ねことことり

  • 世界文化社
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感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (32ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784418228065

作品紹介・あらすじ

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◎◎ 子どもから大人まで響く、珠玉の絵本 ◎◎

●注目の作家・舘野鴻と、細密画家の新生・なかの真実が紡ぐ、
心あたたまるファンタジー。

●環境が違っても、互いに歩み寄ることができる。
ねことことり、それぞれの視点から見える、幸せの価値とは?

●日々の営み、共生、命の循環を、
美しい細密画でドラマチックに描きます。
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ねこの しごとは、こぶしの 木のこえだを たばねることです。
あるあさ、ねこが しごとを しようとすると、
まどに ことりが とまりました。
「……おねがいがあります。
そこにある こえだを、すこし わけて もらえないでしょうか?」
いまにも なきだしそうな ことりをみて、ねこは 
いちにち いっほんずつ、こえだを あげることにして……。


特別な枝を求めて、猫のもとへやってきた小鳥。
異なる環境のなかで、密接に交わり合うふたり――
互いに歩み寄る思い、幸せの価値を描く珠玉のファンタジー。

感想・レビュー・書評

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  •  『第28回日本絵本賞』受賞の本書(2022年)は、「たてのひろし(舘野鴻)」さんの物語と、その弟子、「なかの真実」さんの絵による師弟コンビの、見事な阿吽の呼吸を感じさせられた作品で、特に、なかのさんの絵の美しさは、ちょっとびっくりしてしまうくらい、驚異的な素晴らしさがあり、その水彩による細密画で確立された世界観は、見開きの扉絵の、匂い立つように様々な緑が織り成す大自然の風景から、既に物語の中へ引き込まれる魅力がある。

     その中でも更に特筆すべきなのが、表紙にも見られる彩り豊かな花たちの絵であり、これだけ多くの形や色が取り混ぜているのに、決してお互いを邪魔せずに、それぞれが凛と佇む、その存在感ある美しさに囲まれて展開される、ねことことりのささやかな交流は、シンプルな物語にも関わらず、その様々な視点から見せてくれる絵も合わさることで、お互いにとって、とても大切な日々だということを実感させてくれて、特に、上空からの視点には、前半と後半とで心境が大きく異なる、対照的なことりの羽ばたく姿が印象深い(心なしか、ねこの家の花も後半の方が華やかに見える)。

     また対照的といえば、ねこの家の、小物で溢れる賑やかな部屋で嬉しそうに紅茶を飲む光景と、蝋燭だけを灯した暗い夜の部屋で頬杖をつく光景もそうで、ここに至っては、前半は正面からねこの表情を見せ、後半は斜め上から見下ろした視点で、その後ろ姿から表情を想像させる描き方も上手いと思わせるものがあり、こうした細かい視点の使い分けから、登場人物(動物)の心情を表現出来るのは、絵本の素晴らしさの一つだと思う。

     そして物語は、ことりの必死なお願いから始まり、やがては、それぞれが持ち得ないものに惹かれ合う、そうした展開には人間同士がお互いの個性に惹かれ合う感じに通じるものがあり、その限られた時間に於いて、楽しい時間を共有したい真摯な思いは、ねことことりが、しっかりと目と目を見て話している絵からも感じさせられて、特にねこは、あまり表情が変わらないように見えて、実は目に表れており、その繊細に揺れ動く青い瞳が何を物語っているのかは、期待を込めた眼差しで先を見つめている表紙からもよく分かると共に、本書を書いた、たてのさんのメッセージである、猫は本来、鳥を狩りの対象とすることも、決してそうとは限らないのではないかといった可能性の素晴らしさも教えてくれた、夢と希望の詰まった絵本でもあります。

  • 水彩を使用した最密画がとても素晴らしい。
    葉っぱや小枝も細かく動いているかのようで、花の色も自然で温かさを感じる。
    ずっと見ていたいと思うほどの美しさ。

    ねこの仕事は、木の枝を束ねること。
    そこにことりが小枝を分けてもらえないかと…。
    困っているのをみて一日一本持って行っていいよと。
    ねことことりの交流が始まり、お互いに良いところを褒め合いとても仲良くなり、楽しい日々だったけれど約束の7本、ちょうど7日目がきて忙しそうなことりに「またきてね」とは言えなくて…。

    随分と月日はたち、ねこの心はぽっかり大きな穴があいたようで、ことりのことばかり考えていたけれどある日聞き覚えのある懐かしい歌声が聞こえ…。
    家族を連れてことりが、お礼の花束を持ってきました。

    ねことことりの優しさを感じ、友情を感じる話。



    2024.2.22 ③





  • 絵がとてもキレイ。
    お話も優しい。

  • たださんや海と青硝子さんの本棚から図書館予約

    あー、なんて美しい絵本
    水彩の細密画
    細やかで優しさにあふれた画面
    大きな自然
    質素な暮らし
    ねこと小鳥の表情も写し取って
    どれほどの忍耐と技量を要するのでしょうか?

