よい移民

著者 :
制作 : ニケシュ・シュクラ 
  • 創元社
3.65
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感想 : 16
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784422360119

作品紹介・あらすじ

欧州における移民受け入れ先進国で、その受入れに比較的寛容であったイギリスでも、基幹産業の空洞化と貧富の差の拡大によって、移民排斥や制限の主張が勢いを増している。★そんななか、70年代以降生まれの俳優、ミュージシャン、詩人、ジャーナリストなど、移民2世・3世の著名なクリエイター21人が、移民としての自己存在の意味や葛藤、社会の偏見などを繊細かつ巧みに表現し、大きな反響を呼んだのが本書『よい移民』である。★編集は、インド系移民家庭に育った若手作家ニケシュ・シュクラ。2016年9月にクラウドファンディングで刊行され、瞬く間にベストセラーとなった。★「移民」は受け入れないとしながら、実質の移民受入れに大きく舵を切った日本で最も不足しているのが、移民をめぐる広範な議論であり、様々な立場を理解するための知識と寛容の精神であろう。★本書は、今後の日本にも必要不可欠な移民をめぐる物事の味方・考え方を移民側の視点によって知ることのできる格好の読物である。★J・K・ローリング&ゼイディー・スミス推薦。2016年度のReaders Choice受賞。【主な目次】編者まえがきナマステ(ニケシュ・シュクラ)黒人になるためのガイド(ヴァレイッゾ)私の名前は私の名前 (シメーヌ・スレイマン)黄色 (ヴェラ・チョック)ケンドー・ナガサキと私(ダニエル・ヨーク・ロー)機会の窓 (ハイムシュ・パテル)ニシュ・クマールは困惑するイスラム教徒か?(ニシュ・クマール)テレビに映る黒人像と自分なりの「黒さ」 (レニ・エド=ロッジ)「よい」移民を越えて(ウェイ・ミン・カム)「そんなのだめだよ! お話は白人についてじゃないと」(ダレン・チェティ)帰郷の途について(キエラン・イェイツ)国旗(ココ・カーン)アフリカに切り込む――黒人向けの床屋と男の話(イヌア・エラムス)どこから来たか、どこで着ているか――移民と英国ファッション(サブリナ・マフーズ)空港とオーディション(リズ・アーメッド)カースト主義の永続(サラ・サヒム)シェード(サリーナ・ゴッデン)テロリストの妻(ミス・L)トークニズムについて我々が語るときに語ること(ビム・アドワンミ)死は多頭の怪物(ヴィナイ・パテル)感謝知らずの国(ムサ・オクウォンガ)訳者解題

感想・レビュー・書評

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  • 編者自身による第一編を皮切りに、イギリスの移民2世や3世である作家・俳優・ジャーナリストなどによってしたためられた21編の移民であることにまつわるエッセイ・アンソロジーです。

    作品はそれぞれシリアスなものから詩的な作品、ユーモラスであったり冷笑的なものまでと、趣向もバラバラなため、どの章が心に残るかも読み手によってさまざまでしょう。

    個人的に印象に残ったものは、英国ではインド移民としてのアイデンティティーを確立したつもりが、祖父の故国に滞在してみると、結局ここでも自身が地に足のつかないよそ者であることに気付かされる「帰郷の途について」。英国で移民として差別されることへの反応が怒りから疲弊に変わり、国を離れる決意を表明する「感謝知らずの国」など。

    本書末の著者情報からわかる範囲では、著者たちは1980年台生まれの比較的若い世代が中心となっています。
    これが長年の差別を経験してきた高齢者も含めて書き手の世代にもっと幅があれば、さらに奥行きある作品になったのではと感じます。

  • 移民を受け入れない政策を持続している日本だが、現実には労働のための人材を海外から導入しなくては、立ちいかない状況にある。
    『よい移民』とは?
    実にタイムリーな題名。
    ぜひ読んでみたい!!

  • 21人多様な視点からの話で興味深い。

    アフリカの中でも多様性があり、インドの中でも多様な層があって、肌の色で区分することのナンセンスさがよくわかる。

    自分という存在をルーツや宗教観、育ってきた環境や言語から深く考察する…誰もがどこかではマイノリティ。マイノリティの立場になると色んな視点が身につく。

    翻訳だからかちょっと文章が読みづらいが面白かった。

  • ページを捲るたびに小さな傷ができていくような感覚。
    瘡蓋になってもその上からまた傷が付く。
    それを彼らは日々の生活の中で感じているんだろうし、私も国外へ出ればそうなってしまうんだろうなと思った。

    編者前書きの「有色人には、やることなすことすべてに人種が関わってきます。なぜなら、普遍的な経験とは白人のものだからです。」にハッとした。
    そして、だからこの本は私の(そして全ての有色人種の)本なのだ思った。
    それぞれのエッセイの完成度が高いので付箋をぺたぺた貼りながら読んでいたら2週間もかかってしまった!
    きっと手放せそうにない。

    リトル・マーメイドのキャスティングに怒る人達が噴出する日本はこの本を人生の課題図書にした方が良い。
    何故自分の肌は白いと言えるのか。
    何故白の仲間入りをしていると勘違いするのか。
    映画界における有色人種の話もしてるので是非読んで欲しい。

  • 国際教養学部 南郷晃子先生 推薦コメント
    『読み、そして「よい移民」という言葉をもう一度眺めてみてください。』

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPAC↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/631312

