/manual/gakunin_mol.pdf

  • 自分は医療や介護の従事者ではないです。具体的なケアの方法よりユマニチュードの哲学について丁寧に書かれており “人間の尊厳” とは何かという観点から興味を持ち読みました。

    なかなか刺激的な内容で、感動と受けとめきれない複雑な感情とでいっぱいになっています。感想を書くのが難しいです。

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著者プロフィール

■イヴ・ジネスト
ジネスト‐マレスコッティ研究所長。トゥールーズ大学卒業。
体育学の教師で、1979年にフランス国民教育・高等教育・研究省から病院職員教育担当者として派遣され、病院職員の腰痛対策に取り組んだことを契機に、看護・介護の分野に関わることとなった。

「2020年 『2021年 タンザック判カレンダー ユマニチュードカレンダー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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