特殊事情に係る所得税実務〔三訂版〕

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  • 税務経理協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784419066680

作品紹介・あらすじ

職業別の固有の事情がある事業主の特に不明確な「必要経費の範囲」を中心に、近時の判例・裁決例を踏まえて詳細に解説。投資家・投機家・ギャンブラー、フリーランサー等の課税関係について追加した好評書の三訂版。

感想・レビュー・書評

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  • 士業、スポーツ選手、開業医、キャバ嬢など様々な個人事業者の所得税実務について解説された書籍。小田満税理士は国税時代は所得税調査一筋できた方なだけに調査実務に精通した内容だ。本書では、特に問題になりやすい必要経費の範囲や家事関連費のとり扱いといったグレーゾーンに踏み込んでおり、理解が進んだ。
    P146
    2 芸能人等の家事関連費の必要経費算入に関する基本的な考え方
    国税の現場においては、過去、実務上の取扱いとして、文筆家や俳優などの自由職業所得者の家事関連費の必要経費算入に関して、次のような考え方を目安として、業務上必要であると認められる部分を必要経費に算入する取扱いがされていた。
    ①支出した費用が、専ら業務の遂行上必要なもので、家事等に関連する部分が全くないと認められる場合は、その費用の全額を必要経費に算入する。
    ②支出した費用の支出目的の主たる部分が業務の遂行上の必要に基づくものであるが、趣味、娯楽、生活にも関連があると認められる場合は、支出した人の職業、支出した費用の種類に応じ、その支出した金額の50%~70%の範囲内の金額を必要経費に算入する。
    ③支出した費用が主として趣味、娯楽及び通常の生活にも関連があると認められる場合は、これを必要経費に算入しない。ただし、収入を得るために必要な経費に該当する部分があり、かつ、その部分が明らかに区分できる場合には、その部分の金額を必要経費に算入する。
    P154
    ANSWER
    事業の遂行に必要な部分の割合は、事業の種類や支出する費用の性質によって異なる。したがって、その割合は一概に画一的に算定できるものではない。
    しかし、考え方としては、事業と家事の双方に関連があるわけであるから、それぞれ半々あるいは5分5分を基本として50%とし、それぞれの費用の性質を納税者本人の経験則によって勘案してその割合を加算又は減算することでよいのではないかと考える。
    P244
    ANSWER
    職別工事に従事する人の所得として給与所得になるものと事業所得になるものとがある場合、給与所得に該当するものについてはその収入金額から給与所得控除額を控除し、事業所得に該当するものについてはその収入金額から必要経費の金額を控除することになる。
    しかし、その人の支出する年間費用の総額の中には、給与所得及び事業所得を生ずるにあたって必要な共通の費用があるはずである。であるとすれば、その人の支出する年間費用の総額を事業所得の金額の計算上控除することは、不合理といわざるを得ない。ではどのような方法でその人の支出する年間費用の総額をそれぞれの所得に配分するかが問題となる。
    国税庁のかなり以前の取扱いでは、①まず、給与所得に係る収入金額から税法所定の給与所得控除額を控除して給与所得の金額を算出する、②次に、その人の支出する年間費用の総額から①の給与所得控除額を差し引いた残額を算出し、③事業所得に係る収入金額から②で計算した残額を控除して事業所得の金額を算出することとしていた。しかし、この方法については、その人の支出する年間費用の総額のうち給与所得控除額を超える部分の金額のみを事業所得に係る収入金額から控除することになるので、結果的に、給与所得及び事業所得に係る収入金額の総額からその人の支出する年間費用の総額のみを控除することになる(給与所得控除額の計算の意味がない)ため、その妥当性に疑問を呈する向きもあった。
    そこで、実務的な処理として、給与所得の金額については上記①と同様に計算するが、事業所得に係る必要経費については、「給与所得に係る収入金額と事業所得に係る収入金額の合計額のうちに占める事業所得に係る収入金額の割合」をその人の支出する年間費用の総額に乗じた金額とする方法が採用されることもあった。ただし、この方法については、事業収入に係る必要経費と給与収入に係る必要経費とでは、本質的に異なるものであるにもかかわらず画一的に按分計算する点において欠陥がある。
    現在でも,職別工事に係る必要経費の配分に関する明確な取扱いは示されていない。筆者の国税庁現役時代に、この問題について議論となったが、断定的な結論は出さなかったように記憶している。かくいう筆者としては、給与所得を生ずるにあたって必要な実額費用の範囲は限定的なものと考えているので、その実額費用相当額を見積計算してその人の支出する年間費用の総額から差し引いた残額を事業所得に係る必要経費として計算することとして差し支えないと考えている。

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