  • 「よい」「わるい」はいつも他人が決める。

    70年代以降に英国で生まれた移民2世・3世の著名なクリエイター21人が、自己存在の意味や葛藤、社会の偏見などを繊細かつ巧みに表現し、大きな反響を呼んだ話題の書が日本語版で登場。J・K・ローリング推薦。

    ★日本語版推薦
    移民のひとたちは”よい移民”、つまりモデル・マイノリティでなければならないのだろうか。求められている役割を演じなければ”悪い移民”なのか? 人種も境遇もさまざまな本音の声たちに耳を傾けながら、考え込んでしまっていた。受け入れるとはどういうことか。アジア人であるとはどういうことか。どちらの立場からしても、わたしたちは当事者だ。
    ――谷崎由依(作家、翻訳家)

    多様なルーツを持つ人々が暮らすイギリスという国。その日常に深く深く染み込んだ無知と差別、そしていつまでも逃れられない葛藤と戸惑い。「黒人」であることで何かを期待される。「東アジア人」であることで何かを期待される。メディアの上ではステレオタイプが繰り返され、おなじみの「悪いイメージ」を払拭するために「よい移民」として振る舞おうとする子どもたちがいる。なぜ無色透明であることは「白人」だけに許された特権なのか。イギリスで「インド系」であること、「中国系」として生きることは一体何を意味するのか。『よい移民』に収められた21の言葉は、「都合の“よい移民”」に対する既存の安直なイメージを裏切るだろう。突飛な何かが書かれている、ということではない。21人の「移民」たちが描いた日常と感情の揺れ動きが、社会の根っこにある嫌なもの、緊張感、哀しみを驚くほど鮮明に炙り出している。
    ――望月優大(ライター/ニッポン複雑紀行編集長)

    ★主な目次
    編者まえがき
    ナマステ(ニケシュ・シュクラ)
    黒人になるためのガイド(ヴァレイッゾ)
    私の名前は私の名前 (シメーヌ・スレイマン)
    黄色 (ヴェラ・チョック)
    ケンドー・ナガサキと私(ダニエル・ヨーク・ロー)
    機会の窓 (ハイムシュ・パテル)
    ニシュ・クマールは困惑するイスラム教徒か?(ニシュ・クマール)
    テレビに映る黒人像と自分なりの「黒さ」 (レニ・エド=ロッジ)
    「よい」移民を越えて(ウェイ・ミン・カム)
    「そんなのだめだよ! お話は白人についてじゃないと」(ダレン・チェティ)
    帰郷の途について(キエラン・イェイツ)
    国旗(ココ・カーン)
    アフリカに切り込む――黒人向けの床屋と男の話(イヌア・エラムス)
    どこから来たか、どこで着ているか――移民と英国ファッション(サブリナ・マフーズ)
    空港とオーディション(リズ・アーメッド)
    カースト主義の永続(サラ・サヒム)
    シェード(サリーナ・ゴッデン)
    テロリストの妻(ミス・L)
    トークニズムについて我々が語るときに語ること(ビム・アドワンミ)
    死は多頭の怪物(ヴィナイ・パテル)
    感謝知らずの国(ムサ・オクウォンガ)
    訳者あとがき

  • いろんなバックグラウンドを持つ人の、イギリスで「移民」として体験したこと、それについての考えをエッセイ式にまとめた一冊。
    白人がマジョリティの中で、黒人のあるべき姿に当惑する様子や、宗教的な服装を含めた見た目でいかに人が判断されるか、モデルマイノリティになるべきという圧力など、文の中だけだが少しイギリスの現状がわかった。
    Positive discrimination も本当に白人が心からやっているのか疑問に思った。
    同時に、メーガン妃の結婚の際に王室が取った対応についても想起された。

  • イギリスってそうなんだ、では終われない。移民、とくくられてもひとりひとりに物語がある。そして、それはきっと日本でもたくさんの思いが、ひろわれることもなく漂っているのではないかな。

  • イギリスって人種のるつぼだよね。そういう問いをよく聞く。英国市民はダイバーシティを皆が理解している、かというと答えはそう簡単ではない。
    本書はアジアやらインドやらアフリカ、移民をルーツに持つ英国人が感じるイギリス社会を描く。共通して行間から読み取れるのは、多くの人が生粋の英国人との間に見えそうで見えない壁を感じていること。その壁に対してどこかしら不満を抱きつつも、イギリスの社会システムに順応して生きていること。とにかく忍耐強い。
    横道に逸れるが、鉄道が突然キャンセルになって乗客が駅で立ち往生することが頻繁にある。駅員に文句の一つでも叫びそうなところ、ここの人は静かに次の行動を粛々と探す。個人的なクレーム感情を表すのは品が無いとでも言わんばかりに。
    自分に降りかかる災難を「雨ニモマケズ風ニモマケズ」とやり過ごすのが英国流なのかもしれない。

  • 身内や知り合いに沢山同じ立場がいる一個人としては、自分に引き寄せて読めた作品なのだが、ほとんどの日本人には、他人事じゃないかな。

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著者プロフィール

1979年大阪生まれ。神戸大学総合人間科学研究科博士後期課程修了。現在、同大学国際文化学研究推進センター研究員。翻訳者。専門は移民研究、カルチュラル・スタディーズ。著書に『ふれる社会学』(共著、北樹出版)、『出来事から学ぶカルチュラル・スタディーズ』(共著、ナカニシヤ出版)など。翻訳書に、ニケシュ・シュクラ編『よい移民』(創元社)、アーロン・S・モーア『「大東亜」を建設する』(共訳、人文書院)などがある。

「2020年 『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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