明るい炭鉱

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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422300436

作品紹介・あらすじ

そこは、本当に暗くて悲惨なだけの場所だったのか?失われたコミュニティの冷静な見直しから造形する、日本の未来像。

感想・レビュー・書評

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  • 面白おかしい炭鉱の話かと思ったが、そうではなく。一般に「暗い」イメージのある炭鉱を、特に街づくりの観点で安易に「明るく」見せようとすることへのアンチテーゼ。

    といっても著者に解があるわけではなく、客観的に歴史を振り返ったり世界に目を向けたり、家族の来し方を述べてみたりしていろいろ考えている様子。

    炭鉱町で育った著者自身の葛藤が文章のあちこちに垣間見えるのが興味深く、応援したい気分になった。こういう人がいるからこそ街が再生していく。、

  • ”炭鉱”と聞いて思い浮かぶのは、貧困・搾取・事故・・・マイナスな言葉ばかり。でも、実際はどうだったのだろう?近代の幕開けとともに主要産業になった炭鉱を目指し人々は集まり、そこに活気あふれる町ができ、コミュニティーも形成される。著者は、北海道の幌内炭鉱で育った。今ではさびれた炭鉱遺産を活用した地域NPO活動をしている彼の願いは、かつての”明るい炭鉱”を中心とした活気ある街づくりだ。

  • 炭鉱の町で育った人が書く、炭鉱の町の歴史とこれから。

    炭鉱に関する基本的事項(歴史、石炭を掘り出す仕組みや技術、そこで働く人々の役割など)の説明があり、ここだけでも結構「へー」というかんじ。

    やはり、実体験の部分がおもしろい。
    父が炭鉱会社職員として働いていた著者一家の歴史をみると、当時の炭鉱町のくらしの様子や炭鉱を取り巻く社会状況の変化などがわかる。

  • 昔、中国からやってきた留学生に、私が知っていることと言ったら地理の教科書に載っていた「人民公社」くらいだ、と言ったら、なんともいえない表情をされた。彼女は文化大革命のさなか生きた身近な人々の苦しみを目にしていたのだった。なんとも私の浅はかな…。
    ルール工業地帯、ドネツク炭田、これも教科書で習った。コルホーズやソフホーズもね。
    今や、産業革命、近代化を支えた人々が住んだ場所は負債を抱えてあえいでいる。負債と書くだけでもマイナスイメージだ。
    北海道空知地方に生まれ育ち、地域活性化に携わる人々が残されたものを、どう活用していくのか、注目していきたいと思う。
    是非、そこで生きてきた人のヒストリーを物はもちろん、消えてしまうオーラルヒストリーも未来への提言として伝えていってほしい。

  • 【新刊情報】明るい炭鉱 567.0/ヨ http://tinyurl.com/9ujr4lb 近代以降120年の短い間に、悲しい記憶を数多く内包してきた炭鉱。しかし、そこは本当に暗くて悲惨なだけの場所だったのか?失われたコミュニティの冷静な見直しから日本の未来像を造形する #安城

  • 掛け値なしに面白かったですし、空知に住む一人として大変に勇気づけられました。
    空知に居を構えてから、かねがね「かつて国内産業をリードしてきた空知の炭鉱について勉強してみたいものだ」と念願していましたが、忙しさにかまけてサボっていました。
    そんな「炭鉱素人」にはとっておきの入門の書。第1章を読めば、炭鉱についての必要な知識がリーダビリティーな文章とともにサクサク頭に入ってきます。
    第2章は、三笠市の炭鉱に生まれ育った著者と、北炭幌内炭鉱の労務職員だった父の物語。炭鉱に暮らす父子の姿とともに当時の同炭鉱の様子が、それこそ内部にいた人にしか描き得ないような筆致で生き生きと描写され耽読しました。
    第4章は文章に熱のようなものを感じました。それは炭鉱内部に住んだ一人として、「炭鉱は暗い」という世間一般に流布したイメージへの異議申し立てが、何か迫力のようなものを帯びていたからにほかなりません。
    本章を読み、随筆家の山本夏彦が「夏彦の写真コラム」で、「『十五年戦争』と称して満州事変以来戦争状態が続いて世間は闇だったというものがあるが、まっかなうそである」と批判していたのを思い出しました。
    正直なところ、私自身も炭鉱に対しては暗いイメージを持っていましたが、完全に払拭されました。
    第4章の終盤から第5章では、地域に残された「炭鉱の記憶」を、どう空知の再生に結びつけるかが語られます。
    著者が指摘する通り、地域の歴史である「炭鉱の記憶」を消去して、それとはまったく無関係なプロジェクトで再生を図るなど、やはりナンセンスという以外ありません。
    立川談志ではありませんが、「伝統を現代に」こそ歩むべき正道ではないでしょうか。著者はドイツ産炭地域得た教訓として「過去の蓄積に今日的な価値を付与すれば、素晴らしいことが実現できる」と語っています。思わず膝を打ちました。
    声を大にしてオススメしたい本です。

  • 本書では炭鉱が興り、そして没落し、現在はまちづくりの資産となっていく、という一連の流れを追っています(駆け足ですが)。
    空知の炭鉱(幌内)を中心に書かれたもので、決して日本の炭鉱のすべてを語ったものではありません。
    それでも子どものころからの「暗くて怖い」イメージの炭鉱と、最近になって訪れるようになった炭鉱遺構(と、その周辺)に見られる好意的なイメージとのギャップを埋めるのに最良の一冊と言えるでしょう。
    誰にでもお勧めできる本ではありませんが、廃墟とか炭鉱遺構とかそういうものに興味がある方なら、ぜひ!

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