死の瞬間: 立ち上がる癒しのメカニズム (菁柿堂新書)

著者 :
  • 菁柿堂
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (189ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434129391

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  • 本書を読むと、死へのイメージ(恐怖感)が変わる。紹介される事例が「脳卒中に際し、このまま死ぬなら楽だと思った」という体験や、「締め技で落ちる時の快楽」、「登山の死の地帯で味わう涅槃、恍惚の境地に達した」という話だからだ。肉体的な苦痛から逃れるために、死ぬギリギリに「恍惚の境地」に至るらしい。

    動脈血の酸素分圧に対し、ベータエンドルフィンは反比例の関係。そのためにモルヒネ効果が起こる。逆に脳梗塞の患者にモルヒネの拮抗薬であるナロキソンを注射すると麻痺が急速に回復する。少し難しそうな内容だが、死ぬギリギリの境地でモルヒネを打った状態になるという事だ。著者は医療用にモルヒネを打った経験もあるらしく、説得力がある。

    眠くて眠くて、眠りに吸い込まれる。そのまま覚醒しなければ「死」だが、眠りに落ちるときは、気持ちが良いものだ。それはそれで理解できる話だと思った。だが、肉体の苦痛、現世の喪失、関係性の離脱等、ネガティブな印象が無くなるわけではない。あらゆる事物との紐帯が途切れた時、いや即物的な関連を意識化に置き換えられた時、死に向き合う覚悟が初めてできるのかもしれない。

  • 肺炎→脳内モルヒネ→苦しみのない死、というのが意外だけど楽な死に方のようだ。
    分け隔てなく誰にも安らかな世界が死後に待っていて、そこで優しく癒されるのなら、案外死も悪くないなと思ってしまう。まだ死にたくはないけど。

  • 元々は1985年に刊行された著書。しかも著者は2002年に物故されている。でも、全然古くない。老いに向かう人、肉親を病気で亡くした人、死を看取る医師など、多くの人に奨めたい好著だ。

    著者の脳卒中体験、医者としての臨床経験を基点に「死は苦しいものじゃない」という仮説が、いろんな角度から検討されていく。著者自身「随想」というように、かっちりした構成の本ではないが、謙虚さを感じさせる文体と相まって、内容はすんなり心の中に入ってくる。

    臨死体験について、改めて検討し直したいと思った。

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