花火: 九つの冒涜的な物語

  • アイシーメディックス
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感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784434146251

作品紹介・あらすじ

数年間の日本での滞在生活を通して、カーターはその独特な手法で「物語」を誕生させた。現実と非現実の間で、人間の「愛と性」とは何かを定義する。

感想・レビュー・書評

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  • 2019/9/27購入

  • 薄暗がりの中をとぼとぼと歩いているような…そんな感じを受ける短編集でした。
    私にはそれぞれの世界が独特でうまく馴染めない、何とも言いようのない読後感の本。
    日本で生活をしていた頃の話もありますがそれも外から来た目で見ているからか別の世界の日本のように感じて戸惑いました。

  • 陰鬱でグロテスクで幻想的な短編集。
    ダークな世界観に浸りたいときにはよいかもしれない。
    ただあまりに世界観がどくとくすぎて、素面で読むとツラいものがある。我にかえったら負け。

    こういった耽美路線の作品は原著で読んだほうがおもしろいかも。

  • 一人の歌手のコンサートのDVDを意を決して観る。痛ましい気持ちに捕らわれてしまってどうにもならない気分から抜け出せなくなる。その気分を更に上塗りするようにアンジェラ・カーターの「花火」を読んでしまう。

    Calling、才能というのは、やはり天から降りてくるものなのだろうか。小さな肉体から絞り出されてくるように流れていたものは、その言葉とは裏腹に枯れることなどないように見えていたというのに。天はその肉体を素通りして言葉と音楽を地上に降ろしはするものの何もその歌い手に与えようとしないのか。その印象は手元の本からもまた立ち上る。アンジェラ・カーターの文章を成す夥しい装飾は、その過剰さも手伝ってまるで自動筆記された夢を読んでいるようだと思えてくる。

    夢なのであれば、そこに意味を問うても仕方はないことであると思いはするけれど、言葉の余りの強さに眩暈を覚え、何とか平衡感覚を取り戻そうと脳はもがく。考えてみれば花火とはそうしたものだ。その美しさは暗い空というキャンバスに描かれた光そのものの中に存在するというよりも、光が消えた後に目に焼きついた残像の中にこそ存在しているのかも知れない。春の桜を後から愛しんで思い出すように。

    そうだとすれば、一つ一つの光や色にこだわり過ぎることなく、ぱっと見てぱっと余韻を味わうしかないのだろう。アンジェラ・カーターの花火もそれと全く同じことであるような気がしてならない。決して読み易いとは言い難い文章を、なるべくテンポよくなるべく速く読み切り、突き放されたようなエンディングの後から想起されてくる様々な思いに耳を傾ける。そこに物語の内容が蘇ってこなくても構うことはない。

    それにしてもこの淫靡な響きはどこからやって来るのか、と右脳に主導権を譲った筈の左脳がうずく。暗い空へ次々に投げ込まれる美しい眩い光と同様に、非現実的な物語の中に投げ込まれる性のイコン。そこには歓びもなく、かと言って哀しみもなく、ただ何かを吸い寄せるような淫靡さだけが光り輝いている。それはもちろん儚く消えてしまうより他には存在価値がない。そうであるからこそ尚更、残像は美しいものとしてまぶたの裏側に焼きつき脳細胞に定着する。ただそれだけのことである。

    思えば、神の子である、と歌っていたあの人の歌もまた、一夜限りの真夏の夜の夢だったのかも知れない。もう一度輝いて欲しいと思っているのだけれど。

  • アンジェラカーターの短編集。
    日本にいた外国人の不思議な感性で書かれた話がいくつかあって、すごく知っているもののはずなのに全然知らないもののように感じることができて面白い。
    もう亡くなっているのが非常にに残念だ。

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著者プロフィール

1940年、イギリスのサセックスに生まれる。大学で英文学を学び、卒業後しばらくは新聞記者として働く。1966年に小説『シャドウ・ダンス』でデビュー。以後、『魔法の玩具店』(1967)、『ラブ』(1971)、『ホフマン博士の地獄の欲望装置』(1972)、『新しきイヴの受難』(1977)といった作品を次々に発表し、昔話、SF、ポルノグラフィ、ミステリなど、さまざまな要素を盛り込んだ、新しいゴシック小説の書き手として注目を集める。1984年に『夜ごとのサーカス』を、1991年に『ワイズ・チルドレン』を発表し、1980年代以降を代表するイギリスの女性作家として高い評価を得るが、1992年に死去。ほかに短篇集として『花火』(1974)、『血染めの部屋』(1979)などがある。

「2018年 『新しきイヴの受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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