    表紙のちょっと寂しそうなねこ
    ラストのやわらかなねこ

    ねこさんのいいにおいのするおうちに
    そっと入っていきたいなあ
    ことりのうたをききながら……

    ≪ 大自然 小さな暮らし ねこことり ≫

    • たださん
      はまだかよこさん、こんばんは(*'▽'*)

      大自然での質素な暮らしに加えて、彼らが、お互いに必要だったものさえ得られれば、きっと、それで満...
      はまだかよこさん、こんばんは(*'▽'*)

      大自然での質素な暮らしに加えて、彼らが、お互いに必要だったものさえ得られれば、きっと、それで満足だったのでしょうね。
      そんな周りにあるものだけで、満たされた雰囲気が、美しい細密画からも感じられて、読み手も思わず、幸せな気持ちにさせられますよね。
      2023/12/08
    • はまだかよこさん
      たださんへ
      いい本のご紹介ありがとうございました
      子弟でこんな素敵な絵本を世に出されるなんて
      ため息がでますね

      限りなく便利なも...
      たださんへ
      いい本のご紹介ありがとうございました
      子弟でこんな素敵な絵本を世に出されるなんて
      ため息がでますね

      限りなく便利なものに囲まれたヒトの暮らし
      なんかねえ~

      コメントありがとうございました


      2023/12/09
  • とにかく絵が美しい。
    お話自体、心がほんわかする、やさしいあたたかい話だけれど、特筆すべきはなんといっても絵の美しさ。
    どこまでも緻密に丁寧に描かれていてこれを仕上げるのにどれだけの時間を費やしたのか?と思う。
    ねこの肉球の質感、毛の一本一本、花にも木にも、扉の蝶番にも、ページの片隅どこを見ても手抜きがない。
    全てのページを額に入れて美術館に飾りたいほどの美しさです。

  • 猫と小鳥が交流を深めていく温かい物語…
    も素敵だけれど何よりも絵が良い!
    どのページも色とりどりの花で溢れてて、
    それだけでも大満足♪

  • 絵にひかれて読みました。細かく、色鮮やかな自然はもちろん、ねこの毛並みやことりの羽、画集をみているようです。ねことことりの会話やふれあいもイラストが伝えてくれます。

    ねこだけど、においがわからない。
    とりにはねこのまわりにあふれるにおいが分かります。
    そんなねこから毎日1本だけ枝をもらって帰ります。幸せな楽しい生活がイラストから溢れています。
    約束の数の最後の小枝を渡すと、ことりが去った後は寂しい生活になりました。
    花瓶の花も枯れています。

    やがて、とりが帰ってきます。
    今度は家族も一緒に。小枝は巣を作るのに必要だったのでした。
    空を飛ぶ鳥達の視点で窓から待つ猫がみえてきます。
    とりはねこのために薬草を探してくれました。
    気持ちが生き生き描かれています。
    読んだ後、幸せな気持ちになれる絵本です。

  • とても細かいところまで丁寧に描かれた絵が素晴らしくて、ずっと眺めていたくなる。花の絵も、自然な色でありながら息を呑むほど美しい。
    ストーリーをこの絵がより効果的にしていて、猫の寂しさ、喜びを我が事のように感じた。
    大好きな絵本がまた一冊増えた。

  • 第28回 日本絵本賞

    これぞ絵本!心温まる物語と繊細で素晴らしい絵に癒されました。
    特に絵は色鮮やかに描かれた自然の風景が息をのむ美しさで、子どもが「すごい!」と感動していました。
    素晴らしい絵で絵本大賞をとった作品なんだよと話したら、「誰も勝てないでしょ!」と言ったので笑ってしまいました。
    こぶしの小枝、紅茶、花の匂いに包まれた素敵なねこの暮らし、そこへやってきた小鳥の美しいさえずり。なんて素敵な世界なんでしょう。
    ねこが小鳥と話す時の優しい表情、ラストのセリフはないけど全てが伝わってくるねこの姿、素晴らしい表現力だと思いました。
    紅茶はよく冷ましてから飲むところも微笑ましいです。

  • 本屋で絵に一目惚れで手に取った一冊。

    ねこさんの表情のひとつひとつが、儚げでとてもキレイ。
    背景という言葉で片付けてしまうにはもったいない素敵な風景もまた大きな見どころ。
    子供向けというよりは、大人のほうがギュッと心を掴まれる内容かも。ねこさんとことりさんの程よい距離感の中で紡がれる物語がとても心地よいです。

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著者プロフィール

(作)
1968年、神奈川県生まれ。絵本作家・生物画家。幼少期より、熊田千佳慕氏に師事。美しい細密画で多くの人々を魅了している。2017年、『つちはんみょう』(偕成社)で小学館児童出版文化賞を受賞。絵本に『しでむし』『ぎふちょう』『がろあむし』(偕成社)、『あまがえるのかくれんぼ』『あまがえるのぼうけん』『ねことことり』(世界文化社)など、読み物に『ソロ沼のものがたり』(岩波書店)がある。

「2023年 『あまがえるの たんじょう』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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